天然イケメン騎士と可愛い小悪魔な俺の噛み合わない日々

浅倉喜織

文字の大きさ
4 / 8

ビッチ(処女)、騎士団の訓練所に行く

しおりを挟む
 チョロチョロ動き回る使い魔たちに苦労して、ようやく訓練所にたどり着いた俺だったが、入り口で早くも躓いてしまった。門番が俺の前に立ち塞がったのだ。

「だから、セオドアにこれを届けに来たんだってば! 中に入れろよ!」
「赤子を連れた悪魔族の小僧を入れるわけにはいかん。とっとと帰れ」
「あちゅりー、追い出された、みじめ! みじめ!」
「あきゃきゃ! みじめーみじめー」

 うるせぇおむつ使い魔ども。まぁ、この門番の言っていることは正論だ。何人も赤ん坊連れた悪魔族のガキが来たら、誰だって追い払う。しかし今の俺はこの封筒をセオドアに届けなければならない。
 仕方ない。使うしかない。超可愛いアシュリー様の得意技……『魅了魔法』を!
 魔力を高め、よちよち歩きの使い魔たちを足元に集結させる。俺の体から甘ったるい匂いが放たれ、ふわふわと
辺りに漂った。
 門番野郎の厳しい表情は、みるみるうちにだらしないマヌケ面に変化していく。

「おっちゃん、中に入れて? ね? 中に入れてぇ? お願い?」
『おねがぁーい』

 使い魔たちからも甘い匂いが放たれ、さらに魅了魔法の威力を高める。
 門番ははぁはぁと息を乱し、俺を見つめた。

「はぁ……はぁ……っ、褐色生意気小悪魔美少年いいよ、ビッチいいよビッチ……はぁはぁっ、赤ちゃん連れでママみが増してるよ……ショタママはぁはぁ」

 なんだこいつ、やべー奴じゃん。きっも!
 これ以上ここにいたら脱がされそうだから、使い魔たちと一緒に訓練所の中に入ることにした。
 すれ違う兵士たちから咎められることはない。俺たちの魅了魔法の餌食になっているからだ。むさ苦しい野郎どもばかりの訓練所を闊歩する、褐色悪魔族美少年と悪魔尻尾と羽根つき赤ちゃんども。明らかに場違いな存在だが、魅了魔法でみんな俺の虜になっている。
 やっぱり俺の魅了魔法は効果抜群だ。このまま王様まで魅了して、人間たちの世界を乗っ取ってやるのもいいな。そうすりゃ俺が第二の魔王様だ。
 欲が出る。これはいけるんじゃないか、と。王都を陥落させれば、人間どもの世界を手に入れるなど容易いこと。王様を魅了して俺の意のままに……。
 やべぇ。笑いが止まんねぇわ。ニタニタしながら施設内を歩いてるとか、完全に不審者だけど仕方ない。
 石造りの建物の中を我が物顔で進み、廊下を右へと曲がる。仰々しい扉が続くそこに見慣れた男の姿があった。
 セオドアだ。訓練用らしい簡易的な鎧を纏っているが、だからこそ彼の肉体の美しさがよく分かる。厚い胸板も、逞しい腕も、しっかりとした顎も……彫刻にも似た男らしい肉体美が服を着て立っていた。部下と思われる男とは比べ物にならない、華やかな立ち姿だった。
 セオドアは俺に気付き、一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐにいつもの柔らかで輝かしい笑顔を作りこちらへと歩み寄ってきた。

「アシュリー、どうしてこのようなところに……」
「あの、その……これ、忘れ物……」

 俺が差し出した封筒を受け取り、彼は苦笑いをした。

「これはうっかりだ。騎士団長たるもの、忘れ物などしていては示しがつかないのにな。ありがとう、アシュリー」

 大きな手が俺の頭を撫でる。そんな優しい笑顔やめて。顔がいい、マジで顔が良すぎる。

「しかし……ここの警備をどうやって突破してきたんだい?」
「魅了魔法で……」
「何? あぁ、そうか。君は悪魔族でそのような魔法が使えるのか。いけない子だな、アシュリー。男を誘惑し、ここまでやって来たのかい……?」

 長い指が、俺の頬をなぞる。身を屈ませたセオドアの唇から零れる吐息が、俺の耳を刺激した。

「悪い子には……分からせてやらないといけないな……」
「はひ……お仕置きいっぱいしてくらさいぃ……っ」

 こいつ俺以上に魅了魔法使いこなしてやがる。
 セオドアに魅了され蕩けた俺は、その後セオドアと彼の上官から二時間に及ぶガチ説教を受けたのだった。もちろん、立ったままで……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

【完結】元勇者の俺に、死んだ使い魔が美少年になって帰ってきた話

ずー子
BL
1年前くらいに書いた、ほのぼの話です。 魔王討伐で疲れた勇者のスローライフにかつて自分を庇って死んだ使い魔くんが生まれ変わって遊びに来てくれました!だけどその姿は人間の美少年で… 明るいほのぼのラブコメです。銀狐の美少年くんが可愛く感じて貰えたらとっても嬉しいです! 攻→勇者エラン 受→使い魔ミウ 一旦完結しました!冒険編も思いついたら書きたいなと思っています。応援ありがとうございました!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...