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発芽
しおりを挟む「耀作!早く起きないと遅刻するわよ!」母親のこの一言から僕の一日は始まる。僕の名前は稲生耀作。どこにでもいる平凡な高校2年生。特にこれといった才能はなく、ただ毎日学校へ通い授業を受けうちに帰って眠る。そう、つまらない人生を送っているわけだ。でも、それでも俺は生きるしかないと考えている。かの有名なドイツ生まれの理論物理学者であるアルベルト・アインシュタインは「誰かのために生きてこそ、人生には価値がある」という名言を残している。まだ誰かのために生きたことがないからどんな気持ちになって毎日を生きているのか分からないし知りたい。そう思いながら生活をしているのだが現実はなかなかうまくいかないものだ。人生80年と考えて長い目で目標を見据えることはある意味大切なことかもしれないが、それよりもまずはこの先の進路を一番に考えなくてはならない。僕は決して頭が良いわけではないが、かと言って悪くもなく至って平凡である。極端に高い成績(いち)や低い成績(いち)に存在すると周りからのプレッシャーに押し潰されそうになるが俺の場合はそんなことがないため一番困ってしまうのだ。別に何かやりたいことがあるわけでもないのだから。
そんな5月のある日、いつも通りに授業を終え学校から帰宅していると路地裏から女性の呻き声が聞こえてきた。人通りが少ないためか誰も気づいていないようで俺は考えるより先に声が聞こえる方へ走り出した。たどり着いた先で目にしたのはボロボロな姿をして制服を着た同い年くらいの女の子だった。「大丈夫ですか?しっかりしてください!!」そう声をかけるも反応がなく慌てて救急車を呼んだ。その間ひたすら声をかけ続けながら待っていた。30分ほどしてようやく救急車が到着し、救急隊員たちが担架を持ってやってきた。「こっちです!この子です!」そう叫び早く運んでもらうと思った瞬間、俺は衝撃の一言を言われた。「通報してくれたの君だよね?それで、その女の子はどこに?」「えっ?いや、何言ってるんですか、ここに寝転んでるじゃないですか。苦しそうなので早く連れて行って応急処置をお願いします!」「君、大丈夫かい?ここにはそんな子いないじゃないか。もしかして君が怪我人で頭をどこに強くぶつけたのかい?」一体何が起きているのか全く理解が出来なかった。そんな訳の分からない瞬間からの記憶は曖昧で気がついたら俺は家で晩御飯を食べていた。
「耀作?どうしたの?食欲ないみたいだけど今日学校で何かあった?」母の一言で我に帰ると突然大きな声で叫んでいた。「ねぇ!女の子はどこ行ったの?無事なの?ちゃんと病院に運ばれたんだよね?」俺が間髪入れずに母親に質問すると「やっぱり具合悪いんじゃない?もうご飯はいいから早くお風呂に入って寝なさい。」そう言って俺の食器を片付けてしまった。正直まだ混乱状態なのかもしれないと思い。とりあえず風呂に入って眠った。すると、少女が目の前に現れ微笑みながらこう言った。「さっきは助けてくれてありがとうね。私はなんとか無事だったけど君は気絶してたみたいですごく心配していたんだ。でもまた会えてよかった。」「あの、君は一体誰なんだい?救急隊員には揶揄われていたみたいで正直腹が立っているけど何か問題を起こしたとかじゃないよね?」「そうだといいんだけどね...。」彼女の曖昧な返答に凄く焦りを覚えた。「本当に君はただの女の子だよね?」そう問いかけると彼女はだんだんと遠くの方へ行き答えることはなかった。
「ちょっと待ってよ!」大きな声で叫ぶとすでに朝になっていた。どうやら夢を見ていたようだ。
その日から俺は四六時中彼女のことだけで頭がいっぱいだった。そのためか成績が落ち先生からは「最近少し弛んでないか?何があったか分からないけど雪案蛍窓しなければ明るい未来はやってこないぞ。」と言われるがそんな言葉は今の俺には微塵も響かなかった。俺は一体何にここまで突き動かされているのだろうか。彼女のことが気になるのは間違いないが単純に可愛いから?それとも謎が多いから?それとも...。あれこれ考えている間に彼女と出会った場所まで来ていた。どうやら無意識でここに来ていたようだ。だが、何もなくすぐに帰ろうとしたその時だった。あの時に香った優しくて甘い感じが鼻の奥にツーンと届いた。そして後ろを振り返ると彼女が立っていたのだ。「また会えたね」まるで夢の続きのような展開で自分の頬をつねったがどうやら夢ではないようだ。俺はどうしたらいいのか分からなく動揺していると彼女の方が先に口を開き、「この間は助けてくれてありがとうね。そういえばまだ名乗って無かったね。私恵よろしくね!」そういう時ウインクをした。俺はドキドキしていた。女子とまともに話したことがないからというのもあるが、やはりその美貌が何よりの原因であると感じた。「元気になってよかったね。俺は耀作。稲生耀作!耀作って呼んでくれると嬉しいな。」「耀作。素敵な名前だね!」そんな何気ない会話での再会から俺たちの物語は始まっていったのだ。
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