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シェナの処遇
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遠巻きに見ていたギルドメンバーやクエスト依頼をしに来た一般人に一連の騒動を謝罪していると、エマさんは私を個室に招いた。アーシアさんも心配だからと、一緒について来た。
個室には、既に一人の男性が椅子に座っていた。
「ロベルトさん」
彼はこのギルドのサブリーダーであるロベルトさん。水色の瞳に淡い茶髪を一つに纏めた紳士的な男性だ。
彼もまたシェナの叔父的存在の人で幼い頃から親切にしてもらっている人物の1人だ。
エマさんは仕事に戻り、部屋には私とアーシアさんとロベルトさんの三人になった。
「立ち話とは、いきませんので、どうぞ椅子に」
ロベルトさんの勧めで部屋に置いてあった椅子に座る私とアーシア。
「ギルドマスター、カインが王都でのギルド本部への報告会議出席の為、不在なので、サブリーダーである私が対応します」
緊張した雰囲気が漂う。
「シェナ、ギルド脱退についてですが」
早速本題に入るロベルトさん。
「少し前に君が『ソロモンの槍』のパーティーを抜けた脱退の書類がギルドに転送されてきた。だが、同時に、この書類も一緒に転送されてきた」
机に一枚の書類。ギルド脱退の書類だ。
ギルド脱退の書類なんてサインした覚えなんてないのに、と見てみたら、また何か違和感を感じた。
「ん?あ、ロベルトさん、ちょっと改めて見ていいですか?」
「ええ、どうぞ」
「シェナ、私もいい?」
「はい」
アーシアさんも隣で書類を見る。
書類の不審な点に気がつき、書類を手に取る。
書類の内容は、
『ギルド脱退後、ギルド「龍の宿り木」に再加入する事を禁じ、またクエストの依頼を禁ずる』
簡単にして簡潔。私がパーティーを抜ける時にサインした書類の内容とよく似ている。
脱退する者の名前に確かにシェナの名前が。ギルドマスターの名前も確かに書かれている。判子も見る限りでは、おそらく本物。だが、
「ロベルトさん、この書類」
「ええ、まだ受理はされてはいません」
ロベルトの言葉にシェナの肩の力が抜けた。
「この書類、私が脱退する理由が書かれてない」
さっきは驚きとマリリへの不快感で書類の確認を怠ってしました。
この書類には、ただシェナがギルドを脱退する。ただその事が書かれているだけ。
パーティーを脱退する場合は、簡単な書類で成立するが、ギルド自体の脱退となると少し違ってくる。
「ギルドマスターが理由も無しにギルドメンバーを脱退させることはまず有り得ない。本来ならギルド脱退する場合はギルドからの調査が入り、ちゃんと脱退するべき理由を調べられる。ですが今回のことは本当に突然の事。しかもこんな簡潔な書類が簡単に受理される訳がない」
ため息交じりで言うロベルト。
「じゃあ、シェナのギルド脱退の件は?」
アーシアがロベルトに尋ねる。だが、ロベルトの表情はまだ厳しい顔をしている。
「いや、この書類の紙はギルドで精製された紙。そう簡単に複製は出来ない。判子も見る限りギルドマスターのものに見える。書類とギルドマスターの判子が本物か否か分からない以上、シェナのギルド脱退は保留と言う形になるな」
「保留、ですか。・・・・・・まぁ、当然と言えば当然ですね」
「ああ、最近入った新人のマリリがシェナのギルド脱退をやたらと騒いでいたからな。今のシェナの立場は不本意であろうが、とても曖昧な立場だ」
「あの、小娘・・・・」
アーシアさん、またブリザードが。隣から冷気が・・・・。
「大体、なんなのあの子。到底仕事している様には見えないけど」
声が、アーシアさんの声が低くて冷たいよ。
「・・・・ウチと取り引きをしている毛皮商人の娘でね。ギルドの受付嬢になりたいと随分強引に親のコネを使ってウチの職員になったんだよ」
「なにそれ」
なんでまた、ギルドの受付嬢に?思わず疑問に思い首を傾げるシェナ。
「今は、その事より、シェナの処遇だ」
脱線した話をロベルトさんが戻す。
「シェナ、君にはしばらく謹慎してもらう」
「謹慎、ですか」
空気が少し重く感じられる。
「すまない。君がギルドメンバーである以上、立場上私たちも贔屓にする訳にはいかないからね」
「いいえ、大丈夫です。解っていますから。いくら昔からの知り合いだからって変な所で贔屓にされてもお互い困りますからね」
シェナのはっきりとした物言いに苦笑するロベルトと隣で聞いていたアーシア。
「謹慎中はパーティーの結成及び他のパーティーに加入する事は出来ません。ギルドのクエストも受けることはできない。ですが、ギルド自体は辞めた訳ではありませんからギルドには出入りする事は出来ます。ここまでで何か質問はありますか?」
なるほど、謹慎中は完全にフリーになる訳か。
「あ、私、ギルドの部屋を借りに来たんですけど、謹慎中では無理ですか?」
「はい。残念ながら。ですが、賃金はかかりますが、借部屋を手配したので、そちらの方へ」
「ありがとうございます」
よし、無料ではないが、寝所は確保出来た。
「個人的にアイテムを採取しにでるのは?」
「個人で必要なものの採取はギルドに申請すれば大丈夫ですよ。料金を支払えば簡単な錬金もギルド系列の錬金屋で使用できます」
「採取したアイテムや錬金した物は売ってお金に替えるのは?」
「それもギルド系列の店での売買は認められます」
なるほど、謹慎になっても収入が完全に無くなることは無い。クエスト成功の報酬に比べれば少なくはあるが無いよりは全然いい。
「じゃ、禁止されている事は?」
「ギルドに依頼されたクエストの挑戦。ギルド管理のダンジョンへの挑戦。ギルド系列の店以外のアイテムの売買。後は、ギルドの規則と同じですね。これらに違反した場合、厳罰が課せられます。最悪本当にギルドを辞める事になります」
「はい」
それから、シェナはいくつか細かい質問を繰り返した。
個室には、既に一人の男性が椅子に座っていた。
「ロベルトさん」
彼はこのギルドのサブリーダーであるロベルトさん。水色の瞳に淡い茶髪を一つに纏めた紳士的な男性だ。
彼もまたシェナの叔父的存在の人で幼い頃から親切にしてもらっている人物の1人だ。
エマさんは仕事に戻り、部屋には私とアーシアさんとロベルトさんの三人になった。
「立ち話とは、いきませんので、どうぞ椅子に」
ロベルトさんの勧めで部屋に置いてあった椅子に座る私とアーシア。
「ギルドマスター、カインが王都でのギルド本部への報告会議出席の為、不在なので、サブリーダーである私が対応します」
緊張した雰囲気が漂う。
「シェナ、ギルド脱退についてですが」
早速本題に入るロベルトさん。
「少し前に君が『ソロモンの槍』のパーティーを抜けた脱退の書類がギルドに転送されてきた。だが、同時に、この書類も一緒に転送されてきた」
机に一枚の書類。ギルド脱退の書類だ。
ギルド脱退の書類なんてサインした覚えなんてないのに、と見てみたら、また何か違和感を感じた。
「ん?あ、ロベルトさん、ちょっと改めて見ていいですか?」
「ええ、どうぞ」
「シェナ、私もいい?」
「はい」
アーシアさんも隣で書類を見る。
書類の不審な点に気がつき、書類を手に取る。
書類の内容は、
『ギルド脱退後、ギルド「龍の宿り木」に再加入する事を禁じ、またクエストの依頼を禁ずる』
簡単にして簡潔。私がパーティーを抜ける時にサインした書類の内容とよく似ている。
脱退する者の名前に確かにシェナの名前が。ギルドマスターの名前も確かに書かれている。判子も見る限りでは、おそらく本物。だが、
「ロベルトさん、この書類」
「ええ、まだ受理はされてはいません」
ロベルトの言葉にシェナの肩の力が抜けた。
「この書類、私が脱退する理由が書かれてない」
さっきは驚きとマリリへの不快感で書類の確認を怠ってしました。
この書類には、ただシェナがギルドを脱退する。ただその事が書かれているだけ。
パーティーを脱退する場合は、簡単な書類で成立するが、ギルド自体の脱退となると少し違ってくる。
「ギルドマスターが理由も無しにギルドメンバーを脱退させることはまず有り得ない。本来ならギルド脱退する場合はギルドからの調査が入り、ちゃんと脱退するべき理由を調べられる。ですが今回のことは本当に突然の事。しかもこんな簡潔な書類が簡単に受理される訳がない」
ため息交じりで言うロベルト。
「じゃあ、シェナのギルド脱退の件は?」
アーシアがロベルトに尋ねる。だが、ロベルトの表情はまだ厳しい顔をしている。
「いや、この書類の紙はギルドで精製された紙。そう簡単に複製は出来ない。判子も見る限りギルドマスターのものに見える。書類とギルドマスターの判子が本物か否か分からない以上、シェナのギルド脱退は保留と言う形になるな」
「保留、ですか。・・・・・・まぁ、当然と言えば当然ですね」
「ああ、最近入った新人のマリリがシェナのギルド脱退をやたらと騒いでいたからな。今のシェナの立場は不本意であろうが、とても曖昧な立場だ」
「あの、小娘・・・・」
アーシアさん、またブリザードが。隣から冷気が・・・・。
「大体、なんなのあの子。到底仕事している様には見えないけど」
声が、アーシアさんの声が低くて冷たいよ。
「・・・・ウチと取り引きをしている毛皮商人の娘でね。ギルドの受付嬢になりたいと随分強引に親のコネを使ってウチの職員になったんだよ」
「なにそれ」
なんでまた、ギルドの受付嬢に?思わず疑問に思い首を傾げるシェナ。
「今は、その事より、シェナの処遇だ」
脱線した話をロベルトさんが戻す。
「シェナ、君にはしばらく謹慎してもらう」
「謹慎、ですか」
空気が少し重く感じられる。
「すまない。君がギルドメンバーである以上、立場上私たちも贔屓にする訳にはいかないからね」
「いいえ、大丈夫です。解っていますから。いくら昔からの知り合いだからって変な所で贔屓にされてもお互い困りますからね」
シェナのはっきりとした物言いに苦笑するロベルトと隣で聞いていたアーシア。
「謹慎中はパーティーの結成及び他のパーティーに加入する事は出来ません。ギルドのクエストも受けることはできない。ですが、ギルド自体は辞めた訳ではありませんからギルドには出入りする事は出来ます。ここまでで何か質問はありますか?」
なるほど、謹慎中は完全にフリーになる訳か。
「あ、私、ギルドの部屋を借りに来たんですけど、謹慎中では無理ですか?」
「はい。残念ながら。ですが、賃金はかかりますが、借部屋を手配したので、そちらの方へ」
「ありがとうございます」
よし、無料ではないが、寝所は確保出来た。
「個人的にアイテムを採取しにでるのは?」
「個人で必要なものの採取はギルドに申請すれば大丈夫ですよ。料金を支払えば簡単な錬金もギルド系列の錬金屋で使用できます」
「採取したアイテムや錬金した物は売ってお金に替えるのは?」
「それもギルド系列の店での売買は認められます」
なるほど、謹慎になっても収入が完全に無くなることは無い。クエスト成功の報酬に比べれば少なくはあるが無いよりは全然いい。
「じゃ、禁止されている事は?」
「ギルドに依頼されたクエストの挑戦。ギルド管理のダンジョンへの挑戦。ギルド系列の店以外のアイテムの売買。後は、ギルドの規則と同じですね。これらに違反した場合、厳罰が課せられます。最悪本当にギルドを辞める事になります」
「はい」
それから、シェナはいくつか細かい質問を繰り返した。
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