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最終章
92 急転2
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流雨に妹ではなく女性として好きだと言ってもらえたことが嬉しくて、どうすればいいのか分からない。顔も熱いし、流雨を直視できない。
「紗彩にもう一つ言うことがある。紗彩が婚約を断られたのは、俺のせいなんだ」
「……? どういう意味?」
「紗彩を他の男に渡したくなかったから、婚約を相手に断ってもらったんだ」
「………………嘘よね!?」
苦笑する流雨を見ると、嘘ではないようだ。頭がくらくらする。
「紗彩、最近俺から離れようとしているでしょう」
「えっ」
「そんな状態の紗彩に好きだと言っても逃げそうだし、でも紗彩が他の男と婚約するのを見たくないし、苦肉の策だったんだ。許して?」
流雨離れをしようとしていたのがバレていたとは。流雨が本気で私が好きなら、他の人に渡したくないという気持ちは分かるので、怒れない。
「紗彩は婚約者が欲しいのでしょう。だったら、俺と婚約しよう」
「そ、それは」
「紗彩は俺の事、どう思っている? 俺から離れたかったのは、俺が嫌いだからではないよね?」
「………………っ」
嫌いどころか、好きだから離れたかった。兄としてではなく男性として好きだと言いたい。でも、本当にいいのだろうか。私が好きになってしまったら、その相手は不幸になる。時間を巻き戻してしまい何かしらの不運を受けたはずの前世の夫も、東京で死を迎えた流雨も、私が愛してしまったのが原因だと思うのだ。また、同じ不幸を招きたくない。
流雨に好きだと言われて嬉しいのに、今、私は流雨に何も答えられない。
「……るー君のこと、どう思っているかも含めて、考える時間が欲しいの」
「……分かった」
その日はそれで流雨は家に帰るのだった。
その日の夜、ユリウスと部屋で話をしていた。ユリウスは膝の上にクッションを置き、その上にパソコンを置いて仕事をしながら口を開いた。
「僕は、姉様は流雨さんに好きだと即答するかと思っていました」
「るー君のことは好きだけど、結婚は話が別だし……」
「なぜですか? 僕は姉様が流雨さんを好きだと知ってるので、流雨さんの婚約妨害も見て見ぬ振りをしていたのですよ」
「え!? ユリウスも知ってたの!?」
「すみません、知っていました。婚約者候補がどの方も気に入らないので、だったら姉様が好きな流雨さんのほうが相手としてはマシかと思いまして」
ユリウスに黙っていられたのはショックだけれど、ユリウスなりに私を思っての行動なのだ。怒れないではないか。
「るー君が好きだからこそ、私と一緒にならないほうがいいと思うの。私って死神業をしているでしょう」
「流雨さんは、気にしないと思いますが」
「るー君は気にしないかもしれないけれど! ほら、きっとリンケルト公爵が嫌だと思う!」
「え、リンケルト公爵に死神業のことを言うつもりですか? 結婚相手の実家には、もともと言うつもりはなかったですよね?」
「い、言わないけどぉ」
話せば話すほど、流雨とは結婚できないもっともな理由が出てこず、ユリウスを納得させられない。
「とにかく! るー君とのことはちゃんと考えるから、るー君には、私がるー君を好きだって言わないでね!」
「……分かりました」
「じゃあ、私もう寝るね! お休み!」
私はユリウスの頬にキスをして、逃げるように自室へ去るのだった。
「紗彩にもう一つ言うことがある。紗彩が婚約を断られたのは、俺のせいなんだ」
「……? どういう意味?」
「紗彩を他の男に渡したくなかったから、婚約を相手に断ってもらったんだ」
「………………嘘よね!?」
苦笑する流雨を見ると、嘘ではないようだ。頭がくらくらする。
「紗彩、最近俺から離れようとしているでしょう」
「えっ」
「そんな状態の紗彩に好きだと言っても逃げそうだし、でも紗彩が他の男と婚約するのを見たくないし、苦肉の策だったんだ。許して?」
流雨離れをしようとしていたのがバレていたとは。流雨が本気で私が好きなら、他の人に渡したくないという気持ちは分かるので、怒れない。
「紗彩は婚約者が欲しいのでしょう。だったら、俺と婚約しよう」
「そ、それは」
「紗彩は俺の事、どう思っている? 俺から離れたかったのは、俺が嫌いだからではないよね?」
「………………っ」
嫌いどころか、好きだから離れたかった。兄としてではなく男性として好きだと言いたい。でも、本当にいいのだろうか。私が好きになってしまったら、その相手は不幸になる。時間を巻き戻してしまい何かしらの不運を受けたはずの前世の夫も、東京で死を迎えた流雨も、私が愛してしまったのが原因だと思うのだ。また、同じ不幸を招きたくない。
流雨に好きだと言われて嬉しいのに、今、私は流雨に何も答えられない。
「……るー君のこと、どう思っているかも含めて、考える時間が欲しいの」
「……分かった」
その日はそれで流雨は家に帰るのだった。
その日の夜、ユリウスと部屋で話をしていた。ユリウスは膝の上にクッションを置き、その上にパソコンを置いて仕事をしながら口を開いた。
「僕は、姉様は流雨さんに好きだと即答するかと思っていました」
「るー君のことは好きだけど、結婚は話が別だし……」
「なぜですか? 僕は姉様が流雨さんを好きだと知ってるので、流雨さんの婚約妨害も見て見ぬ振りをしていたのですよ」
「え!? ユリウスも知ってたの!?」
「すみません、知っていました。婚約者候補がどの方も気に入らないので、だったら姉様が好きな流雨さんのほうが相手としてはマシかと思いまして」
ユリウスに黙っていられたのはショックだけれど、ユリウスなりに私を思っての行動なのだ。怒れないではないか。
「るー君が好きだからこそ、私と一緒にならないほうがいいと思うの。私って死神業をしているでしょう」
「流雨さんは、気にしないと思いますが」
「るー君は気にしないかもしれないけれど! ほら、きっとリンケルト公爵が嫌だと思う!」
「え、リンケルト公爵に死神業のことを言うつもりですか? 結婚相手の実家には、もともと言うつもりはなかったですよね?」
「い、言わないけどぉ」
話せば話すほど、流雨とは結婚できないもっともな理由が出てこず、ユリウスを納得させられない。
「とにかく! るー君とのことはちゃんと考えるから、るー君には、私がるー君を好きだって言わないでね!」
「……分かりました」
「じゃあ、私もう寝るね! お休み!」
私はユリウスの頬にキスをして、逃げるように自室へ去るのだった。
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