僕は伝説の神獣らしい

マグロ

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第一章

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パサッと何かが落ちた音で目が覚めた。
目を動かすと僕に掛けてあった毛布が下に落ちた事が分かった。

あれ…真っ暗…。

起き上がり周りをキョロキョロするけど誰もいない。
寝ていたベッドから降り、そ~っと外を覗くともう外は真っ暗で火の焚いてあるすぐそばで騎士達が集まり何か会議をしているようだった。

その中にカインとレオンとジークがいた。

とても真剣な顔をして話をしているから声をかけずらい。

ずっと同じ体勢で寝ていたからか体がバキバキで羽を伸ばしたい。

でも今、カイン達に話しかけると邪魔になるだろうから少し抜け出して羽を伸ばしたら帰って来てまた寝てよう。

熱はもうないみたいだし僕は自己治癒力も高いから羽の傷も塞がってるはず。

そしてカインがテントに入って来たらお礼を言おう。

そう思って気付かれずに静かにテントから抜け出し、羽が伸ばせそうな広い場所を探した。

するとテントからあまり離れていないところに川が流れていた。

ここならすぐに戻れるし羽も伸ばせそう!

そう思ってすかさず羽をバッと出し、バサッと広げた。
バサバサと羽を動かすと近くの草や花がゆらゆら揺れた。

うーん!と体も伸びをしてフゥーと息を吐いた。
すると後ろから声をかけられた。

「ぺっ…ペガサス様…!」

ん?と思って振り返ると茶色い短めの髪に茶色い目をした女の人が好きそうな甘い顔をしたイケメンさんがいた。
その人も騎士服を着ている。

「はい。何でしょう」

首をかしげながら笑ってそう答えるとその人は泣きそうな顔をグッと耐えながらこっちに歩いて来た。
そして僕の目の前まで来て跪き、左胸に手を当てながら頭を下げた。

「ペガサス様。お初にお目にかかります。俺は第二騎士団副団長のライト・ローゼスと申します」

いきなり跪き、自己紹介をする彼にビックリし慌てて頭を上げさせた。

「え!?ちょっと頭を上げて!いきなりどうしたの?」

僕がワタワタしていたらその人は頭を上げ泣き笑いみたいな何とも言えない顔だった。

「ペガサス様。少し俺にお話をする時間を下さい」

少しカインが気になったがすぐそこなので大丈夫だろうと頷いた。

「分かった。敬語はいらないよ。どうしたの?」

その人は、ありがとう。と言いながらポツポツと話し出した。

「俺はあなたに命を救われたんだ。魔物と戦っている時に後輩が押されていて助けに入った。その時に不覚にも魔物に腕を引き裂かれ、その衝撃に油断し首を切られてしまってね。あぁ…もうこの人生もこれで終わりか。と思った矢先にあなたが舞い降りて来て魔物を退治してくれた。そしてその治癒能力で救ってくれたんだ」

そう言って彼は胸をトントンし、フゥと息を吐き出しまた話し出す。

「だからペガサス様にどうしても直接お礼を言いたかったんだ。団長に頼んでもカイン団長に言えって言われるし、言った所で会わせて貰えない。確かに俺のような者がペガサス様のような最上級の神獣様に会おうと思うのがおこがましいのは重々承知ではあるんだけど…。後1回だけでもいい!ペガサス様にお会いしたかった。そして、この命を…いや、怪我をした者達を助けてくれて本当にありがとう」

彼は深々と頭を下げた。
自分が勝手にやったことだしここまで感謝されるとは思ってなくて、でも自分のしたことでお礼を言われる事が嬉しかった。

「そうだったんだ。あなたが命を落とさなくてよかった。わざわざお礼を言いに来てくれてありがとう」

ニコッと笑えば彼も顔を赤くしながらも笑い返してくれた。

「ペガサス様。あなたではなくライトと呼んで欲しい」

「分かった。ならライトもペガサス様じゃなくてルルって呼んで欲しいな」

そう言えば、ルル様‥。と呼んでくれた。
様もいらないけどカインの契約獣だし、流石に俺にはおこがましすぎると断られてしまった。

でもまた1人、仲良くできそうな人間さんと知り合えたからそれでいっか!

そうして2人で話をしているとテントの方が騒がしい事に気付く。

頭にカインの焦っている声が響く。

【ルル!どこだ!ルル!】

あっ!黙って出て来た事、忘れてた。

「ライト。カインが呼んでるからそろそろ行くね。体お大事に」

カインが僕を召喚しようとしているのか体が光出した。

「ルル様!また会える?」

「ん?うん!僕はだいたいカインと一緒にいるからカインの所に来れば僕はいたりするよ。たまに森に帰ったりしてるかもしれないけど」

「分かった。じゃあ、またね」

「うん。またね」

そう会話をしてカインの召喚に答えた。

フッとカインの前に現れる。
カインだけじゃなくてジークもレオンもいた。

「カイン!みんな!心配かけてごめんね!」

「ルル!どこに行ってたんだ!心配したんだぞ!もう体は大丈夫なのか?」

カインが物凄く心配した顔で怒っていた。

「うん!もう羽もこの通り!」

バサッと広げて少し動かしてみた。

ジークとレオンが何故か惚けた顔をしているけど、どうしたんだろう。

「チッ。ルル。大丈夫なのはもう分かった。羽をしまってくれ。それでどこに行ってたんだ?」

カインがジークとレオンを睨みながら舌打ちをし、僕に羽を直すように言って来た。

不思議に思ったけどカインが言うから素直に直し、質問に答える事にした。

「ずっと寝てたから体がバキバキで少し羽も伸ばしたかったから広げられそうな所、探してたの。そしたらここのすぐ近くに川があってそこにいたよ。カイン達は何か真剣な顔して話し合いしてたみたいだったからすぐ戻ればいっか。と思って話しかけずに出て来ちゃったの。ごめんね」

シュンとした顔で謝る。

するとカインは僕をギュッと抱きしめて来た。

「そうか。それなら仕方ないな。でも、俺とお前は頭の中で念話が出来るんだ。俺達が話し合いをしていたりしても構わないからこれからは一言でも言ってくれ。心配する」

そう言って更に腕に力を入れて来た。

「ん。ごめんね。これからはそうするね」

ポンポンとカインの背中を叩いた。

それから改めてみんなに謝り、僕が寝ていたテントにカインと戻った。
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