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24 質の悪い兄弟
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政務館に通いだして七日目。
この仕事にも慣れて、離縁後はこういう仕事も選択肢の一つとしていいかも、そんな風に思うことで先日受けたショックを緩和させていた。あの日は帰ってから寝付けなくて寝不足になったものの、日が経ち、考えすぎても仕方がないのだと諦めた。そんなことより、前向きに、未来の計画を立てた方がいい。
仕事に集中していると、ふと、少し前にトイレで小部屋を出たライラが戻っていないことに気づく。トイレにしては、少し長いかもしれない。
心配になって、小部屋を出た。最近の仕事が激務なため、ライラが疲れてどこかで倒れていたら大変だ。
トイレまでの廊下を歩いていると、トイレの少し先でライラが騎士に詰め寄られているのを発見した。なにやら雰囲気が良くない。ライラは怒ったように騎士を睨み、騎士はライラに冷たい態度で何かを言っている。しかも、ライラの片腕を上へあげて騎士は拘束したように壁へ押し付けていた。
(女性になんてこと!)
私は歩く速度を上げた。ライラを助けなければ。
コツコツと鳴る私の足音に気づいたのか、ライラを拘束していた騎士が私を見た。しかし、もう遅い。
騎士の目の前まで来た私は、騎士に後ろ回し蹴りをお見舞いした。床に突っ伏した騎士を睨み付けながら、ライラの腕を引っ張った。
「ライラ、無事!?」
「……奥様、かっこいい」
「……え?」
「あ、いえ。無事です」
「そう、良かった! なんなの、この人! ライラにあんなことするなんて! ……それにしても、起き上がらないわね?」
騎士だから、女性の蹴りなど大したことないはずなのに、起き上がるどころか、どうやら騎士は気絶しているようだ。綺麗に決まり過ぎたのだろうか。
そこに、本日の護衛のアダムが走ってやってきた。
「どうしたんですか!? ……あれ、兄上?」
「……兄上? え、この方、アダムさんのお兄様?」
「はい。なんで伸びてるんだろ?」
「あ、それは、わたくしが蹴ったから?」
「……蹴った?」
「だって、ライラさんに無体を働くのだもの。引き離さなきゃと思って」
アダムは、急に噴き出して笑い出した。
「なるほど、それは良い判断でしたよ」
「い、一応、騎士には足技を仕掛けてよいと、旦那様から許可は得ていますからね!?」
言い訳だけは、しっかりしておく。夫ルークは間違いなくそう言っていたのだから。
結局、気絶中のアダム兄は別室に運んだ。そこにライラとアダムと一緒に入室する。
アダム兄が気絶している間、ライラが経緯を説明してくれた。
アダム兄は、ライラが「会いたくない奴」と言っていた人物で、名をジョシュアン・ル・オキシパルといって、オキシパル伯爵というらしい。アカリエル公爵家の縁戚にあたるのだとか。ということは、アダムも縁戚ということだ。
オキシパル伯爵は、政務を行うのは男性でなければならない、という思想の元、ライラがいるのを知ると、いつも政務館から出ていけと、圧をかけるのだとか。それは経理部が忙しかろうが、女性が男性の職場と思っている場所にいるほうが許せないらしい。
「この男のせいで、政務館では文官の女性は雇ってもらえないんです」
ライラはベッドで目を瞑るオキシパル伯爵を、ゴミを見るような目で見た。
なるほど、そういうことか。だから、私も女性だから、あの小部屋から出ないほうがいい、と言っていたのかと納得する。
オキシパル伯爵は騎士であるものの、どちらかというと頭を働かせるほうが得意なようで、普段はこの政務館にいるのが常らしい。だから急な蹴りに対処するのは難しかったのだ。アダムは「兄上は訓練も苦手でしたし、体が反応しないのは仕方ないですね」と笑っている。それでいいのか、騎士オキシパル伯爵。
そんな事情を聞いていたところ、オキシパル伯爵が目を開けた。
「兄上、気が付きましたか」
アダムの声に、オキシパル伯爵はアダムを見て、ライラを見て、そして私を見た。
「大丈夫ですか?」
ライラへの態度は許せないが、気絶させてしまって申し訳なかったという気持ちもあり、そうオキシパル伯爵に声をかけた。すると、オキシパル伯爵が急に私の腕を掴んだ。
「兄上!?」
ギョッとするアダムの声にオキシパル伯爵は反応を返さない。掴まれた腕は、強い力ではあるものの、痛いわけではない。ただ掴まれているだけ、といったような力で、きっと振りほどこうと思えば振りほどけそうだと判断し、私はそのままにしておいた。
「お前が私を蹴ったのか」
「はい、わたくしが蹴りました。オキシパル伯爵がいけないのですよ。女性を無理矢理壁に押し付けるのは、良くないです」
「あれは、この女がいてはいけない場所にいるから」
「どうして、いてはいけないのですか? 仕事ができるのですから、女性だってこの場にいていいはずです。政務館で働くのは男性でないといけないなんて、決まりはないはずでしょう。わたくしだって、先ほどまでライラと一緒に働いていましたし」
「……そうなのか?」
あれ、思ったより話が通じている気がする。
「ええ、今、経理部は繁忙期ですから。あと数日はわたくしもお手伝いに参ります」
「……分かった」
オキシパル伯爵は素直に頷いた。どうやら納得してもらえたようだ。
ライラとアダムに顔を向けると、ライラはオキシパル伯爵を怪訝な表情で見ていて、アダムは呆れたような顔で兄を見ていた。
オキシパル伯爵の目が覚めたため、私とライラとアダムは部屋を出た。経理部に向かいながら、会話する。
「よかったわね、ライラ。オキシパル伯爵も分かってくれたみたい」
「……そうなんでしょうか」
私の言葉に、ライラは微妙な顔をした。そしてライラはアダムを向く。
「……アダムさん、あの男、もしや打たれ弱い? いえ、違うわね、打たれて燃える人なの?」
「いやぁ、俺も知りたくなかったな。でも、そうみたいですね。まさか兄弟で好みが一緒なんて、困ったな」
「は? アダムさんも打たれて燃える人!?」
「そっちの好みではないです。俺は、存在自体が好みってだけで」
「……ああ、そういうこと。ただ、どちらにしても、未来はなさそうだけれど」
「それが、そうでもなさそうなんだなぁ。今って、こう、足元がグラグラな状態というか。少し揺さぶれば、俺のところにも落ちてきてくれそうで」
ライラは唖然とした顔で立ち止まった。
「止めなさいよ! 冥界に落ちるわよ! 兄弟で質が悪い!」
「ありがとう」
「誉めてない!」
何の話か分からない私は、ライラとアダムは仲が良くていい、仲良しが一番! と思いながら、あと一仕事頑張ろうと思うのだった。
この仕事にも慣れて、離縁後はこういう仕事も選択肢の一つとしていいかも、そんな風に思うことで先日受けたショックを緩和させていた。あの日は帰ってから寝付けなくて寝不足になったものの、日が経ち、考えすぎても仕方がないのだと諦めた。そんなことより、前向きに、未来の計画を立てた方がいい。
仕事に集中していると、ふと、少し前にトイレで小部屋を出たライラが戻っていないことに気づく。トイレにしては、少し長いかもしれない。
心配になって、小部屋を出た。最近の仕事が激務なため、ライラが疲れてどこかで倒れていたら大変だ。
トイレまでの廊下を歩いていると、トイレの少し先でライラが騎士に詰め寄られているのを発見した。なにやら雰囲気が良くない。ライラは怒ったように騎士を睨み、騎士はライラに冷たい態度で何かを言っている。しかも、ライラの片腕を上へあげて騎士は拘束したように壁へ押し付けていた。
(女性になんてこと!)
私は歩く速度を上げた。ライラを助けなければ。
コツコツと鳴る私の足音に気づいたのか、ライラを拘束していた騎士が私を見た。しかし、もう遅い。
騎士の目の前まで来た私は、騎士に後ろ回し蹴りをお見舞いした。床に突っ伏した騎士を睨み付けながら、ライラの腕を引っ張った。
「ライラ、無事!?」
「……奥様、かっこいい」
「……え?」
「あ、いえ。無事です」
「そう、良かった! なんなの、この人! ライラにあんなことするなんて! ……それにしても、起き上がらないわね?」
騎士だから、女性の蹴りなど大したことないはずなのに、起き上がるどころか、どうやら騎士は気絶しているようだ。綺麗に決まり過ぎたのだろうか。
そこに、本日の護衛のアダムが走ってやってきた。
「どうしたんですか!? ……あれ、兄上?」
「……兄上? え、この方、アダムさんのお兄様?」
「はい。なんで伸びてるんだろ?」
「あ、それは、わたくしが蹴ったから?」
「……蹴った?」
「だって、ライラさんに無体を働くのだもの。引き離さなきゃと思って」
アダムは、急に噴き出して笑い出した。
「なるほど、それは良い判断でしたよ」
「い、一応、騎士には足技を仕掛けてよいと、旦那様から許可は得ていますからね!?」
言い訳だけは、しっかりしておく。夫ルークは間違いなくそう言っていたのだから。
結局、気絶中のアダム兄は別室に運んだ。そこにライラとアダムと一緒に入室する。
アダム兄が気絶している間、ライラが経緯を説明してくれた。
アダム兄は、ライラが「会いたくない奴」と言っていた人物で、名をジョシュアン・ル・オキシパルといって、オキシパル伯爵というらしい。アカリエル公爵家の縁戚にあたるのだとか。ということは、アダムも縁戚ということだ。
オキシパル伯爵は、政務を行うのは男性でなければならない、という思想の元、ライラがいるのを知ると、いつも政務館から出ていけと、圧をかけるのだとか。それは経理部が忙しかろうが、女性が男性の職場と思っている場所にいるほうが許せないらしい。
「この男のせいで、政務館では文官の女性は雇ってもらえないんです」
ライラはベッドで目を瞑るオキシパル伯爵を、ゴミを見るような目で見た。
なるほど、そういうことか。だから、私も女性だから、あの小部屋から出ないほうがいい、と言っていたのかと納得する。
オキシパル伯爵は騎士であるものの、どちらかというと頭を働かせるほうが得意なようで、普段はこの政務館にいるのが常らしい。だから急な蹴りに対処するのは難しかったのだ。アダムは「兄上は訓練も苦手でしたし、体が反応しないのは仕方ないですね」と笑っている。それでいいのか、騎士オキシパル伯爵。
そんな事情を聞いていたところ、オキシパル伯爵が目を開けた。
「兄上、気が付きましたか」
アダムの声に、オキシパル伯爵はアダムを見て、ライラを見て、そして私を見た。
「大丈夫ですか?」
ライラへの態度は許せないが、気絶させてしまって申し訳なかったという気持ちもあり、そうオキシパル伯爵に声をかけた。すると、オキシパル伯爵が急に私の腕を掴んだ。
「兄上!?」
ギョッとするアダムの声にオキシパル伯爵は反応を返さない。掴まれた腕は、強い力ではあるものの、痛いわけではない。ただ掴まれているだけ、といったような力で、きっと振りほどこうと思えば振りほどけそうだと判断し、私はそのままにしておいた。
「お前が私を蹴ったのか」
「はい、わたくしが蹴りました。オキシパル伯爵がいけないのですよ。女性を無理矢理壁に押し付けるのは、良くないです」
「あれは、この女がいてはいけない場所にいるから」
「どうして、いてはいけないのですか? 仕事ができるのですから、女性だってこの場にいていいはずです。政務館で働くのは男性でないといけないなんて、決まりはないはずでしょう。わたくしだって、先ほどまでライラと一緒に働いていましたし」
「……そうなのか?」
あれ、思ったより話が通じている気がする。
「ええ、今、経理部は繁忙期ですから。あと数日はわたくしもお手伝いに参ります」
「……分かった」
オキシパル伯爵は素直に頷いた。どうやら納得してもらえたようだ。
ライラとアダムに顔を向けると、ライラはオキシパル伯爵を怪訝な表情で見ていて、アダムは呆れたような顔で兄を見ていた。
オキシパル伯爵の目が覚めたため、私とライラとアダムは部屋を出た。経理部に向かいながら、会話する。
「よかったわね、ライラ。オキシパル伯爵も分かってくれたみたい」
「……そうなんでしょうか」
私の言葉に、ライラは微妙な顔をした。そしてライラはアダムを向く。
「……アダムさん、あの男、もしや打たれ弱い? いえ、違うわね、打たれて燃える人なの?」
「いやぁ、俺も知りたくなかったな。でも、そうみたいですね。まさか兄弟で好みが一緒なんて、困ったな」
「は? アダムさんも打たれて燃える人!?」
「そっちの好みではないです。俺は、存在自体が好みってだけで」
「……ああ、そういうこと。ただ、どちらにしても、未来はなさそうだけれど」
「それが、そうでもなさそうなんだなぁ。今って、こう、足元がグラグラな状態というか。少し揺さぶれば、俺のところにも落ちてきてくれそうで」
ライラは唖然とした顔で立ち止まった。
「止めなさいよ! 冥界に落ちるわよ! 兄弟で質が悪い!」
「ありがとう」
「誉めてない!」
何の話か分からない私は、ライラとアダムは仲が良くていい、仲良しが一番! と思いながら、あと一仕事頑張ろうと思うのだった。
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