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ビッチ(処女)、王都名物を食べる
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王都に来てから、三週間も時間が経った。一ヶ月でも二週間でもない。三週間だ。微妙だ。すごく微妙だ。でもそのくらいの時間が経過した。
なぜ俺がそんな微妙な時間の経過を記憶しているかというと、この三週間ずっと同じことをしていたからだ。
飯食って、散歩して、赤ちゃん使い魔の相手をして、クソして寝る。
それだけ。本当にそれだけ。これが真実、紛れもない現実。盛ってない俺の日々だ。
セオドアの家に来てから、俺はそんな怠惰な生活を送っていたのだ。マジで猫まっしぐらどころか、豚まっしぐらだ。
馬鹿野郎、働け。仕事しろ。そんな風に言われても文句は言えないわけだが、今の俺にはこれが精一杯だった。
ないのだ、やることが。つまり暇だった。
俺にとって、これは予想外のことだった。騎士セオドアは気まぐれで俺を連れ帰り、風呂に入れて小綺麗にして空腹を満たして、ちょっとした善行をしておしまいかと思った。
元魔王軍の幹部に施しを与えた騎士……それだけで彼の名声は挙がるだろう。そうやって俺にちょっぴり優しいことをして、用が済んだら放り出す。もしくは奴隷として売る。そんなことだろうと思っていた。
ところが、現実はどうだ。
客人として扱われ、毎日清潔な寝床と衣服を用意され、美味い食事まで用意される。俺が使役する赤ちゃん使い魔たちも同じ扱いを受けていた。使用人のハンナは、赤ちゃん使い魔たちのおむつを替え、素晴らしい粥やビスケットを作り……そして毎日外遊びをさせて昼寝までさせる。
俺より面倒見てんじゃん。育児慣れしたおばちゃん半端ねぇよ。俺いらねぇじゃん。
とにかく、そんな日々を送っていたわけだ。
これは悪いことではない。寧ろいいことだ。それは理解している。しかし、俺はどうしても理解できないことがあった。
セオドアが、元魔王軍幹部の俺をなぜこのように扱っているのか。
考えれば考えるほど、俺には分からなかった。
どんなに考えても分からないから、ここに来て五日目くらいから俺は難しいことを考えるのをやめた。
難しいこと考えるより、美味い飯の方が魅力的だ。
「アシュリー、王都名物が気に入ってくれたようだね」
昼食後のお茶を飲みながら、セオドアは柔らかな声で言った。テーブルには俺とセオドア、そして使い魔赤ちゃんたちしかいない。
俺はセオドアから与えられた手触りの良い服を着て、屋敷の料理人が作ったという王都名物を頬張っていた。
木の実や豆を蒸して擂り潰し、蜂蜜と和えてビスケットに挟んだ菓子だ。
いわゆる、郷土料理の一つだろう。これがなかなか美味い。人間のくせにこんな美味いの作るなんて、悔しくて体がビクンビクンしちゃう。
「甘くて美味い。これ、なんていう菓子なの?」
「ずんだ」
「はい?」
「これは、“ずんだ”という菓子だ」
俺の田舎にありそうな名前じゃん。王都にいながら実家が懐かしくなった。
「なぁ、セオドア……」
「なんだい? 可愛いアシュリー」
やめて、そんな低い色っぽい声で言われたら色んなところがビクンビクンしちゃう。
「俺に仕事とか与えてくれないの? ハンナに聞いたら、素人は黙っとれとブチギレられちまって……」
「ふふっ、ハンナは相変わらずだな。君は屋敷で楽しんでくれていればいいのだよ。可愛い使い魔たちの相手もあるし、君は屋敷で自由にしててくれ」
お茶を飲み終えて立ち上がり、セオドアは俺の髪を撫でた。男らしい指が頬を滑り、小さな顎に添えられる。
「私は仕事に行ってくる。いい子にして待っていてくれるかい?」
「はひ……いい子で待ってましゅ……っ」
“ずんだ”を齧りながら、ビクンビクンしてる俺。そんな言われ方しちゃったら、もういい子にしてるしかない。
俺と使い魔たちを残して、セオドアは仕事に行ってしまった。
窓の外は見事な青空。菓子を食べたら、使い魔たちを散歩に連れて行ってやろう。こいつら外に出さないと最近寝ないからな……。
使い魔たちを散歩させるために、部屋で服を着させていると、ハンナが廊下を走る音が聞こえた。太ましい……いや、ふくよかなハンナの足音はすぐに分かる。
「どうしたの? ハンナ」
「あらあら! アシュリー様。ごめんなさいねぇ、うるさくしちゃって」
扉を開けて声をかけると、封筒を抱えたハンナが困り顔でうろうろしていた。
「セオドア様、仕事に必要な書類を忘れていってしまったんですよ。騎士団の訓練所まで届けないといけないんですけど、私は他のお使いも頼まれているもんですから……」
太い腕に抱えられた封筒には、騎士団のものであることを示す封蝋があった。
「なぁんだ。それなら、俺が行くよ」
「アシュリー様が? そ、そんな小間使いのようなことお客様にさせるなんて……!」
「いや大丈夫。小間使い以下の絶賛無職中だから。ちょうど使い魔たちを散歩させようと思ってたし、俺が届けてやるよ」
ハンナには世話になってるし、このくらいどうと言うことはない。
俺はセオドアが働いているという訓練所の場所を教わり、封筒を持って使い魔たちと屋敷を出た。
なぜ俺がそんな微妙な時間の経過を記憶しているかというと、この三週間ずっと同じことをしていたからだ。
飯食って、散歩して、赤ちゃん使い魔の相手をして、クソして寝る。
それだけ。本当にそれだけ。これが真実、紛れもない現実。盛ってない俺の日々だ。
セオドアの家に来てから、俺はそんな怠惰な生活を送っていたのだ。マジで猫まっしぐらどころか、豚まっしぐらだ。
馬鹿野郎、働け。仕事しろ。そんな風に言われても文句は言えないわけだが、今の俺にはこれが精一杯だった。
ないのだ、やることが。つまり暇だった。
俺にとって、これは予想外のことだった。騎士セオドアは気まぐれで俺を連れ帰り、風呂に入れて小綺麗にして空腹を満たして、ちょっとした善行をしておしまいかと思った。
元魔王軍の幹部に施しを与えた騎士……それだけで彼の名声は挙がるだろう。そうやって俺にちょっぴり優しいことをして、用が済んだら放り出す。もしくは奴隷として売る。そんなことだろうと思っていた。
ところが、現実はどうだ。
客人として扱われ、毎日清潔な寝床と衣服を用意され、美味い食事まで用意される。俺が使役する赤ちゃん使い魔たちも同じ扱いを受けていた。使用人のハンナは、赤ちゃん使い魔たちのおむつを替え、素晴らしい粥やビスケットを作り……そして毎日外遊びをさせて昼寝までさせる。
俺より面倒見てんじゃん。育児慣れしたおばちゃん半端ねぇよ。俺いらねぇじゃん。
とにかく、そんな日々を送っていたわけだ。
これは悪いことではない。寧ろいいことだ。それは理解している。しかし、俺はどうしても理解できないことがあった。
セオドアが、元魔王軍幹部の俺をなぜこのように扱っているのか。
考えれば考えるほど、俺には分からなかった。
どんなに考えても分からないから、ここに来て五日目くらいから俺は難しいことを考えるのをやめた。
難しいこと考えるより、美味い飯の方が魅力的だ。
「アシュリー、王都名物が気に入ってくれたようだね」
昼食後のお茶を飲みながら、セオドアは柔らかな声で言った。テーブルには俺とセオドア、そして使い魔赤ちゃんたちしかいない。
俺はセオドアから与えられた手触りの良い服を着て、屋敷の料理人が作ったという王都名物を頬張っていた。
木の実や豆を蒸して擂り潰し、蜂蜜と和えてビスケットに挟んだ菓子だ。
いわゆる、郷土料理の一つだろう。これがなかなか美味い。人間のくせにこんな美味いの作るなんて、悔しくて体がビクンビクンしちゃう。
「甘くて美味い。これ、なんていう菓子なの?」
「ずんだ」
「はい?」
「これは、“ずんだ”という菓子だ」
俺の田舎にありそうな名前じゃん。王都にいながら実家が懐かしくなった。
「なぁ、セオドア……」
「なんだい? 可愛いアシュリー」
やめて、そんな低い色っぽい声で言われたら色んなところがビクンビクンしちゃう。
「俺に仕事とか与えてくれないの? ハンナに聞いたら、素人は黙っとれとブチギレられちまって……」
「ふふっ、ハンナは相変わらずだな。君は屋敷で楽しんでくれていればいいのだよ。可愛い使い魔たちの相手もあるし、君は屋敷で自由にしててくれ」
お茶を飲み終えて立ち上がり、セオドアは俺の髪を撫でた。男らしい指が頬を滑り、小さな顎に添えられる。
「私は仕事に行ってくる。いい子にして待っていてくれるかい?」
「はひ……いい子で待ってましゅ……っ」
“ずんだ”を齧りながら、ビクンビクンしてる俺。そんな言われ方しちゃったら、もういい子にしてるしかない。
俺と使い魔たちを残して、セオドアは仕事に行ってしまった。
窓の外は見事な青空。菓子を食べたら、使い魔たちを散歩に連れて行ってやろう。こいつら外に出さないと最近寝ないからな……。
使い魔たちを散歩させるために、部屋で服を着させていると、ハンナが廊下を走る音が聞こえた。太ましい……いや、ふくよかなハンナの足音はすぐに分かる。
「どうしたの? ハンナ」
「あらあら! アシュリー様。ごめんなさいねぇ、うるさくしちゃって」
扉を開けて声をかけると、封筒を抱えたハンナが困り顔でうろうろしていた。
「セオドア様、仕事に必要な書類を忘れていってしまったんですよ。騎士団の訓練所まで届けないといけないんですけど、私は他のお使いも頼まれているもんですから……」
太い腕に抱えられた封筒には、騎士団のものであることを示す封蝋があった。
「なぁんだ。それなら、俺が行くよ」
「アシュリー様が? そ、そんな小間使いのようなことお客様にさせるなんて……!」
「いや大丈夫。小間使い以下の絶賛無職中だから。ちょうど使い魔たちを散歩させようと思ってたし、俺が届けてやるよ」
ハンナには世話になってるし、このくらいどうと言うことはない。
俺はセオドアが働いているという訓練所の場所を教わり、封筒を持って使い魔たちと屋敷を出た。
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