追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千

文字の大きさ
75 / 86

梟屋の晩御飯

しおりを挟む


淡い夕焼けの陽が影を作る帰り道を歩きながら、下宿している梟屋へ帰って来たシェナとユージーン。

「ただいま帰りました、」
「戻りました、」

梟屋のドアを開けると、梟屋の中から食欲をそそる美味しそうな香りが2人の鼻腔をくすぐり、微かに包丁で調理をする音が耳に届く。

「あら、シェナちゃん。ユージーンさん、おかえりなさい」
「きゅう!!」

そこにルウを抱き抱えたココロが2人を出迎えてくれた。

「ただいまです。ココロさん」
「戻りました」
「はい。お使いお疲れ様」

ニコニコと優しい笑顔で出迎えるココロ。

「きゅう~」

すると、ココロさんの腕の中にいたルウが私に向かって小さな両手を伸ばす。
ルウの気持ちを分かったのか、ココロが顔を綻ばせる。

「あらあら、はいはい。シェナちゃん、お願い」
「はい。ルウ、おいで」
「んきゅう~」

ココロさんから私の腕の中に移ったルウは嬉しそうに私の頬に擦り寄る。

「ただいま、ルウ」
「きゅう~」

そんなルウが可愛いくて、私もルウの頬に頬すりする。

「うふふ。やっぱり、お母さんの方がいいのね」
「キュイ!」
「・・・・・・・」

ココロさんの言葉に嬉しそうに答えるルウに私は少し気恥ずかしく感じ、顔が熱くなるのを感じて俯いてしまった。

すると、ユージーンがある事に気がつく。

「ん?ココロさんがここに居るという事は、今、料理をしているのは?」
「え?ゼノンよ?」
「え?」
「はい?」

ココロさんの返事に思わず私とユージーンが首を傾げる。

「ゼノンさん、料理出来たんですか?」
「ええ、一緒によくやるのよ」

ゼノン料理上手なのと、にこやかに笑うココロさん。

だが、見た目が威圧感が半端なく、頑固な職人風のゼノンさんが台所に立つ姿はあまり想像できないシェナ。
その時、

「戻ったか」

噂をすればなんとやら、キッチンからシンプルな白いエプロンに白い布を頭に巻いた姿のゼノンが出てきた。

その姿は、ある意味、台所に立つに似合う姿だった。

「なんか、飲み屋の大将みたい」
「ああ」
「ん?」

シェナの呟きに思わず同意してしまうユージーン。

キッチンに入ると、夕飯の支度が進んでいた。

「すみません、ゼノンさん。遅れてしまって」
「いや、私が勝手にやった事だ。と言っても、スープとサラダの用意だけだがな」
「それだけでも、助かります。手伝います」
「ああ」
「シェナちゃん、お料理するなら、コロッケを油で揚げるでしょ?ならルウちゃんまた預かるわ」
「はい、お願いします」
「油がはねたら危ないからね」

そう言いなが、ココロがルウを再び預かる。

「そうだ。ユージーンさん。夕食はお部屋で食べる?それとも食堂で食べる?」

ルウを腕に抱き上げながらキッチン前に立っているユージーンに夕食の事を問いかける。

「あ、食事は、」
「あとは、コロッケ揚げるだけだから、すぐに出来るけど、もし傷に障るなら部屋に持って行くよ?」

エプロンを着けながら、服の袖を捲るシェナがひょっこりキッチンから顔を出す。

「・・・・・・・・」

結局、ユージーンはココロとルウと一緒に食堂で待つ事にした。

本当なら、すぐにでも部屋に戻り情報屋の情報を見たい所だったのだが、あまりにもココロがニコニコ顔で食堂での一緒の夕食を勧められて、同行する事にした。

通された食堂は広い木のテーブルに木の椅子。
だが、不思議と温かな雰囲気が食堂内を包み込んでいる。
斜め前の席にココロがルウをあやしている。
その姿はまるで祖母と孫のようで微笑ましいものだった。
食卓の横に置かれた小さなテーブルの上には、ルウの服作りをひと段落終えた2体のブラウニー達が寛いでいる。
その姿にもう警戒心は見えなかった。

「お待たせー」

しばらくして、大きなお盆に料理を乗せたシェナとゼノンが入ってきた。
ゴハンに汁物、大きな皿に黄金色のコロッケが二個とその脇に千切りした葉野菜であるポルタが添えられている。ガラスの小さな器には本日のデザートが盛り付けられている。
食卓はあっという間に湯気がゆらゆらと立つ料理達が並べられた。
部屋内に温かな料理の香りが広がり、

ぐううう~~~~~~

「ッッ!?!?」

自分の腹が自身の意思と関係無しに空腹を訴えてるように鳴った。
食堂内での自然がユージーンに集まる。

「あい変わらず、お腹の音凄いね、ユージーンは」

顔を赤くして固まるユージーンを見て、クスクスと可笑しそうに笑うシェナだった。

「はい。こっちはブラウニー達の分ね」

そう言いながら、シェナはブラウニー達が座るテーブルの上に小皿に盛り付けされた料理をブラウニー達の前に置く。
そして、もう一枚の平皿に2人が御所望していた、コメとカココで作ったお菓子が乗っている。

クリーム色の薄い生地に透けた薄茶色のカココのクリームが細長く巻かれている。

「御所望のコメとカココのお菓子、『カココクリームの春巻きクレープ』だよ」

目の前の出来立てのワンプレートの料理とお菓子に頬を赤く染め、喜びを表すブラウニー達。

「~~~!!」
「~~~!!」

嬉しそうな小さな金属音のような声が聞こえた。

「どういたしまして」
「うふふ。さあ、食べましょう」

食卓に並ぶ夕飯。

「ルウはこっち。芋粥ね」
「きゅー!!」

目の前に置かれたムム芋で作った芋粥を見て、眼を輝かせるルウ。
牛山羊の乳と一緒に柔らかくなるまで煮られ、細かく刻まれた野菜と肉が見える。

美味しそうな夕飯にルウは目を輝かせる。

皆が、各々の席に着き、手を胸の前で合わせ暫しの沈黙。

「我の糧になる尊き命よ  命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します」
「・・・・・・きゅ!」

食材に対しての感謝の祈りを見たルウが、まるでみんなの真似をするかのように自分の目の前で小さな両手をパチンと叩いた。

「・・・・・、ははは!!」

その行動に、思わずシェナ達は顔を見合わせて笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。

藤 ゆみ子
ファンタジー
光属性の魔力を持つフィーナは聖女の一人として王宮に就職するが、一向に治癒魔法を使うことができなかった。聖女として働けないと解雇されるが、帰る家なんてない。  そんな時、日々の癒しのためにこっそり行っていた獣舎の魔獣たちが騎士団長グランディに頼み、獣舎の掃除婦として働くことに。  実はフィーナの持つ魔力は人ではなく、魔獣や魔物に使えるものだった。  無自覚に使い魔たちを癒していたフィーナだったが、グランディに気に入られていることに不満を持つ王女に解雇されてしまう。  フィーナは王女の命令なら仕方ないと王宮を出る。  今だ見たこともない魔獣と出会うため、かつての親友だった魔獣のキュウと再会するために旅に出ることにするが、思わぬ事件や問題に巻き込まれていく。  一方でグランディや魔獣たちはフィーナを取り戻すため奮闘する。

処理中です...