追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千

文字の大きさ
19 / 86

半端エルフの悪あがき

しおりを挟む
ズシン!!

とジョニーの身体が地面に叩きつけられる音が辺りに響いた。
辺りが一気に静かになる。
大柄なジョニーを投げ飛ばした張本人の小柄なシェナとの間は約1メートルは離れていた。

「ッ、グッ・・・ハッ!」

地面の上で大の字に倒れるジョニーが、喉の奥で止まっていた息を吐き出した。

「クッ、」

背中後頭部の痛みに顔を歪めるが、直ぐに立ち上がり戦闘態勢をとするジョニーの腹に、

「うりゃ!」

ドス!!

「ぐはぁ!!」

トドメとばかりの思いっきりヒザ蹴り。しかも助走をつけたジャンプからの落下ニー・キックをかますシェナ。
いきなりの腹部のダメージの痛みに再び地に倒れるジョニー。

「う、が、あ、あぁ・・・・」

背中と後頭部の痛みに加えて腹部の痛みに呻くジョニー。
小柄なシェナでも、全体重、落下に加わる力、それを腹部に一点集中で落とされれば、いくら屈強な体つきのジョニーでもかなりのダメージを受けたようだ。

「私の勝ち」

ギャラリーが騒然とする中、悶絶し呻くジョニーの腹の上でシェナがジョニーを見下ろし目を細めて笑う。


勝敗が決まりギャラリーが騒然となる。
ジョニーに賭けていた男達も唖然としている。
ジョニーの体格差や戦闘経験で勝利を確信していただけにこの勝敗は驚くものがあった。

シェナは周りを気にせずに直ぐジョニーの上から退く。

「・・・・『ヒール』」
「え?」

倒れているジョニーの隣に膝をつき、回復魔法をかける。
身体が暖かくなり、身体中の痛みが消えていくのに目を見開くジョニー。

「痛いところある?」
「・・・いや、無い」
「そう、なら良かった」
「、待て」
「ん?」

ジョニーか立ち上がろうとしたシェナを引き止める。

「何?」
「何故、回復魔法をかけた」
「はい?」
「負けた俺への情けか?」

上半身だけ地面から起き上がり、静かな怒りを感じる睨みでシェナを睨む。
だが、シェナは興味無しと、肩をすくめる。

「怪我したままでいたかったなら、もう一度、投げ飛ばして腹にニーキック入れてやろか?」

そう言って立ち上がり、ジョニーを見下ろす。
何か言いたげに睨む、ジョニー。

「・・・どう?半端エルフに負けて。悔しい?」
「っ、!!何だと!?」

シェナの言葉にジョニーが再び激情し、シェナに摑みかかる。
だが、今度はシェナは避けない。
そのままジョニーに胸ぐらを掴まれ引っ張られ前のめりになる。
それを見た周りの大人が止めに入ろうとするが、シェナが無言で手と目で制する。
シェナの制止に戸惑いながらも止まる大人たち。
それを見て、シェナは正面を向く。
至近距離でシェナを睨むジョニーと真っ直ぐにジョニーを見るシェナ。

「悔しいよね。だって、私がそうだったもん」
「あ?」
「まだ、力が未熟だった頃、弱くて周りの人達に守られてた。でも強い奴にボロボロにされて、物凄く悔しい思いもした。その頃、魔力も本当に弱くて、周りに迷惑もかけてしまって、そんな弱い自分が嫌だった。」
「・・・・」
「魔力が並なのも本当。だから、魔法よりも自分が出来る体術を鍛えた。身を守れるように努力した。ただそれだけ。負けたく無いから強くなった。ただそれだけ。ふざけた気持ちなんて微塵も無い」

胸ぐらを掴まれても真っ直ぐジョニーの目を見るシェナの瞳。

「だから、因縁は付けてもいいけど、イキナリ殴りかかって来るのはやめて。周りの人にも迷惑かけるから」
「・・・・半端エルフだと言ったことは否定しないのか」

未だに胸ぐらを掴んだままだか、少し力を緩める。

「自分が半端なエルフなのは本当のことだから否定しない。だけど、出来無いことで行き詰まってヤケになって自分を決め付けるよりも、今、自分が出来る事を考えて、強くなって生きる。ただそれだけだよ」

ふと、シェナの脳裏に笑っている母、ルリコの姿が浮かんで消えた。

「随分と生意気な事を言いやがりやがって」

ふん、と皮肉そうに笑うジョニー。

「生意気で結構。これはただの私なりの、半端エルフの悪あがきよ」

そう言って、目を細め、笑うシェナ。
だが、すぐ真顔になり、

「で、いつまで人の胸ぐら掴んでいるつもりよ。このハゲ」

バシッ

「イテェ!!」

ジョニーの額をはたくシェナ。
ジョニーのはたかれた額が微かに赤くなる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

処理中です...