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第二章 王との見合い
17 お見合い一日目2
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レティツィアとオスカーは、手を繋ぎながら王宮内にある美しい庭を散策していた。オスカーの付き人とレティツィアの侍女マリアも邪魔にならないよう付いては来ているが、それ以外の人がいないところを見ると人払いをしているようだ。
『この子はナイな』作戦のための『わがまま』は、カルロのアドバイス通り、『レティツィアが兄にお願いするわがまま』を参考に実施する予定である。そのために、レティツィアはオスカーを兄に見立てることにした。オスカーを兄と思いながらであれば、兄に言うわがままのように自然に言えると思ったのである。
また、作戦は作戦としてあるが、それとは別にレティツィアとしてはこの旅行を精一杯楽しみたい、ということもある。『わがまま』を言える環境づくりを終えているので、『わがまま』を言ってもいいという言質も取っているのだから、レティツィアの気の向くままに楽しみつつ、オスカーには『この子はナイな』と思ってもらえて一石二鳥である。
「まあ、小鳥がいるわ。とても可愛らしいですね」
自国の王宮にある鳥小屋を思い出す。ここにもあるのだろうか。
「オスカー様、我が国の王宮にある森に、鳥小屋があるのですが、こちらにもございますか?」
「……鳥小屋はない気がしますね。庭の端にある林にリス小屋ならあったと思います」
「リス! それは、とても可愛いのでしょうね。ぜひ見てみたいです」
ニコニコとおねだりするレティツィアをじっと見たオスカーは、今までとは違う方向へ足を向けた。リスを見せてくれる気らしい。行った先には、オスカーの言うとおり、リスが複数匹いた。しかしレティツィアたちに気づくと、木を上り、木の幹と枝の境目にある小さなリス小屋に入っていく。
レティツィアの背の高さからではリスが見えなくなってしまい、レティツィアは眉を下げながらぴょんぴょんと飛んでみるが、リスが見えない。
「……オスカー様、リスが見えません。抱っこしてくださいませんか?」
「………………」
オスカーは返事もせず無言でレティツィアを見ていたが、表情も変えずにレティツィアを抱きかかえた。
「あ! あと少しです! あと少し高さがないと見えません!」
レティツィアは抱き上げてもらったものの、リス小屋の入り口の上は見えても、リスが微妙に見えない高さだった。
いまだ無言のオスカーは、一度レティツィアを降ろすと、また抱え上げた。今度は先ほどより高い。
「あ! 今度は見えました! あぁぁ! リスがもぐもぐしていて可愛いです! あの頬袋には、何を入れているのかしら」
レティツィアはオスカーのことはどこかに飛んでいき、リスに夢中である。レティツィアは小鳥などの小さい生き物が好きだった。いつまでも見ていられると楽しくなり、オスカーに抱えられること十分経過、リスが小屋からどこかへ出て行ってしまい、残念な声を上げる。
「リス、行ってしまいましたね……。お散歩でしょうか」
ふとオスカーを見たレティツィアは、そういえば一緒にいるのは兄ではなくオスカーだったと思い出す。一瞬固まったが、開き直り気味にオスカーに笑顔を向けた。
「ありがとうございます、オスカー様。散策の続きをしましょう」
オスカーに下ろしてもらったレティツィアは、再び手を繋ぎ歩き出す。オスカーがやっと口を開いた。
「動物が好きなのですか?」
「はい。小さい動物が好きなのです。動きや仕草が可愛くて」
「小さい……では、猫は好きですか?」
「猫! 大好きです! でも、一番上のお兄様が猫アレルギーなので、飼ったことはないのですよ」
「そうですか。俺の自室に猫が二匹います。レティツィアが滞在の間、一匹お貸ししましょう」
レティツィアは驚いて立ち止まる。オスカーが猫を飼っているイメージがなかった。そしてあまりにも嬉しい申し出に満面の笑みを向けた。
「ありがとうございます、オスカー様! とても嬉しい!」
その時、初めて笑みを浮かべたオスカーを見て、笑顔も兄のように素敵だと感じる。レティツィアは胸が少し温かくなって、オスカーは兄の素質がある、と感想を持つのだった。
一時間の庭の散策が終わり、その日のお見合いは終わった。
部屋に戻ったレティツィアの元に、オスカーから猫が送られた。全身真っ白のふさふさの毛並み、オスカーのような綺麗な青の瞳、そして胴長短足が可愛い、とても魅力的な猫だった。名前は「ディディー」というらしい。人懐っこく、すぐにレティツィアに慣れた猫は、甘えるようにレティツィアの膝で腹を見せる。可愛すぎて、レティツィアはその日の残りの自由時間を、猫とめいいっぱい遊ぶのだった。
『この子はナイな』作戦のための『わがまま』は、カルロのアドバイス通り、『レティツィアが兄にお願いするわがまま』を参考に実施する予定である。そのために、レティツィアはオスカーを兄に見立てることにした。オスカーを兄と思いながらであれば、兄に言うわがままのように自然に言えると思ったのである。
また、作戦は作戦としてあるが、それとは別にレティツィアとしてはこの旅行を精一杯楽しみたい、ということもある。『わがまま』を言える環境づくりを終えているので、『わがまま』を言ってもいいという言質も取っているのだから、レティツィアの気の向くままに楽しみつつ、オスカーには『この子はナイな』と思ってもらえて一石二鳥である。
「まあ、小鳥がいるわ。とても可愛らしいですね」
自国の王宮にある鳥小屋を思い出す。ここにもあるのだろうか。
「オスカー様、我が国の王宮にある森に、鳥小屋があるのですが、こちらにもございますか?」
「……鳥小屋はない気がしますね。庭の端にある林にリス小屋ならあったと思います」
「リス! それは、とても可愛いのでしょうね。ぜひ見てみたいです」
ニコニコとおねだりするレティツィアをじっと見たオスカーは、今までとは違う方向へ足を向けた。リスを見せてくれる気らしい。行った先には、オスカーの言うとおり、リスが複数匹いた。しかしレティツィアたちに気づくと、木を上り、木の幹と枝の境目にある小さなリス小屋に入っていく。
レティツィアの背の高さからではリスが見えなくなってしまい、レティツィアは眉を下げながらぴょんぴょんと飛んでみるが、リスが見えない。
「……オスカー様、リスが見えません。抱っこしてくださいませんか?」
「………………」
オスカーは返事もせず無言でレティツィアを見ていたが、表情も変えずにレティツィアを抱きかかえた。
「あ! あと少しです! あと少し高さがないと見えません!」
レティツィアは抱き上げてもらったものの、リス小屋の入り口の上は見えても、リスが微妙に見えない高さだった。
いまだ無言のオスカーは、一度レティツィアを降ろすと、また抱え上げた。今度は先ほどより高い。
「あ! 今度は見えました! あぁぁ! リスがもぐもぐしていて可愛いです! あの頬袋には、何を入れているのかしら」
レティツィアはオスカーのことはどこかに飛んでいき、リスに夢中である。レティツィアは小鳥などの小さい生き物が好きだった。いつまでも見ていられると楽しくなり、オスカーに抱えられること十分経過、リスが小屋からどこかへ出て行ってしまい、残念な声を上げる。
「リス、行ってしまいましたね……。お散歩でしょうか」
ふとオスカーを見たレティツィアは、そういえば一緒にいるのは兄ではなくオスカーだったと思い出す。一瞬固まったが、開き直り気味にオスカーに笑顔を向けた。
「ありがとうございます、オスカー様。散策の続きをしましょう」
オスカーに下ろしてもらったレティツィアは、再び手を繋ぎ歩き出す。オスカーがやっと口を開いた。
「動物が好きなのですか?」
「はい。小さい動物が好きなのです。動きや仕草が可愛くて」
「小さい……では、猫は好きですか?」
「猫! 大好きです! でも、一番上のお兄様が猫アレルギーなので、飼ったことはないのですよ」
「そうですか。俺の自室に猫が二匹います。レティツィアが滞在の間、一匹お貸ししましょう」
レティツィアは驚いて立ち止まる。オスカーが猫を飼っているイメージがなかった。そしてあまりにも嬉しい申し出に満面の笑みを向けた。
「ありがとうございます、オスカー様! とても嬉しい!」
その時、初めて笑みを浮かべたオスカーを見て、笑顔も兄のように素敵だと感じる。レティツィアは胸が少し温かくなって、オスカーは兄の素質がある、と感想を持つのだった。
一時間の庭の散策が終わり、その日のお見合いは終わった。
部屋に戻ったレティツィアの元に、オスカーから猫が送られた。全身真っ白のふさふさの毛並み、オスカーのような綺麗な青の瞳、そして胴長短足が可愛い、とても魅力的な猫だった。名前は「ディディー」というらしい。人懐っこく、すぐにレティツィアに慣れた猫は、甘えるようにレティツィアの膝で腹を見せる。可愛すぎて、レティツィアはその日の残りの自由時間を、猫とめいいっぱい遊ぶのだった。
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