追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千

文字の大きさ
18 / 86

シェナの実力

しおりを挟む
いつに間にか、ギルドの前ではシェナとジョニーの勝負に人集りが増えつつある。
だが、頭に血が上っているのか、ジョニーは人集りには目もくれず、シェナに殴る蹴るの猛攻撃を仕掛ける。

「オラァ!避けるだけか?半端エルフ!!」

煽るジョニーだが、シェナは無言で避ける。
シェナの方からは一切手を出していない。ただ避けるだけだった。
屈強なジョニーの猛攻撃。
だが、小柄なシェナは跳んだり、しゃがんだり、飛び越えたり、回ったり、とちょこまかと逃げ、ジョニーの攻撃は掠りもしない。
シェナが攻撃を躱す度に集まったギャラリーから歓声が上がった。

「逃げてばっかりじゃねぇか!!何とか言ってたどうだ!!」

ちょこまかと逃げるシェナに苛立ち、吠えるジョニー。

「どう見るよ?」
「んー、やっぱり、ジョニーの方が分があるな」

ディーノの近くで勝負を見ていた男達何気無しにつぶやいた。
この男達はジョニーに銀貨2枚かけた男達だ。
ディーノは会話に参加せず黙って男達の話を聞いた。

「やっぱり、て?」
「ん?いや、だって、バスとジョニーと言えば、どっかの国で傭兵やってたんだろ?2カ月程前にギルドに入ったが、既にBランクまでのし上がった2人だぞ。腕っ節にはかなりの自信があるみたいだせ?」 
「確かにあの体格差じゃな。それにシェナは前のパーティーでは殆ど雑用係だったらしいから」
「逃げてばっかりで反撃しない。大方、ジョニーの体力を削っているんだろうが、長丁場になれば、体力的にもジョニーの方が有利だな」

男達が勝負を見ながらジョニーの勝利を確信していた。
そんな男達を盗み見ていたディーノ。

「ん?」

ふと、ギルドの窓から誰かが勝負を見ていた。
姿は此処からでは影しか見えないが、視線はシェナとジョニーの勝負に釘付けだ。

「ふふ、」

そんな謎の視線にディーノは静かに微笑む。


勝負が始まって十分。
ちょこまか逃げるシェナに苛立たつジョニー。
だが突然、正面に居たはずのシェナが飛び跳ね、

ドスッ!!

ジョニーの頭に両足で踏み付けそのまま踏み台にして飛び越えるシェナ。

「ンガ?!」

シェナの初の反撃、頭部への打撃でジョニーの屈強な体がぐらりと傾くが、なんとか止まる。
シェナはクルっと一回転して、ジョニーの背後に着地。
一歩離れそのまま、ジョニーの後ろに立ち、屈強なジョニーを見上げる。

「姿勢が悪い」

瞬時に後ろに振り向くと勝負が始まって一言も喋らなかったシェナがジョニーの目を見て唐突な言葉を口にする。

「はぁ?」

突拍子の無いシェナの言葉にジョニーも一瞬呆ける。

「姿勢が悪いから、標的の狙いの軸がブレる。それに攻撃が大振りだから、外した時の隙が大きすぎる。アンタが私に蹴りを入れようとしたら、少なくとも私は4回はアンタの顔面に蹴り入れられるわよ。あと、やたら無闇に土煙や砂埃を起こすの、技をわざと大袈裟に見せているように見えるからやめた方がいいと思う」

一気に淡々と指摘してくるシェナに一瞬呆けるジョニーだが、間を置いてギャラリーの中から微かに笑い声が漏れる。
ジョニーの耳にも届き顔を羞恥と怒りで赤くする。

「ふざけんな!!」

怒りと羞恥で震えた拳が力任せにシェナを殴りにかかる。
だが、シェナはその場から逃げようとしない。
ギャラリーから悲鳴が上がる。
誰もが、ジョニーに殴り倒されるシェナを想像した。
だが、ジョニーの拳が打つかる手前でシェナが素早く構え、右手でジョニーの拳を受け止めた。

「なっ!?!?」

受け止めた事に驚くジョニー。
シェナは受け止めた拳の力をそのまま受け止めるのでは無く、流れる様な動きで後ろに一歩下がり、身体を右斜め後ろに逸らす。
向かって来る力に逆らわず拳を受け流す。

「のあ!?」

突き出した力を止めることがが出来ず、ジョニーの身体が前のめりに傾く。

「だから、姿勢が悪くて、隙が大きいって」

シェナの細長い瞳孔の青い瞳の睨みがジョニーの目を射抜く。
そのまま受け流したジョニーの腕を素早く抱えこむ様に捕らえ、

「言ってんのよ!!このハゲ!!」

力の流れと勢いを利用してジョニーを投げ飛ばした。

「は?」

いきなり視界が逆さまになったジョニー。
次の瞬間、

「ッがは!!」

背中と後頭部に強い衝撃と痛みに息が止まった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。

藤 ゆみ子
ファンタジー
光属性の魔力を持つフィーナは聖女の一人として王宮に就職するが、一向に治癒魔法を使うことができなかった。聖女として働けないと解雇されるが、帰る家なんてない。  そんな時、日々の癒しのためにこっそり行っていた獣舎の魔獣たちが騎士団長グランディに頼み、獣舎の掃除婦として働くことに。  実はフィーナの持つ魔力は人ではなく、魔獣や魔物に使えるものだった。  無自覚に使い魔たちを癒していたフィーナだったが、グランディに気に入られていることに不満を持つ王女に解雇されてしまう。  フィーナは王女の命令なら仕方ないと王宮を出る。  今だ見たこともない魔獣と出会うため、かつての親友だった魔獣のキュウと再会するために旅に出ることにするが、思わぬ事件や問題に巻き込まれていく。  一方でグランディや魔獣たちはフィーナを取り戻すため奮闘する。

処理中です...