旦那様、本当によろしいのですか?【完結】

翔千

文字の大きさ
13 / 26

笑みの怒り

しおりを挟む
聞き分けのない、駄々をこねる子供の様に喚く元夫にロザリアは溜息しか出ない。

だけど、まだまだコレだけでは無いんですけどね。

「因みに、お支払い頂くお金はコレだけではありません」
「は!?」
「ホテル・ヴェガ・クラウン元支配人ジャクソン・バウロ」
「ッ!?!?」

デリー夫人の後ろに立つヨハネスの口からジャクソンの名前が出た途端、ファーガスがビクッと体を跳ねらせた。

「エロルド・ブロッド男爵。
貿易商人ピーター・ミネルバ。
ライド商会幹部カルロス・クレイマン。
同じくライド商会幹部ルドバ・ギュースタン。
税務官アンドリュー・バレット」

淡々と紡がれるヨハネスの声が鋭くファーガスの精神に突き刺さる。

「以上6名を事実上ライド商会からの除籍処分されました」
「・・・・・・・は?」

ファーガスの思考が一瞬止まった。

「ジャクソン氏はホテル・ヴェガ・クラウンの運営資金の横領。
エロルド男爵は領民への強制労働強行及びライド商会からの労働者への給金の略取。
ピーター氏は物資の運搬の架空経費の水増し。
ライド商会幹部であったカルロス氏、ルドバ氏はライド商会の資金の不正利用、横領。更に、他国の商会にライド商会の企画を横流し。
そして、税務官であるアンドリュー氏は全ての所業をしていてにも関わらず、高額な賄賂により全て黙秘。
以上がライド商会の除籍処分の理由です」

何故?どうして?
ファーガスの頭の中でそのフレーズがずっと繰り返している。
ロザリアの実家にバレない様に細心の注意を払っていたはずなのに。

「この5年間貴方が厳選してお金とアークライド公爵家の娘である私の婿としての権限で抱え込んできた支援者達は、皆排除されました」
「ッ、」

ニッコリと微笑むロザリアにファーガスの顔色が悪くなっていく。

5年の歳月をかけて築いて来たコネクションが無くなった。

「私への不満を言う割には仕事をしている様に見えたので暫く様子を見ていましたけど、まさか他の人の悪事を斡旋する事で、自分の地位とコネクションを築いていたなんて、危うく我がライド商会の信頼を地に落とすところでしたわ」
「・・・・な、な、なんで、」
「以前から調査を行っていたんです」

ロザリアの微笑みにデリー一家は顔が真っ青になる。

「しかし、よく今まで隠し通せたものだな」
「そうね。手回しも根回しも上手くて、危うく見逃してしまいそうでしたもの」

テーブルの上の一枚の書類を手に取ったお父様の呟きにお母様も感心したように同意する。

「大方、自分の利益の為、互いが互いを庇い合い、尚且つそれを周囲に知られないように表面上では無関係もしくは敵対関係を装っていたんだろう。ある意味麗しい仲間関係だな」
「はい。皆さん、とても上手く隠していたみたいで随分と手こずったみたいですね」

可笑しそうに笑う兄、アレックスにロザリアもクスクス笑う。

ライド商会はロロビア王国最大の商会。
そのライド商会から除籍処分となればもうこの国では働くことは皆無。いや、近隣諸国でも受け入れてもらえる事も難しいだろう。
それほどアークライド公爵家の影響力が強い。
そして、その標的が、今度は自分に向けられようとしている事にファーガスは恐怖した。

「ッ、し、知らない、私は、」
「幸い、被害はそれほど甚大なものではなく修復可能でしたので大事には至りませんでしたが、被害は被害。当然、許される事ではありませんよね?
ファーガスさん?」

言い訳をしようと震えるファーガスの言葉を遮り、いつものように能天気に笑っているはずなのに、ロザリアの笑顔にファーガスの背筋に冷たい汗が流れた。

「私、これでも怒っているんですよ?」

ロザリアのその一言で分かった。

「彼等には既にそれ相応の罰は下されました。今度は、貴方の番ですよ」

目が笑っていない。
目が覚めてからずっと、自分を見るロザリアの目はまるで汚物を見るような冷たい目をしている。

「ヒッ、」

喉の奥で小さく悲鳴が出た。

「ああ、その前にもう1人、ご紹介したい人がいるんです」
「・・・・・っ、は?」
「ね、バーバラ・デリー夫人」

そう言いながロザリアはファーガスの隣でずっと黙って車椅子に拘束されて顔を俯かせ震えているデリー夫人に笑いかける。

「は!?」
「え?」

いきなり母親と妻を名指しされ驚くファーガスとデリー伯爵。

「ああ、それとも、この場合貴女のことはこう呼んだ方がいいですね。
 キャサリン・ミュチェルさん?」
「ッッ!!」

優しい言葉だが氷のように冷たいロザリアの言葉に無言のデリー夫人は車椅子に拘束された身体をビクッと震わせた。

「は?キャサリン??」
「ロ、ロザリア、母上に何を、一体何を言っている!?」

ロザリアの言葉の意味が分からず混乱するファーガスとデリー伯爵。

「キャサリン・ミュチェル。クロノス商会に出入りしているドレスデザイナー。38歳。
貴女のもう1人の人物像。ですよね?バーバラ夫人?」
「・・・・・っ、んん・・・・」

黙秘を貫くように顔を俯かせいる夫人の顔から汗が流れる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

そしてヒロインは売れ残った

しがついつか
恋愛
マーズ王国の住民は、貴賤に関係なく15歳になる歳から3年間、王立学園に通うこととなっている。 校舎は別れているものの、貴族と平民の若者が一か所に集う場所だ。 そのため時々、貴族に対してとんでもないことをやらかす平民が出てきてしまうのであった。 リーリエが入学した年がまさにそれだった。 入学早々、平民の女子生徒が男子生徒に次々とアプローチをかけていったのだ。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...