88 / 132
最終章
88 情報交換と相談1
しおりを挟む
時間が少し進み、五月の半ば。
現在私は東京に戻ってきていた。学校に通ったり仕事をしたりする日々を過ごしつつ、夜の現在、リビングで麻彩に化粧とヘアメイクをしているところだった。丁度その時、兄が帰宅した。
「おかえり、お兄様」
「ただいま。なんだ、まだ風呂に入ってないのか?」
「これが終わってから入るの。よし、できた! まーちゃん、綺麗だよ。モデルさんにしか見えない」
「えへ! さーちゃん、写真撮って!」
「オッケー」
麻彩の写真をスマホで複数枚撮り、画像を確認する。その後画像を少し加工した。それを近くのソファーに座った兄が見ている。
「なんだ、次の撮影の構図か?」
「うん、そう。冬に出したリップが好調でね。今度新色を予定しているから、そのポスターの構図を考えてたの。まーちゃんのポスター人気なんだよ。モデルは誰だって問い合わせがよくあるもの」
ポスターの撮影は毎回麻彩だ。撮った写真はうちの会社のシステム担当の松山が加工してくれる。帝国にも写真技術はあるけれど、日本のほうが断然綺麗だ。帝国のは画質が粗いし、カラーも綺麗ではない。麻彩のポスターは店舗の中に貼るだけだが、チェックしている人も多いし、黒髪でエキゾチックだと麻彩が人気なのだ。
「ほら、こんな感じどうかな。写真はあえてカラーじゃなくてモノクロにして、まーちゃんの唇だけカラーにするの。素敵じゃない?」
「うん、いーかも!」
「そうだな。麻彩がより大人っぽくみえる」
褒められてニコニコしている麻彩が可愛い。でも、何か写真に足したい気もする。
「……まーちゃん、もし嫌じゃなかったら、藤くんを写真のパートナーに……」
「絶対イヤー!!」
「だよね……」
やっぱりか。断固拒否される藤ドンマイ。さて、ではどうしよう。
「じゃあ、お兄様にお願いしようかな?」
「俺をポスターにするな」
「大丈夫だよぉ。お兄様のななめ後ろからしか写さないから。男性の輪郭が欲しいだけなの。ちょっと試しに撮らせて」
「はあ? ちょっ……待て」
抵抗する兄を後ろを向いたまま座らせ、兄の正面の斜め前に麻彩に兄を向いて座ってもらう。そして麻彩には兄を抱き寄せてもらいつつ、頬にキスしようとする隙間を三センチくらい空けてもらった。そして麻彩の視線だけカメラに向けてもらう。そしてカメラを連写。
「わあ! すごくいい写真が撮れた!」
兄と麻彩に写真を見せる。それからモノクロにして麻彩の唇だけ再びカラーにした。
「うん、これいいよ! 次はこれにしたいな!」
「俺の許可は?」
「お兄様の顔は見えてないから、いいでしょう。ななめ後ろだけだよ? 本番の撮影日はお兄様のスケジュールに合わせるからね」
「もう確定なんだな……」
嫌そうな兄は無視である。
そうやって、わあわあと兄妹で騒ぐ夜は深けていった。
次の日、私は東京で死神業の同業者である九州地区担当の如月親子と情報交換のために会っていた。いつも会う場所は九州だったり東京だったりが多い。大阪や京都になる場合もある。どうやら如月親子は、今回異世界から直接東京に来たらしい。三人で入った焼肉店で、二人とも大食いを発揮していた。
「ごめんねぇ、紗彩。お肉焼いてもらっちゃって」
「いえいえ。じゃんじゃん焼くので、まずはお腹を満たしてください」
死神業の行き来で大食いになるのは、死神をやっていれば、みな通る道なのだ。ちなみにだ、異世界の行き来は特定の場所でしかできないわけじゃない。私は突然壁から現れる所を他人に見られたくないから、見られない場所で行き来するようにしているが、実は一度行ったことのある場所であれば、それが沖縄などでも帝都から行き来はできる。私が小さい頃は、今の家ではなく本家を拠点に行き来していた。如月家も東京にマンションの一室を持っているそうで、今日は異世界からそのマンションにやってきたという。
「それにしても、珍しいですね。直接東京に来ることってあまりないでしょう。いつも一度九州の家に帰られますよね」
「実は王国でちょっとゴタゴタしていてね。こちらに長時間はいられないの」
王国、如月家のあちらの異世界では、親戚間の権力争いが続いているらしいが、その関係で色々あるらしい。
如月家は日本でも事業をしていて、野菜ジュースなどの食品関係でわりと有名な会社を営んでいる。実はその会社で作っている野菜や薬草などが、異世界に持って行って加工すると、特別な薬になるらしい。王国で魔法と薬学に関係する事業が、大きくなったのは日本産の野菜と薬草のおかげだというのだ。どの同業者も、みんな異世界では工夫して事業を営んでいるのが分かる。
如月親子のお腹が満足したところで、それぞれ死神業に関する情報共有を行った。今回は特別互いに気になる情報共有はなかった。ちなみにだが、流雨がルーウェンとなって生きることになったことは話さなかった。ティカの話では異例のようだったし、流雨のことを話したくはないというのがあった。
それから、話さなくてはならないことを全て話した後、世間話程度に聞いてみたいな、という話をするため、私は口を開いた。
現在私は東京に戻ってきていた。学校に通ったり仕事をしたりする日々を過ごしつつ、夜の現在、リビングで麻彩に化粧とヘアメイクをしているところだった。丁度その時、兄が帰宅した。
「おかえり、お兄様」
「ただいま。なんだ、まだ風呂に入ってないのか?」
「これが終わってから入るの。よし、できた! まーちゃん、綺麗だよ。モデルさんにしか見えない」
「えへ! さーちゃん、写真撮って!」
「オッケー」
麻彩の写真をスマホで複数枚撮り、画像を確認する。その後画像を少し加工した。それを近くのソファーに座った兄が見ている。
「なんだ、次の撮影の構図か?」
「うん、そう。冬に出したリップが好調でね。今度新色を予定しているから、そのポスターの構図を考えてたの。まーちゃんのポスター人気なんだよ。モデルは誰だって問い合わせがよくあるもの」
ポスターの撮影は毎回麻彩だ。撮った写真はうちの会社のシステム担当の松山が加工してくれる。帝国にも写真技術はあるけれど、日本のほうが断然綺麗だ。帝国のは画質が粗いし、カラーも綺麗ではない。麻彩のポスターは店舗の中に貼るだけだが、チェックしている人も多いし、黒髪でエキゾチックだと麻彩が人気なのだ。
「ほら、こんな感じどうかな。写真はあえてカラーじゃなくてモノクロにして、まーちゃんの唇だけカラーにするの。素敵じゃない?」
「うん、いーかも!」
「そうだな。麻彩がより大人っぽくみえる」
褒められてニコニコしている麻彩が可愛い。でも、何か写真に足したい気もする。
「……まーちゃん、もし嫌じゃなかったら、藤くんを写真のパートナーに……」
「絶対イヤー!!」
「だよね……」
やっぱりか。断固拒否される藤ドンマイ。さて、ではどうしよう。
「じゃあ、お兄様にお願いしようかな?」
「俺をポスターにするな」
「大丈夫だよぉ。お兄様のななめ後ろからしか写さないから。男性の輪郭が欲しいだけなの。ちょっと試しに撮らせて」
「はあ? ちょっ……待て」
抵抗する兄を後ろを向いたまま座らせ、兄の正面の斜め前に麻彩に兄を向いて座ってもらう。そして麻彩には兄を抱き寄せてもらいつつ、頬にキスしようとする隙間を三センチくらい空けてもらった。そして麻彩の視線だけカメラに向けてもらう。そしてカメラを連写。
「わあ! すごくいい写真が撮れた!」
兄と麻彩に写真を見せる。それからモノクロにして麻彩の唇だけ再びカラーにした。
「うん、これいいよ! 次はこれにしたいな!」
「俺の許可は?」
「お兄様の顔は見えてないから、いいでしょう。ななめ後ろだけだよ? 本番の撮影日はお兄様のスケジュールに合わせるからね」
「もう確定なんだな……」
嫌そうな兄は無視である。
そうやって、わあわあと兄妹で騒ぐ夜は深けていった。
次の日、私は東京で死神業の同業者である九州地区担当の如月親子と情報交換のために会っていた。いつも会う場所は九州だったり東京だったりが多い。大阪や京都になる場合もある。どうやら如月親子は、今回異世界から直接東京に来たらしい。三人で入った焼肉店で、二人とも大食いを発揮していた。
「ごめんねぇ、紗彩。お肉焼いてもらっちゃって」
「いえいえ。じゃんじゃん焼くので、まずはお腹を満たしてください」
死神業の行き来で大食いになるのは、死神をやっていれば、みな通る道なのだ。ちなみにだ、異世界の行き来は特定の場所でしかできないわけじゃない。私は突然壁から現れる所を他人に見られたくないから、見られない場所で行き来するようにしているが、実は一度行ったことのある場所であれば、それが沖縄などでも帝都から行き来はできる。私が小さい頃は、今の家ではなく本家を拠点に行き来していた。如月家も東京にマンションの一室を持っているそうで、今日は異世界からそのマンションにやってきたという。
「それにしても、珍しいですね。直接東京に来ることってあまりないでしょう。いつも一度九州の家に帰られますよね」
「実は王国でちょっとゴタゴタしていてね。こちらに長時間はいられないの」
王国、如月家のあちらの異世界では、親戚間の権力争いが続いているらしいが、その関係で色々あるらしい。
如月家は日本でも事業をしていて、野菜ジュースなどの食品関係でわりと有名な会社を営んでいる。実はその会社で作っている野菜や薬草などが、異世界に持って行って加工すると、特別な薬になるらしい。王国で魔法と薬学に関係する事業が、大きくなったのは日本産の野菜と薬草のおかげだというのだ。どの同業者も、みんな異世界では工夫して事業を営んでいるのが分かる。
如月親子のお腹が満足したところで、それぞれ死神業に関する情報共有を行った。今回は特別互いに気になる情報共有はなかった。ちなみにだが、流雨がルーウェンとなって生きることになったことは話さなかった。ティカの話では異例のようだったし、流雨のことを話したくはないというのがあった。
それから、話さなくてはならないことを全て話した後、世間話程度に聞いてみたいな、という話をするため、私は口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日7時•19時に更新予定です。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる