追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千

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追放されました

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「シェナ、お前今日でこのパーティーを抜けてもらう」
「はぁ?」

  シェナは思わず間抜けた声を出す。
 今日のクエストを終え、Aランクパーティー『ソロモンの槍』が借りている借家でパーティーの雑用係のシェナはメンバー5人分の食事を作りメンバーが食べ終えた食器を片付けていると、リーダー、ガストのいきなり言葉につい間抜けた声が出てしまった。

「・・・・リーダー、今日のクエストでどっかで頭打つけました?」

 思わず真顔でリーダーのに問うシェナ。

「俺は正常だ!!」

 ガストはバンとテーブルを拳で叩き、まだ回収しきれてない皿やコップが床に落ちる。

「落とさないでくださいよ。破れたら危ないでしょ」
「これはみんなの意見だ!!」
「無視か」

  他のメンバーを見渡す。リーダーを含む5人のメンバーが小馬鹿にした笑みでシェナを見下している。

「シェナ、いきなりで悪いんだと思ったけどね。でも、前々から考えていた事なのよ」

 ウェーブがかった長い金髪に水色の瞳のボディコン女剣士のエリーゼ。

「君はこのAランクパーティーに身を置かせてもらっている自覚が足りなかったようですね」

 前髪を右分けにした紫色の髪に緑の瞳の陰湿メガネの魔道士オリバー。

「僕は前々から忠告はした筈だよ?もうちょっと 自分の立場を理解した方がいいって」

 前髪を左分けにした紫色の髪に灰色の瞳、オリバーの双子の弟陰湿モノクルの弓使いエドガー。

「これは当然の報いと言うものなのだ」

 ツインテールの桃色の髪と瞳の巨乳ロリッ娘の猛獣使いアンメリー。

「シェナ、お前には目の上の人物に敬意を払う気心が足りてない。力も無いくせにいつも見下したような目をしやがって」

 金髪茶色の瞳、この『ソロモンの槍』のリーダー、脳筋勇者ガスト。
 そして、黒茶色のセミロングの髪に縦に細い青い瞳の瞳孔。拳闘士兼パーティーの雑用係のハーフエルフのシェナ。
 6人のAランクパーティー。
Aランクと言う上級パーティーなだけに実力は折り紙つき。
だが、些か性格に難があるとシェナは思っている。

「雑用係でありながら、我々に金をせびる!」
「ポーションなどの必需品の買い出しの必要経費を貰ってただけですけど?」
「クエスト中に単独行動を繰り返す!!」
「野営用の食料調達に行ってました」
「夜中に俺たちの武器を勝手に持ち出す!!」
「以前、自分の武器の手入れ怠ってクエスト失敗して逆ギレしてきたのはそちらですよ」
「食事が段々手抜きになってきた!!」
「手抜きじゃなく、節約レシピです。
貴方達5人の好みに合わせて料理を作ったらストックしていた食料がすぐ底をつくんですよ。皆好き嫌い激しくて困るんですよね」
「~~~~っっ!!!!お前のそう言う物の言い方が腹が立つんだ!!」

 ドガッ!!

  シェナの淡々とした論破的返答に激情しテーブルを蹴飛ばす。
だが、シェナは蹴飛ばされたテーブルをヒョイと避け、咄嗟にテーブルの脚の一本を掴み回転。
蹴られた勢いを巧みに無効にし何食わぬ顔でテーブルを床に置く。

「捻くれた性格は自覚している」

  ため息混じりにこぼすシェナ。最早敬語もこの人達にはいらないだろ。

「~~~~っ!!!珍しいハーフエルフだから何かと役に立つと思えば、魔力は並!第7魔法を使いこなしながら戦闘魔法はからきし!!クエストで使える魔法は治癒魔法だけ!!」
「パーティーに入る時に言った筈、私は拳闘士よ。魔術師や魔導士として頼るのはお門違いよ」
「なんだと!!ゴラァ!!」

 顔を真っ赤にし憤怒の表情で怒りまくるガスト。

「ガスト、いい加減言ってやれば?足手まといだって」

  さっきまでなり行きを見ていたエリーゼがシャシャリ出て来た。

「はっきり言うわ。貴方がパーティーに入ってから、外食は控えろ、やたらと買い物に行くなって、もう鬱陶しいのよ」

 エリーゼを皮切りに他のメンバーも、

「僕も君には魔法研究の実験を何度も邪魔されましたしね」
「食事で嫌いなものを食べる僕らの身になって欲しいものだね」
「シェナが私の従獣を世話したら、私の言う事聞かなくなって本当に迷惑しているのだ」

 口々に日頃のシェナに対する不満をぶち撒けるメンバーたち。

「聞いただろう。これが皆の意見だ」

 先程の憤怒の表情打って変わりドヤ顔のガスト。
 このパーティーを抜ける前に一発殴ってやろうかと思ったシェナだった。


 結局シェナはガスト達は殴らず、パーティーを抜ける事を承諾。
 元々、パーティーに入った頃から雑用係を押し付けられて嫌気がさしていた頃だからいい機会だ。
あらかじめ用意されていた、パーティー脱退の書類を出された。
 パーティーを抜けるにはこの書類にパーティーのリーダーの承諾のサインとパーティーを脱退する者のサインが必要。
双方のサインが書かれた書類はその場で所属ギルドへ転送される魔法がかかっている。
 シェナは書類に目を通す。
 書類の内容は、

『パーティー脱退後、『ソロモンの槍』に再入加する事を禁じ、またクエストの依頼を禁ずる』

 と言う、簡単かつ簡潔なものだった。一見普通のパーティー脱退の書類だが、一応何度も見直して不満点が無いか確認する。
 シェナにとっては、それ程困る内容では無かった。でも、なんか微かな違和感を感じるような?

「おい、さっさとしろ」

  渋れを切らせたエドガーに急かされ渋々自分の名前をサインする。

「はい、書いた」
「ふん、無駄な時間稼ぎしてんじゃねぇよ」

 書類を奪い取ると雑な字でガストの名前が書かれた。

「よし、これで」

 シェナの名前とガストの名前が書かれた書類が下から上へ光の粒になって消えていく。ギルドへ転送された。

「お前の脱退完了だ」

 書類が完全にテーブルの上から消えた。 
 シェナはまだ少し残ってる光の粒を見つめながらさっきから感じていた微かな違和感が何故か拭いきれないでいた。

「よし。じゃ、出て行け」
「・・・・・・・いきなりか」

 文字通り、エドガーとオリバーの2人がかりで持っていたって手荷物の鞄を持たされ借家から放り出されたシェナ。
 放り出されたと同時にドアを閉められ、鍵をしめられた。
 いくら未練が無いとはいえ、気分のいいものでは無い。
とりあえず、鞄の中身を確認すると、ギルド証明書に戦闘用のグローブ。銀貨が3枚入っていた。一応手切れ金のつもりだろう。
そして、古めかしい本が3冊と少しくたびれた青いターバン。
 季節は冬から春の暦に入ったばかり、日が落ち夜になると吐く息が白く薄く煙る。

「・・・・とりあえず、ギルドに行くか」

 シェナは、鞄の中からターバンを取り出し頭を簡単に覆い後ろで縛る。微か煙る自分の吐息と街の灯をぼんやり見つめ、鞄を持ち直しギルドへ足を運ぶ。


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