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カルチア森林
フェルト・グローリー
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「この道は……こっちかな」
2人はカルチア森林を抜けた先にあるドニー村を目指していた。
カルチア森林はそこまで大きくもなくが、特に特徴のない森のため、迷う人は少なくない。音宮のスキルがあれば道に迷うことはない。
暫くの間、スキルを使いながら道に迷わないよう進んでいたのだが、ふと何者かが感知に引っかかった。
なんだ?何かが此方に向かって走って来る
馬…それに人の声も聞こえてきた…方向から察するに王国兵か
音宮は安藤を手を握る
「ーーーーえっ…」
「少し走るよ。誰かが追って来てる。多分だけど、王国の兵士たちだ。」
2人は全速力で森を駆ける。
足の傷が痛むが今はそんな事を気にしている場合ではない。
相手はどうやら馬を使って追ってきているみたいだ。どう考えても走って逃げきれるわけがない。一旦どこかに身を隠した方が賢明だ。幸い、奴らとはまだ距離が開いている。
周囲を見渡しながら隠れられそうな場所を探すと、崖の上に巨大な岩があった。
ここなら身を隠せる上に兵士を視界に捉える事も出来る。
暫くすると案の定、王国兵が崖下へと現れた。
周囲をキョロキョロと見渡している。どうやらまだ見つかっていないようだ。
このまま何処か遠くへ去ってくれたらいいのだが…そう思った瞬間、奥にいた魔術師のような服装の人物がなにかを唱えている。
あれは一体なにをしている…なんだか嫌な予感がする。
そもそも逃げている時から変だと思っていたんだ。奴らはなぜ、俺たちのいる方向へ一直線に向かってこれたんだ。まるで、こちらの位置がバレているとしか思えない。
考えられる可能性としては裏切者がいる事。
その場合、安藤が裏切者という事になるが、その可能性は極めて低い。彼女が俺を捕まえる為についてきたのであれば、俺が寝ている間に兵士を呼ぶ方が確実だ。よってこれ可能性は0に等しいだろう。
だとすると、次は衣類に発信機を付けられているパターン。
この可能性は十分考えらえるが、そもそもそこまで文化が発展しているようには思えない。そもそも、俺は何度も反音響で俺と安藤を感知してきた。そのような異物を感知できたことは一度もない。よってこれも可能性は低い。
最後にこれは一番厄介なパターンだが、魔法で追いかけている場合だ。
こうなってしまうと最悪。俺には何の対処法も思い浮かばない。
なんせ、魔法なんてものは俺の知識には一切ないもの。
それの対抗策なんてすぐに思いつくわけもない。
しかし、あの見た目に呪文のようなものを唱えている姿からすると、魔法で追いかけてきてるんだろうな…
そう考えながら、魔術師の方を見ていると目が合った。
「安藤さん、落ち着いて聞いて。たぶん、兵士たちに見つかっちゃったと思う。」
「え…それってマズいんじゃ…」
「音宮様、安藤様。そちらにおられる事はわかっています。私はリスランダ王国第5部隊・隊長のフェルト・グローリーと申します。
貴方方に害を加えるつもりはありません。どうか大人しく投降して下さい。」
「音宮くん……」
安藤が不安そうな目で服の袖を引っ張ってくる。服が伸びるからやめて欲しい。
「この場所がどうしてわかった」
「リスランダ王国の城壁には、目には見えない魔力障壁が張ってあります。無断で王国を出入りした者を捉える為、その魔力を浴びた者を追跡する探索魔法を使って追ってきたのです。勇者様がその重圧に耐えかねて逃亡するケースは過去にもありました。お2人もそうなのでしょうが、一度王国へと戻られた上で、今一度考え直しては頂けませんか?」
なるほどな…中世的な見た目をしていたせいで油断していた。仮にも王国、セキュリティがそんなに甘い訳がないか…
それよりも今あいつ…聞きづてならない事を言いやがったな。
「フェルトと言ったか…お前、今なんて言った。この俺が重圧に耐えかねて逃げたと…そう聞こえたが、冗談だろ。まさかそんな臆病者だとでも言いたいのか?」
「……はぁ。確かにそう言いましたが…
ですが、そうでなければなぜ王国から逃げ出したのですか?」
「面倒だからに決まってんだろうが。
そもそもお前らは人に物を頼む態度じゃねえんだよ。無理矢理連れてきて置いて何が「勇者になってくれ」だ。断ったら帰してくれる訳でもあるまいし。あんなものはな、唯の脅迫って言うんだよ。誰がてめえらなんかについて行くかよ。」
「それは!…申し訳ないとは思っています。
…ですが、我々にも事情があってこうするしかないのです。
お2人が投降して下さらないと言われるのであれば仕方ありません。
実力行使です。無理矢理にでも連れて帰ります。」
「そういうところもムカつくポイントだぞ。なぜ自分達が負ける事を想像していない?お前らはそこまで強いのか?敵の事を良く知りもしないくせに自分が勝てると思い上がっているその思考回路、ぶち壊してやる。
音宮は自分がマイナスに見られる事が大嫌いだ。彼はそこそこ自分の事が好きで、なんでも卒なくこなせる自分に誇りを持っていた。
それ故に、出来ないや逃げてると思われる事が嫌いでその様な事を言ってきた奴は徹底的に潰すことを心に決めている。足に誇りを持っている奴は足で、喧嘩なら喧嘩で、目には目を歯には歯をというスタンスの元、相手のプライドをズタズタにし、二度立ち直れない様に。
キレた音宮は口が悪い。というかこの状態の音宮が本当に彼だ。
冷静沈着ではあるが、他人への興味が薄く、何かをされたら倍返し以上の報復を行い、二度と立ち直れない程のトラウマを与える。
本当の自分が好かれない事がわかっているから彼は普段から演じている。
しかし、隠していた本性が現れてしまった。
「音宮様。我々とて騎士団。こちらに来たばかりの勇者様に遅れを取るほど未熟ではありません。それに、なにもスキルは勇者様だけに与えられるものではないのですよ」
フェルト・グローリー スキル『連撃《コンボ》』
2人はカルチア森林を抜けた先にあるドニー村を目指していた。
カルチア森林はそこまで大きくもなくが、特に特徴のない森のため、迷う人は少なくない。音宮のスキルがあれば道に迷うことはない。
暫くの間、スキルを使いながら道に迷わないよう進んでいたのだが、ふと何者かが感知に引っかかった。
なんだ?何かが此方に向かって走って来る
馬…それに人の声も聞こえてきた…方向から察するに王国兵か
音宮は安藤を手を握る
「ーーーーえっ…」
「少し走るよ。誰かが追って来てる。多分だけど、王国の兵士たちだ。」
2人は全速力で森を駆ける。
足の傷が痛むが今はそんな事を気にしている場合ではない。
相手はどうやら馬を使って追ってきているみたいだ。どう考えても走って逃げきれるわけがない。一旦どこかに身を隠した方が賢明だ。幸い、奴らとはまだ距離が開いている。
周囲を見渡しながら隠れられそうな場所を探すと、崖の上に巨大な岩があった。
ここなら身を隠せる上に兵士を視界に捉える事も出来る。
暫くすると案の定、王国兵が崖下へと現れた。
周囲をキョロキョロと見渡している。どうやらまだ見つかっていないようだ。
このまま何処か遠くへ去ってくれたらいいのだが…そう思った瞬間、奥にいた魔術師のような服装の人物がなにかを唱えている。
あれは一体なにをしている…なんだか嫌な予感がする。
そもそも逃げている時から変だと思っていたんだ。奴らはなぜ、俺たちのいる方向へ一直線に向かってこれたんだ。まるで、こちらの位置がバレているとしか思えない。
考えられる可能性としては裏切者がいる事。
その場合、安藤が裏切者という事になるが、その可能性は極めて低い。彼女が俺を捕まえる為についてきたのであれば、俺が寝ている間に兵士を呼ぶ方が確実だ。よってこれ可能性は0に等しいだろう。
だとすると、次は衣類に発信機を付けられているパターン。
この可能性は十分考えらえるが、そもそもそこまで文化が発展しているようには思えない。そもそも、俺は何度も反音響で俺と安藤を感知してきた。そのような異物を感知できたことは一度もない。よってこれも可能性は低い。
最後にこれは一番厄介なパターンだが、魔法で追いかけている場合だ。
こうなってしまうと最悪。俺には何の対処法も思い浮かばない。
なんせ、魔法なんてものは俺の知識には一切ないもの。
それの対抗策なんてすぐに思いつくわけもない。
しかし、あの見た目に呪文のようなものを唱えている姿からすると、魔法で追いかけてきてるんだろうな…
そう考えながら、魔術師の方を見ていると目が合った。
「安藤さん、落ち着いて聞いて。たぶん、兵士たちに見つかっちゃったと思う。」
「え…それってマズいんじゃ…」
「音宮様、安藤様。そちらにおられる事はわかっています。私はリスランダ王国第5部隊・隊長のフェルト・グローリーと申します。
貴方方に害を加えるつもりはありません。どうか大人しく投降して下さい。」
「音宮くん……」
安藤が不安そうな目で服の袖を引っ張ってくる。服が伸びるからやめて欲しい。
「この場所がどうしてわかった」
「リスランダ王国の城壁には、目には見えない魔力障壁が張ってあります。無断で王国を出入りした者を捉える為、その魔力を浴びた者を追跡する探索魔法を使って追ってきたのです。勇者様がその重圧に耐えかねて逃亡するケースは過去にもありました。お2人もそうなのでしょうが、一度王国へと戻られた上で、今一度考え直しては頂けませんか?」
なるほどな…中世的な見た目をしていたせいで油断していた。仮にも王国、セキュリティがそんなに甘い訳がないか…
それよりも今あいつ…聞きづてならない事を言いやがったな。
「フェルトと言ったか…お前、今なんて言った。この俺が重圧に耐えかねて逃げたと…そう聞こえたが、冗談だろ。まさかそんな臆病者だとでも言いたいのか?」
「……はぁ。確かにそう言いましたが…
ですが、そうでなければなぜ王国から逃げ出したのですか?」
「面倒だからに決まってんだろうが。
そもそもお前らは人に物を頼む態度じゃねえんだよ。無理矢理連れてきて置いて何が「勇者になってくれ」だ。断ったら帰してくれる訳でもあるまいし。あんなものはな、唯の脅迫って言うんだよ。誰がてめえらなんかについて行くかよ。」
「それは!…申し訳ないとは思っています。
…ですが、我々にも事情があってこうするしかないのです。
お2人が投降して下さらないと言われるのであれば仕方ありません。
実力行使です。無理矢理にでも連れて帰ります。」
「そういうところもムカつくポイントだぞ。なぜ自分達が負ける事を想像していない?お前らはそこまで強いのか?敵の事を良く知りもしないくせに自分が勝てると思い上がっているその思考回路、ぶち壊してやる。
音宮は自分がマイナスに見られる事が大嫌いだ。彼はそこそこ自分の事が好きで、なんでも卒なくこなせる自分に誇りを持っていた。
それ故に、出来ないや逃げてると思われる事が嫌いでその様な事を言ってきた奴は徹底的に潰すことを心に決めている。足に誇りを持っている奴は足で、喧嘩なら喧嘩で、目には目を歯には歯をというスタンスの元、相手のプライドをズタズタにし、二度立ち直れない様に。
キレた音宮は口が悪い。というかこの状態の音宮が本当に彼だ。
冷静沈着ではあるが、他人への興味が薄く、何かをされたら倍返し以上の報復を行い、二度と立ち直れない程のトラウマを与える。
本当の自分が好かれない事がわかっているから彼は普段から演じている。
しかし、隠していた本性が現れてしまった。
「音宮様。我々とて騎士団。こちらに来たばかりの勇者様に遅れを取るほど未熟ではありません。それに、なにもスキルは勇者様だけに与えられるものではないのですよ」
フェルト・グローリー スキル『連撃《コンボ》』
応援ありがとうございます!
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