それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~

柵空いとま

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「シエラ、本当に大丈夫? 帰りたいとか思ったりしない? 私と一緒にフルメニアに帰ろう?」
「もう、手紙でも書いたでしょう? 大丈夫だよ。そんなことはしないし、できないよ……」

 一度、参加を表明する方々の名簿を見たことがあった。
 フルメニアとゼベランの重鎮はもちろんだが、ルナードの王弟などのような各国の貴族や王族も参列する。
 民だけではなく、この結婚式は周辺国から注目されるとわかった時に、しっかりしないといけないと自分を鼓舞した。

「……シエラの大丈夫、一番信用できないから」
「お姉様……」

 先ほどまで私の頭を撫でる手を止めて、お姉様は自分の腕に手を添えた。

「昔もそう。あの家庭教師が異様に貴女を厳しく指導した上に裏で悪口まで言いふらして……もし、お父様に気付かれなかったら、貴女はそのまま我慢するつもりだよね?」
「……」
「あいつの婚約者になった時もそう。色んな人にあれやこれや言われて、笑顔が段々とぎこちなくなって……それを一人で我慢して裏庭で泣いているのを、知ってるからね。……私も原因の一つだから、慰めにいけないのがすごく腹立たしい」

 まさか、知られているとは、全く気付かなかった。上手く隠せたと信じていたのに、事実はそうではなかった。

「お姉様……殿下に対して「あいつ」はどうかと思う」
「あんな優柔不断な男には「あいつ」がお似合いだ」

 驚きのあまりについ話題を逸らしたが、お姉様の口調が固くなるばかりだ。
 何回か深呼吸をしてから、お姉様は眉を下げながら顔を俯かせる。

「役目を得てから、貴女が私たちに何も言わなくなって……私も、お母様も、お父様も、すごく心配していたからね」
「……ごめんなさい」
「いや、違う……シエラを責めたいわけではない。……ううん、ごめん」

 私も姉にこういう風に謝らせたいわけではない。
 だって、これは完全に私の落ち度だった。
 家族を信じきれず、一人で全部抱えようとした。話しても理解してくれないと、勝手に決めつけたから。
 彼らは「シエラ」を「シエラ」のままで受け入れてくれると、誰よりも知っているはずなのに。

「昔はあんなに溌剌の大声で笑ったり、ドレスを着ているのに平気で木を登って皆を騒がせて――」
「待って!! それ以上は駄目!!」

 黒歴史が掘り起こされそうで、慌てて両手でお姉様の口を塞いだ。久々の姉妹の時間に気を使って、ソフィとカレンが部屋の外で待機しているのが本当に運がよかった。
 羞恥で目に涙が溜まっている感じがするが、それに構わずお姉様を睨む。
 だけど、寂しさが籠ったお姉様の目を見たら、感情が落ち着いた。彼女の口から手を離し、視線を逸らした。

 今度、お姉様は両手で私の頬を包む。
 額を合わせ、瞳を閉じる。それに誘われ、私も同じことをした。

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