6 / 154
口の悪い魔人達と俺様ノルト
006.魔神達の人化
しおりを挟む
ソファでマクルルとテスラに挟まれ、居心地の悪さを感じながらノルトは小人の様にちょこんと座り、4人の魔神達と話していた。
「そうか。ここはセントリアか。スルークから最も離れた人間界の国だな」とロゼルタ。
「我が魔界、ファトランテにも近い。ちょうど良い位置じゃな」とドーン。
「最寄りの町はここから歩いて3日ほどでロスという小さな町です。魔道具屋もあります」
暫くその町で働いていた事や身寄りはなく町から町へ転々としていた事なども打ち明ける。
一方で彼らも自分達について少し教えてくれた。
彼らは皆、30年前リド=マルストという人間に殺された後、気付けば何者かが用意してくれたこの館にいた。
それ以来、この館から一歩も外へは出られなかった事、年月を示す不思議なカレンダーがあること、この館では食べなくても飢えず、性欲も沸かず、睡眠、排泄の必要さえ全くないが、望めばどんな部屋でもどんな食事でも現れ、いくらでも寝る事も出来た、などという奇妙な話をしてくれた。
「だがどうやらお前が来た事でようやくこの妙な館から出れるようだ」
直感的にそれが分かった、という事らしかった。
それはつまりこの館の存在理由が、ノルトと彼らを引き合わせるため、だったと考えることも出来るのだ。
その役目を終えた事でこの館の奇妙な力、存在が消えつつあるのか、魔神達を空腹、生理現象、睡魔などが襲う。
彼らは全員で空腹を満たし、風呂で汗を流し、いつ振りかと思われるほど深い眠りについた。
翌日。
ノルトが寝ていた部屋には、まるで彼が来る事が分かっていたかの様にサイズがピッタリのシャツと皮のベストがあった。
それを着込み、扉を開けると4人の魔神達は既に出発の準備を終えているようだった。だがその雰囲気はガラリと変わる。
「あ、あれ? ロゼルタさん、ですか?」
スラリと背の高い、ロゼルタに似た女性に近付いて見上げる。
背丈や顔の造形は確かにロゼルタに近い。だが髪の色は白から、瞳は真紅からそれぞれ黒に近い濃い茶色になり、少し柔和になった顔付きも相まってその雰囲気は完全に人間のそれだった。
マクルルにしてもテスラにしても瞳の色が黒になり、あの魔人独特と思われる恐ろしい雰囲気は身を潜めていた。
「そうだぜ。これが人化だ。魔族特有の術であたしらは人に化けれるんだ。理由は知らねー」
「凄い。どうみても人間です」
「戦闘力が格段に落ちちまうんだが……まあそれでもそこいらの奴にゃ負けねー」とテスラ。
「マヌケな話だがあたしらは相手が人化した魔族か人間なのかは見ただけじゃわからねえんだ」
地味な濃いベージュのミニワンピースからスラリと伸びた長い足先に短めのブーツを履いたロゼルタはどこからどう見てもただの美しい旅人だった。
その隣に並ぶテスラ。
彼は黒い袖無しのシャツとサルエルパンツ、大きな剣を腰に携えてズボンに手を突っ込んだ様子はちょっとヤンチャな青年、といった感じだった。
「言っとくが別に俺の趣味じゃねーぞ。俺に合うのがこれしか無かっただけだ」
「な、何も言ってません……」
「だが思っただろ? しかしこいつよりマシだ」
そう言ってテスラはマクルルを指差した。
超巨体、そして鋼の様な筋肉を持つマクルルでもピッタリのサイズのものがあったらしい。
だがその出立ちは一言で言うと、
「ガッハッハ。お前、デカ過ぎてクビになった暗殺者みたいだぜ」
テスラが例えた言葉を聞いてノルトもなるほど確かに、と思った。
上から下まで黒尽くめなのはテスラと同じだが、一切肌の露出が無く、黒のフード付きガウンに足首先がキュッとしまったズボン、その上から紐で結ぶブーツ、といった格好だった。
人化して幾分マシになったとはいえ、マクルルは人相が悪く、顔だけ見ると確かに殺し屋という言葉がピタリとはまる。髪の毛は非常に短く、眉は薄くて目付きは鋭い。口はいつも真一文字に結ばれ、ノルトはまだ一度も彼の声を聞いた事が無い。
その男がスッポリとフードを被り、ギラリと目を光らせているのだからテスラが言うのももっともだった。
「ま、誰も近寄って来なくて旅が楽でよいわ。儂だけでは人間の男が群がってくるからのう」
いつの間にかテーブルの上に山と積まれていた砂金を皆に分ける為に、幾つかの袋に分けて詰めながらマクルルの隣の美少女が言った。
「えっ! ひょひょひょ、ひょっとして、ド、ドーンさん!?」
「あん?」
それがドーンである事に一瞬気付かなかった。
あれだけ妖しく恐ろしい雰囲気を纏っていた彼女はどこにもいない。
そこにいたのは肩口が大きくはだけ、胸の辺りまで白い肌が見える露出の多い黒のワンピースと黒いタイツという姿をした、我儘で奔放なお嬢様といった様子のドーンだった。
目付きの悪さも心なしか影を潜め、その言葉も妖しさというよりは悪戯っぽい雰囲気に変わっていた。
「なんじゃ分からなかったのか」
ロゼルタ、テスラ、マクルルに金の詰まった袋を渡し、ノルトに渡す時に意外そうな顔付きで言った。
頭を下げながら大きく目を開けてドーンを見返しながら思わず、
「は、はい。とても、可愛いです」と言った。
「か、かわっ……」
ずっと怯えていた少年、ノルトの口から思いもしない言葉を聞き、一瞬ドーンは固まり、暫くして微かに頰を染めた。
(あああしまった、雰囲気が違い過ぎてちょ、調子に乗ってしまった)
「おいおい、2人で可愛らしい雰囲気出してんじゃねーぞ? さては付き合うんだな、テメーら」
腕を組んでニタニタと笑いながらロゼルタが酷い言葉で悪態を突く。
「ううううるさい! 儂とした事が……まさかこいつからそんな言葉を聞くとは思わなんだから……不覚」
そのままガクリと首を垂れた。
「クックック。昨日の仕返しだ。さ、行くぜ」
笑いながらこの不思議な館を後にした。
「そうか。ここはセントリアか。スルークから最も離れた人間界の国だな」とロゼルタ。
「我が魔界、ファトランテにも近い。ちょうど良い位置じゃな」とドーン。
「最寄りの町はここから歩いて3日ほどでロスという小さな町です。魔道具屋もあります」
暫くその町で働いていた事や身寄りはなく町から町へ転々としていた事なども打ち明ける。
一方で彼らも自分達について少し教えてくれた。
彼らは皆、30年前リド=マルストという人間に殺された後、気付けば何者かが用意してくれたこの館にいた。
それ以来、この館から一歩も外へは出られなかった事、年月を示す不思議なカレンダーがあること、この館では食べなくても飢えず、性欲も沸かず、睡眠、排泄の必要さえ全くないが、望めばどんな部屋でもどんな食事でも現れ、いくらでも寝る事も出来た、などという奇妙な話をしてくれた。
「だがどうやらお前が来た事でようやくこの妙な館から出れるようだ」
直感的にそれが分かった、という事らしかった。
それはつまりこの館の存在理由が、ノルトと彼らを引き合わせるため、だったと考えることも出来るのだ。
その役目を終えた事でこの館の奇妙な力、存在が消えつつあるのか、魔神達を空腹、生理現象、睡魔などが襲う。
彼らは全員で空腹を満たし、風呂で汗を流し、いつ振りかと思われるほど深い眠りについた。
翌日。
ノルトが寝ていた部屋には、まるで彼が来る事が分かっていたかの様にサイズがピッタリのシャツと皮のベストがあった。
それを着込み、扉を開けると4人の魔神達は既に出発の準備を終えているようだった。だがその雰囲気はガラリと変わる。
「あ、あれ? ロゼルタさん、ですか?」
スラリと背の高い、ロゼルタに似た女性に近付いて見上げる。
背丈や顔の造形は確かにロゼルタに近い。だが髪の色は白から、瞳は真紅からそれぞれ黒に近い濃い茶色になり、少し柔和になった顔付きも相まってその雰囲気は完全に人間のそれだった。
マクルルにしてもテスラにしても瞳の色が黒になり、あの魔人独特と思われる恐ろしい雰囲気は身を潜めていた。
「そうだぜ。これが人化だ。魔族特有の術であたしらは人に化けれるんだ。理由は知らねー」
「凄い。どうみても人間です」
「戦闘力が格段に落ちちまうんだが……まあそれでもそこいらの奴にゃ負けねー」とテスラ。
「マヌケな話だがあたしらは相手が人化した魔族か人間なのかは見ただけじゃわからねえんだ」
地味な濃いベージュのミニワンピースからスラリと伸びた長い足先に短めのブーツを履いたロゼルタはどこからどう見てもただの美しい旅人だった。
その隣に並ぶテスラ。
彼は黒い袖無しのシャツとサルエルパンツ、大きな剣を腰に携えてズボンに手を突っ込んだ様子はちょっとヤンチャな青年、といった感じだった。
「言っとくが別に俺の趣味じゃねーぞ。俺に合うのがこれしか無かっただけだ」
「な、何も言ってません……」
「だが思っただろ? しかしこいつよりマシだ」
そう言ってテスラはマクルルを指差した。
超巨体、そして鋼の様な筋肉を持つマクルルでもピッタリのサイズのものがあったらしい。
だがその出立ちは一言で言うと、
「ガッハッハ。お前、デカ過ぎてクビになった暗殺者みたいだぜ」
テスラが例えた言葉を聞いてノルトもなるほど確かに、と思った。
上から下まで黒尽くめなのはテスラと同じだが、一切肌の露出が無く、黒のフード付きガウンに足首先がキュッとしまったズボン、その上から紐で結ぶブーツ、といった格好だった。
人化して幾分マシになったとはいえ、マクルルは人相が悪く、顔だけ見ると確かに殺し屋という言葉がピタリとはまる。髪の毛は非常に短く、眉は薄くて目付きは鋭い。口はいつも真一文字に結ばれ、ノルトはまだ一度も彼の声を聞いた事が無い。
その男がスッポリとフードを被り、ギラリと目を光らせているのだからテスラが言うのももっともだった。
「ま、誰も近寄って来なくて旅が楽でよいわ。儂だけでは人間の男が群がってくるからのう」
いつの間にかテーブルの上に山と積まれていた砂金を皆に分ける為に、幾つかの袋に分けて詰めながらマクルルの隣の美少女が言った。
「えっ! ひょひょひょ、ひょっとして、ド、ドーンさん!?」
「あん?」
それがドーンである事に一瞬気付かなかった。
あれだけ妖しく恐ろしい雰囲気を纏っていた彼女はどこにもいない。
そこにいたのは肩口が大きくはだけ、胸の辺りまで白い肌が見える露出の多い黒のワンピースと黒いタイツという姿をした、我儘で奔放なお嬢様といった様子のドーンだった。
目付きの悪さも心なしか影を潜め、その言葉も妖しさというよりは悪戯っぽい雰囲気に変わっていた。
「なんじゃ分からなかったのか」
ロゼルタ、テスラ、マクルルに金の詰まった袋を渡し、ノルトに渡す時に意外そうな顔付きで言った。
頭を下げながら大きく目を開けてドーンを見返しながら思わず、
「は、はい。とても、可愛いです」と言った。
「か、かわっ……」
ずっと怯えていた少年、ノルトの口から思いもしない言葉を聞き、一瞬ドーンは固まり、暫くして微かに頰を染めた。
(あああしまった、雰囲気が違い過ぎてちょ、調子に乗ってしまった)
「おいおい、2人で可愛らしい雰囲気出してんじゃねーぞ? さては付き合うんだな、テメーら」
腕を組んでニタニタと笑いながらロゼルタが酷い言葉で悪態を突く。
「ううううるさい! 儂とした事が……まさかこいつからそんな言葉を聞くとは思わなんだから……不覚」
そのままガクリと首を垂れた。
「クックック。昨日の仕返しだ。さ、行くぜ」
笑いながらこの不思議な館を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる