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シェナの記憶の中
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白く靄がかかっていたユージーンの視界が鮮明に晴れて行く。
鬱蒼に生い茂る木々、暗い夜の森の中だった。視界が微かに上下に動いている様に感じる。
まるで、暗い夜の森の中を疾走している様だった。
「これは、」
「今、見えているのは私が見た記憶の景色だよ」
「ッ、」
目を閉じているユージーンの耳にシェナの声が届く。
「目は開けないで。魔法が途切れる」
「っ、ああ、すまない・・・」
思わず、目を開けようとなるが、シェナが察して止める。
「今見えるのは、あの夜のネルの森の中だよ」
これが、シェナが見た景色。
確かに、自分自身の普段の視線よりもずっと低い視線だった。
しかし、体は動いていないが視界が小刻みに動くのは、少し酔いそうだ。
「ユージーンをカマクラに置いて、森の奥へ調査をしに出て行った。そして、森の奥で見つけたの。興奮したゴブリンと瀕死のドラゴンを」
その時、ユージーンの鼻腔に、咽せるような不愉快な魔獣特有の野獣臭。そして、絡みつく様な強い血の臭いが飛び込んで来た。
鬱蒼に生い茂る木々が途切れ、開けた場所が見えてきた。
そして、微かに金属音にも似た耳触りな奇声が聞こえて来た。
シェナの視線が、突然立ち止まり、隠れるように木の影に身を寄せる。
隠れた木の影から覗くと月明かりが雲で途切れた。
遠目で目視出来る薄暗いその場所で不自然に鎮座する大きな岩を囲む複数の魔獣、ゴブリンの姿を捉えた。
「ッ、」
尖った耳、鋭い牙を見せ奇声を放つ大きな口。茶色混じりの濁った深緑色の体。
大小さまざまな個体のゴブリンが見えるだけでも7体も見える。
しかも、7体の内、体が大きい個体の3体は魔獣の皮で作った簡易的な服と甲冑を身に纏い、手には斧や槍を持っている。
『ソルジャーゴブリン』
普通のゴブリンが戦闘経験を重ね、人間の様に武装をする事を学んだ知能が高い上級種のゴブリンだった。
4体は普通のゴブリンだが、3体ソルジャーゴブリン。
ベテランの冒険者達が10人体制のパーティーを組んで総出で討伐するクラスの魔獣。
絶対に一人で討伐出来る相手では無い。
シェナが息を潜めて、木の影に身を隠す。
ゴブリン達はまだシェナの存在に気付いていない。
と言うよりも、満月の夜の魔素の影響か、ゴブリン達がひどく興奮状態でコチラに気を向けていなかった。
ゴブリン達は岩を囲み、奇声を上げ、地面を足や手に持った武器で地面を叩き、威嚇をしている。
・・・・岩?
「『嘘でしょ・・・・、』」
記憶の中のシェナが何かを見つけて思わず絶句するように呟いた。
その時、ゴブリンの群れが囲んでいた岩が動いた。
「ッ!?」
キシャアアアア!!!!
周りの木々が震える程の激しい叫声。
そして、今、シェナが隠れているこの場所も、周りの空気が一気に重圧感に襲われた。
この叫び、この重圧感・・・。
間違えようが無い。
月を覆っていた雲の切れ間から月光が照らされる。
ツノが折れ、翼も切り落とされ、血に塗れ、それでも尚、絶対的存在感を放つ。
傷だらけのエンシェント・ドラゴンだった。
長い首を必死に持ち上げ、囲んでいるゴブリン達へ威嚇の咆吼を叫ぶエンシェント・ドラゴン。
ゴブリン達はエンシェント・ドラゴンの咆吼に怯むが、ジリジリと間合いを詰めて行く。
「『なんで、このネルの森にドラゴン族が?』」
今にも襲われそうなエンシェント・ドラゴンを見て、シェナが困惑気味に呟いた。
思えば、以前、シェナがネルの森にドラゴン族は居ないと言っていた。
「『まさか、あのドラゴン、怪我してた人と何か関係ある、ん?』」
ふと、シェナの視線が下に、足元に向いた。
暗い森の木の草葉の陰に何かが見えた。
シェナが姿勢を低くとり、見つけた何かを手に取る。
「『これは、』」
シェナが手に取ったのは、手のひらに収まる、大きなヒビが入ったガラス玉だった。ガラス玉の中には割れた薄い円状の羅針盤と二つに折れた円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが入っている。
「ッッ、」
それを見た瞬間、ユージーンの体が強張った。
それは、事件時にオーガスタが使用しようとしていた転移魔法魔具だった。
あの時、オーガスタが発動直前に、地面に落としヒビが入っていたが、この様子だと、ネルの森に飛ばされた衝撃で完全に壊れた様だった。
「『微かにだけど、魔力を感じる。使用してそんなに時間は経っていない・・・・。
これって、転移魔法専用の魔具、だよね。でも、このメーカーかなりの粗悪品で有名だって、ロベルトさんが言っていた気がする・・・・・・』」
シェナが、大きなヒビが入った転移魔法魔具を握りしめる。
「『・・・怪我した男と傷付いたドラゴン。そして、壊れた転移魔法の魔具。流石に、完全に無関係、って訳にはいかないよね」』
シェナの視線が壊れた転移魔法魔具からゴブリンとドラゴンの方へ向いた。
「『・・・・はあぁぁ、』」
シェナが大きく溜め息を吐いた。
「『本っ当に、めんどくさ!!』」
シェナがそう苛立つ様に声を上げ、隠れていた木の影から飛び出た。
「ッッ!?、おい!!」
ガバッ!
それを見た瞬間、反射的に身体が立ち上がろうとベッドから腰を上げてしまった。
「うお!?、ちょい!!き、急に動かないでよ!?」
「ッ、す、すまない」
手を繋いでいた手がいきなり引かれて、隣に座っていたシェナが驚いて止めた。
ユージーンは目を閉じ、手も繋いだままだったので、魔法は持続されていたが、目の前に、『見える』光景に脳内が本物だと認識を誤りそうになる。
そう思いながら、浮かせた腰を下ろす。
「あー、びっくりした。魔法が途切れるちゃう所だったよ」
「すまない・・・。だが、いきなり、ゴブリンの群れに飛び出すなんて、完全に自殺行為だぞ」
「いや、自殺しに行っていたら、私、此処に居ないでしょ。ついでにユージーンも生きていたか分からないでしょが」
目を閉じて、まだシェナの記憶の颯爽する景色が流れるのが現在進行形で見えるが、視界の外で雰囲気で今シェナが思いっきり呆れている顔が予想出来る。と言うか、絶対している。
「と言うか、今のユージーンは見る事しか出来ない。これは、私の記憶の景色だから」
「う、うむ・・・・」
シェナの正論にグウの音も出ない。
その時、
「『おりゃあ!!』」
「ッッ!!?」
記憶の中のシェナが小さいゴブリンの一体の後頭に飛び蹴りを入れる。
あぎゃ!!
前方のエンシェント・ドラゴンに気を取られてか、飛び蹴りをくらったゴブリンが思いっきり前方へ吹っ飛んだ。
ギギギギ!?
ギギギギ!!!
アギャギャギャ!!!
いきなり仲間を蹴り飛ばされたゴブリン達が一斉にこっちを見た。
その顔は、目が血走り、興奮している為、殺気と狂気が見てとれた。
恐らく、いきなり出現した新たな敵に、獲物を狙われていると思っているのだろう。
ゴブリンの群れの標的がいきなり現れたシェナへと変わった。
「・・・・やっぱり、自殺志願者だろう、君」
「だから、違うって」
武器を構え、怒りのゴブリンの群れを対立をする光景を見て、今度はユージーンに呆れられる。
心外だ。
鬱蒼に生い茂る木々、暗い夜の森の中だった。視界が微かに上下に動いている様に感じる。
まるで、暗い夜の森の中を疾走している様だった。
「これは、」
「今、見えているのは私が見た記憶の景色だよ」
「ッ、」
目を閉じているユージーンの耳にシェナの声が届く。
「目は開けないで。魔法が途切れる」
「っ、ああ、すまない・・・」
思わず、目を開けようとなるが、シェナが察して止める。
「今見えるのは、あの夜のネルの森の中だよ」
これが、シェナが見た景色。
確かに、自分自身の普段の視線よりもずっと低い視線だった。
しかし、体は動いていないが視界が小刻みに動くのは、少し酔いそうだ。
「ユージーンをカマクラに置いて、森の奥へ調査をしに出て行った。そして、森の奥で見つけたの。興奮したゴブリンと瀕死のドラゴンを」
その時、ユージーンの鼻腔に、咽せるような不愉快な魔獣特有の野獣臭。そして、絡みつく様な強い血の臭いが飛び込んで来た。
鬱蒼に生い茂る木々が途切れ、開けた場所が見えてきた。
そして、微かに金属音にも似た耳触りな奇声が聞こえて来た。
シェナの視線が、突然立ち止まり、隠れるように木の影に身を寄せる。
隠れた木の影から覗くと月明かりが雲で途切れた。
遠目で目視出来る薄暗いその場所で不自然に鎮座する大きな岩を囲む複数の魔獣、ゴブリンの姿を捉えた。
「ッ、」
尖った耳、鋭い牙を見せ奇声を放つ大きな口。茶色混じりの濁った深緑色の体。
大小さまざまな個体のゴブリンが見えるだけでも7体も見える。
しかも、7体の内、体が大きい個体の3体は魔獣の皮で作った簡易的な服と甲冑を身に纏い、手には斧や槍を持っている。
『ソルジャーゴブリン』
普通のゴブリンが戦闘経験を重ね、人間の様に武装をする事を学んだ知能が高い上級種のゴブリンだった。
4体は普通のゴブリンだが、3体ソルジャーゴブリン。
ベテランの冒険者達が10人体制のパーティーを組んで総出で討伐するクラスの魔獣。
絶対に一人で討伐出来る相手では無い。
シェナが息を潜めて、木の影に身を隠す。
ゴブリン達はまだシェナの存在に気付いていない。
と言うよりも、満月の夜の魔素の影響か、ゴブリン達がひどく興奮状態でコチラに気を向けていなかった。
ゴブリン達は岩を囲み、奇声を上げ、地面を足や手に持った武器で地面を叩き、威嚇をしている。
・・・・岩?
「『嘘でしょ・・・・、』」
記憶の中のシェナが何かを見つけて思わず絶句するように呟いた。
その時、ゴブリンの群れが囲んでいた岩が動いた。
「ッ!?」
キシャアアアア!!!!
周りの木々が震える程の激しい叫声。
そして、今、シェナが隠れているこの場所も、周りの空気が一気に重圧感に襲われた。
この叫び、この重圧感・・・。
間違えようが無い。
月を覆っていた雲の切れ間から月光が照らされる。
ツノが折れ、翼も切り落とされ、血に塗れ、それでも尚、絶対的存在感を放つ。
傷だらけのエンシェント・ドラゴンだった。
長い首を必死に持ち上げ、囲んでいるゴブリン達へ威嚇の咆吼を叫ぶエンシェント・ドラゴン。
ゴブリン達はエンシェント・ドラゴンの咆吼に怯むが、ジリジリと間合いを詰めて行く。
「『なんで、このネルの森にドラゴン族が?』」
今にも襲われそうなエンシェント・ドラゴンを見て、シェナが困惑気味に呟いた。
思えば、以前、シェナがネルの森にドラゴン族は居ないと言っていた。
「『まさか、あのドラゴン、怪我してた人と何か関係ある、ん?』」
ふと、シェナの視線が下に、足元に向いた。
暗い森の木の草葉の陰に何かが見えた。
シェナが姿勢を低くとり、見つけた何かを手に取る。
「『これは、』」
シェナが手に取ったのは、手のひらに収まる、大きなヒビが入ったガラス玉だった。ガラス玉の中には割れた薄い円状の羅針盤と二つに折れた円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが入っている。
「ッッ、」
それを見た瞬間、ユージーンの体が強張った。
それは、事件時にオーガスタが使用しようとしていた転移魔法魔具だった。
あの時、オーガスタが発動直前に、地面に落としヒビが入っていたが、この様子だと、ネルの森に飛ばされた衝撃で完全に壊れた様だった。
「『微かにだけど、魔力を感じる。使用してそんなに時間は経っていない・・・・。
これって、転移魔法専用の魔具、だよね。でも、このメーカーかなりの粗悪品で有名だって、ロベルトさんが言っていた気がする・・・・・・』」
シェナが、大きなヒビが入った転移魔法魔具を握りしめる。
「『・・・怪我した男と傷付いたドラゴン。そして、壊れた転移魔法の魔具。流石に、完全に無関係、って訳にはいかないよね」』
シェナの視線が壊れた転移魔法魔具からゴブリンとドラゴンの方へ向いた。
「『・・・・はあぁぁ、』」
シェナが大きく溜め息を吐いた。
「『本っ当に、めんどくさ!!』」
シェナがそう苛立つ様に声を上げ、隠れていた木の影から飛び出た。
「ッッ!?、おい!!」
ガバッ!
それを見た瞬間、反射的に身体が立ち上がろうとベッドから腰を上げてしまった。
「うお!?、ちょい!!き、急に動かないでよ!?」
「ッ、す、すまない」
手を繋いでいた手がいきなり引かれて、隣に座っていたシェナが驚いて止めた。
ユージーンは目を閉じ、手も繋いだままだったので、魔法は持続されていたが、目の前に、『見える』光景に脳内が本物だと認識を誤りそうになる。
そう思いながら、浮かせた腰を下ろす。
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目を閉じて、まだシェナの記憶の颯爽する景色が流れるのが現在進行形で見えるが、視界の外で雰囲気で今シェナが思いっきり呆れている顔が予想出来る。と言うか、絶対している。
「と言うか、今のユージーンは見る事しか出来ない。これは、私の記憶の景色だから」
「う、うむ・・・・」
シェナの正論にグウの音も出ない。
その時、
「『おりゃあ!!』」
「ッッ!!?」
記憶の中のシェナが小さいゴブリンの一体の後頭に飛び蹴りを入れる。
あぎゃ!!
前方のエンシェント・ドラゴンに気を取られてか、飛び蹴りをくらったゴブリンが思いっきり前方へ吹っ飛んだ。
ギギギギ!?
ギギギギ!!!
アギャギャギャ!!!
いきなり仲間を蹴り飛ばされたゴブリン達が一斉にこっちを見た。
その顔は、目が血走り、興奮している為、殺気と狂気が見てとれた。
恐らく、いきなり出現した新たな敵に、獲物を狙われていると思っているのだろう。
ゴブリンの群れの標的がいきなり現れたシェナへと変わった。
「・・・・やっぱり、自殺志願者だろう、君」
「だから、違うって」
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心外だ。
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