生きるとは

航海

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変わりゆくもの

絶対的なもの

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5人兄弟の双子の3女として私は生を受けました。

母のお腹の中にいた頃の話です。
家計的にも大変だった母は、私達双子を産むか産まないか、とても悩んでいたそうです。悩んだ末、産むことを決心しましたが未熟児だった為、とても苦労したそうです。

 毎日、母乳を病院まで届け仕事に子育てと目まぐるしい日々が続きました。

私が5歳になった頃、弟が産まれました。
念願の男の子だったのでしょう。母がとても嬉しそうに弟を抱き、タクシーから降りてきたのを覚えています。
 
1年が過ぎ、家族皆で出かけた時のことです。日も暮れて私は疲れていたのかうたた寝をしていました。何度か父に

 「寝んな!起きとけよ!」

と声をかけられていました。
それでも眠たくて仕方の無い私は何度もうたた寝をしては起こされての繰り返しでした。

すると、頭の上から怒鳴り声がしました。

「寝るな言うてるやろ!」

母も驚いた顔をし、私たち姉妹も目を点にさせ何も言えませんでした。
沈黙が続いたあと父から

「ここで、降りろ!」

と不機嫌そうに言うのです。
そこは、国道沿いで周りには民家があり、特にこれと言ったものはない場所でした。
呆れ果て怒りに満ちた母は、車から降り私たち四姉妹を連れ弟を抱えながらタクシーを使い母の実家に帰ることになりました。

 その夜、父は反省したのか母の実家まで迎えに来てくれました。
何がそんなに不服だったのか?
今思えば、自分は運転しているのに何故、この子達は寝ているんだ!という苛立ちからの行動だったのでしょう。
 
 そんな短気な父親のことです。自分の思い通り行かなければ怒鳴り散らしては物に当たっていました。

 ある日、晩御飯中に父が妹に罵声を浴びせていました。原因は、妹が左利きだからというものでした。
父が言うには、左利きは恥ずかしい事なので右利きに直して欲しいという事でした。
かといって直ぐに直るものでもなく、毎日のように罵声を浴びせられていました。

何日か経った日の夜、何度言っても利き手が直らない妹に痺れを切らした父が突然飲んでいたビールを妹の顔にかけたのです。

床や天井、周りの兄弟姉妹にもビールが飛び散っていました。

私は、恐怖で固まってしまいました。
妹は泣きながらも必死に利き手を直そうとしていました。
母も止めに入りましたが父の怒りは収まることはありませんでした。

私は、子供ながらに父が満足出来るように発言し行動をしなければならないんだと思うようになって行きました。


 別の日にも妹がおねしょをしてしまった事がありました。
これが初めてという訳では無いのですが父は躾と言い新聞紙を丸めその新聞紙で妹のお尻を叩き始めたのです。
それでもおねしょが直らない。

そんな時、叩いても直らないのがカンに触ってしまい、父は自分が吸っていた煙草を妹の手の甲に押し当てたのです。
泣き声が響き渡る部屋で、私たちはどうしようも出来ませんでした。

 父の度を超えた躾は毎日続きました。楽しく塗り絵をしていても綺麗に塗れていなければ取り上げられ、私たち専用に文房具を用意しくれていても勝手に使うことは許されません。

父が把握している数でなければ怒鳴りつけ、正座を何時間もさせられる事も多々ありました。
 

 ある晩に両親が「チャイルド・プレイ」と言うホラー映画を見ていました。
私は、ホラーやお化けといったものが苦手でした。
その日は、たまたま目が覚め布団に包まりながら映画が終わるのを息を殺しながら待っていました。

驚くシーンが流れると身体がビクッと動いてしまうのですが起きていることに気づかれてしまうと父に怒鳴られると思い必死で堪えていました。

 すると「ぶうぉーん」っと激しい音と共に私は布団から飛び出ました。両親も驚いたらしく父は怒鳴り声をあげ私を叱りつけました。

後から気づいた事なのですが私の足元にはコンセントが刺さったままのドライヤーが置いてあったのです。

何も知らずに早く映画が終わらないかと震え硬直状態だった私には、ドライヤーの存在に気づくことが出来ませんでした。

 あの時、びっくりして身体が動いたと同時にドライヤーのスイッチに私の足の指が当たってしまったのでしょう。謝りはしたものの父の怒りは収まらず、その後の記憶がありません。
 
 絶対的な父の言い付けに従わなければいけない毎日。
泣き声と怒鳴り声が響き渡る部屋。
生まれてから、たった6年での出来事。




1年後、あの大地震が起こることは
まだ誰も知らない
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