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内見
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実務には携わっていなかったが、店同士の付き合いはマメにこなしていたので、夜は飲みに行く機会が多かった。
ほろ酔いで歩く帰り道、営業時間を過ぎた不動産会社の窓に貼ってある物件が目に入る。
どこで話を聞こうか、急いではいないがいつかは引っ越すことを考えてなんとなく見ていると、繁華街らしく飲食店の居抜きが多かったが、その中に少しだけ安いアパートもいくつかあった。
店を出て後藤と別れてから、そこに行ってみようと思いついて足を向けた。
長い髪のほうが女に見えてそそるという長谷川の言葉で伸ばしていたが、後で髪も切りに行きたい。時間がある間にやりたいことがたくさんある。
中性的な顔は、もう諦めた。
「いらっしゃいませ」
緊張しながら自動ドアをくぐると、前髪を後ろに流していかにもサラリーマンというグレーのスーツを着た若い男が笑顔で声をかけてきた。
「あの…、外のを見て…」
初めて自分ひとりで部屋を探すので勝手がわからない。
「部屋をお探しですか?予算はどれくらいで」
椅子を勧められてそこに座る。
「男の一人暮らしなんで、狭くて安い所でいいです」
街や駅から遠くても安いほうがいい。
カウンターの向こうにいる男がじっと顔をみてくる。
「少々お待ち下さい」
男は名刺を置いて一旦奥に行った。
どこかで会っただろうか。『西田和弘』と書かれた名刺を見るが心当たりはない。
記憶をたどっていた時、ファイルを抱えた西田が戻ってきた。
「店頭でご覧になっていた部屋は残念ですが入居者が決まりました。似たような部屋はこちらにあります」
柔らかい笑顔を浮かべながら西田はファイルを開く。
外には1Kで2万程度の激安物件があったが、さすがにそれはないだろうと思いながらパラパラめくって見ていると、3万円台で同じような部屋が募集されていて驚いた。
できれば2階でフローリングがいい。こだわった所はその程度。
「ここってまだ空き室ですか?」
安ければどこでもいいと考えていた佐伯は思わず声がうわずく。
「まだ埋まってないですね。お時間あればこれから見にいきますか?」
トントン拍子に話が決まっていく。その違和感に気がつけばよかったが、興奮していたのでわからなかった。
会社名が書いてある軽自動車に乗って街から少し離れたアパートにたどり着く。
階段を登って案内してくれる西田が鍵を使ってドアを開けると、写真より広く感じる1Kの部屋が見えた。
中に入る佐伯を見て西田はさり気なく鍵を閉める。
「佐伯くんだよね?」
部屋の真ん中あたりまで進んでいた佐伯は、突然名字を呼ばれてふり返った。
西田はさっきまでの笑顔を消して、白々しい笑いを浮かべている。
「俺に見覚えない?君の体の味はよく知ってる」
「…!?」
何度も何度も自分の意思ではない状態で犯された。いちいち相手なんておぼえていない。
それでも思い出そうとしたが、玄関のドアにもたれて立っていた西田がいつの間にか近くまで来ていた。
「長谷川が消えて困ってるんだろう?俺がいい条件で契約できるように協力するよ」
西田が持っていた書類が音を立てて床に落ちる。
恐怖に近い感情で動けなくなった佐伯の頬を手のひらで包んで西田はそっとキスしてきた。
「だから抱かせてよ。水森じゃ物足りなかった。やっぱり君がいい」
「なんの話…」
どうしてここで水森の名前が出てくるんだろう。
佐伯の体が崩れ落ちそうになるのを支えながら西田はフローリングの床に押さえつけてくる。
「キスだけで力が抜ける。かわいいね」
狭くて圧迫感のある部屋。エアコンもつけてないので暑くて頭がぼうっとする。
水森の身に起きた事を佐伯は知らない。
気がつくとシャツの中に西田の細い指が入り込んでいた。
「なにっ…、やめ…」
「この反応、最高だ」
腕を掴んで服の中から出そうともがくが、執拗に胸の突起を指で転がされているうちに力が入らなくなる。
新規店舗がオープンした時に自分を犯した人間の中にいたのだろうか。泥酔していたのであまり覚えていない。
「は……」
指が胸からジーンズの中に侵入してくると、佐伯は過敏に反応する。その間にベルトを外されてジーンズを脱がされた。
「ほら。ここすぐ入る」
勃起している部分を素通りして後ろの穴に指を這わせてきた。
「はな…せ……」
思い切り睨んでみるが、上に乗りかかっている男が離れる気配はない。
何度か指を抜き差しされて、佐伯は快感に包まれてさらに力が抜け、無意識に両足を開いていた。
西田はジャケットを脱ぎ、忌々しそうにネクタイを外してズボンを膝のあたりまで下げて片足を抜いてから佐伯を貫いた。
「あ…」
長谷川とは違う圧迫感に思わず声が漏れる。
「あいつもさあ、無駄な抵抗はやめて佐伯くんのようになれば痛い思いしなかったのにね」
「ふぁ…あ……あ…」
久しぶりの刺激に佐伯は夢中で腰を浮かせた。
「欲しいんでしょ」
煽ってくる西田の言葉に首をふって否定の思いを示す。
職権乱用で密室を作って襲われるなんて想定外だった。整えてあった西田の髪が揺れて乱れる。
「お前…誰だよ……」
上に重なる体を押しのけようと腕に力を込めるが、西田は微動だにしない。
「どうします?ここに決めますか?」
崩れた前髪が顔に影を作って、社会人の仮面の下にある悪で染まった本性を現している。
それが美しく見えるのは後藤や水森の悪の美貌を知っているからかもしれない。
「汚すんだから責任取れ」
勃ちあがったモノを握られて、後ろは容赦なく犯されているうちに佐伯の頭が真っ白になる。西田を拒否していた腕が床に落ちた。
「…あ…、ぁ…ん……」
結局調教されて快感を得ることを知っている体は快楽に勝てなかった。
「今日はけっこう拒否ってたな」
「いき…なりは、無理……」
「優しくしたつもりなんだけどね」
「知らな…、あ…っ、ああ…!…」
腰をふる西田の動きが激しくなり、犯されている佐伯の体が跳ねて嬌声も止まらない。
「だめだ…イキそ…」
両足を抱えられてさらに強く突かれて佐伯は快感にもだえていた。
「あん…っ、も…、あぁ…!…イク…うっ……!」
蒸し暑い室内で佐伯は自分の腹に白い液を吹き出した。
「…ん…」
西田のそれを体内で受け止めてさらに力が抜ける。
「…いいね、君の体がいいよ。気持ちいい」
ずるりと音を立てて欲望の塊を抜き出すと中で放った精液が溢れ出す。
「汚しちゃった。責任取ってこの部屋借りてね」
こんな横暴な頼み事をされるのは初めてだったが、疲れた体と暑さでぼんやりする頭では正解がわからない。
「戻って契約書に…、佐伯くん?」
朦朧としている姿を見て聞こえていないと判断した西田は説明をやめた。
ほろ酔いで歩く帰り道、営業時間を過ぎた不動産会社の窓に貼ってある物件が目に入る。
どこで話を聞こうか、急いではいないがいつかは引っ越すことを考えてなんとなく見ていると、繁華街らしく飲食店の居抜きが多かったが、その中に少しだけ安いアパートもいくつかあった。
店を出て後藤と別れてから、そこに行ってみようと思いついて足を向けた。
長い髪のほうが女に見えてそそるという長谷川の言葉で伸ばしていたが、後で髪も切りに行きたい。時間がある間にやりたいことがたくさんある。
中性的な顔は、もう諦めた。
「いらっしゃいませ」
緊張しながら自動ドアをくぐると、前髪を後ろに流していかにもサラリーマンというグレーのスーツを着た若い男が笑顔で声をかけてきた。
「あの…、外のを見て…」
初めて自分ひとりで部屋を探すので勝手がわからない。
「部屋をお探しですか?予算はどれくらいで」
椅子を勧められてそこに座る。
「男の一人暮らしなんで、狭くて安い所でいいです」
街や駅から遠くても安いほうがいい。
カウンターの向こうにいる男がじっと顔をみてくる。
「少々お待ち下さい」
男は名刺を置いて一旦奥に行った。
どこかで会っただろうか。『西田和弘』と書かれた名刺を見るが心当たりはない。
記憶をたどっていた時、ファイルを抱えた西田が戻ってきた。
「店頭でご覧になっていた部屋は残念ですが入居者が決まりました。似たような部屋はこちらにあります」
柔らかい笑顔を浮かべながら西田はファイルを開く。
外には1Kで2万程度の激安物件があったが、さすがにそれはないだろうと思いながらパラパラめくって見ていると、3万円台で同じような部屋が募集されていて驚いた。
できれば2階でフローリングがいい。こだわった所はその程度。
「ここってまだ空き室ですか?」
安ければどこでもいいと考えていた佐伯は思わず声がうわずく。
「まだ埋まってないですね。お時間あればこれから見にいきますか?」
トントン拍子に話が決まっていく。その違和感に気がつけばよかったが、興奮していたのでわからなかった。
会社名が書いてある軽自動車に乗って街から少し離れたアパートにたどり着く。
階段を登って案内してくれる西田が鍵を使ってドアを開けると、写真より広く感じる1Kの部屋が見えた。
中に入る佐伯を見て西田はさり気なく鍵を閉める。
「佐伯くんだよね?」
部屋の真ん中あたりまで進んでいた佐伯は、突然名字を呼ばれてふり返った。
西田はさっきまでの笑顔を消して、白々しい笑いを浮かべている。
「俺に見覚えない?君の体の味はよく知ってる」
「…!?」
何度も何度も自分の意思ではない状態で犯された。いちいち相手なんておぼえていない。
それでも思い出そうとしたが、玄関のドアにもたれて立っていた西田がいつの間にか近くまで来ていた。
「長谷川が消えて困ってるんだろう?俺がいい条件で契約できるように協力するよ」
西田が持っていた書類が音を立てて床に落ちる。
恐怖に近い感情で動けなくなった佐伯の頬を手のひらで包んで西田はそっとキスしてきた。
「だから抱かせてよ。水森じゃ物足りなかった。やっぱり君がいい」
「なんの話…」
どうしてここで水森の名前が出てくるんだろう。
佐伯の体が崩れ落ちそうになるのを支えながら西田はフローリングの床に押さえつけてくる。
「キスだけで力が抜ける。かわいいね」
狭くて圧迫感のある部屋。エアコンもつけてないので暑くて頭がぼうっとする。
水森の身に起きた事を佐伯は知らない。
気がつくとシャツの中に西田の細い指が入り込んでいた。
「なにっ…、やめ…」
「この反応、最高だ」
腕を掴んで服の中から出そうともがくが、執拗に胸の突起を指で転がされているうちに力が入らなくなる。
新規店舗がオープンした時に自分を犯した人間の中にいたのだろうか。泥酔していたのであまり覚えていない。
「は……」
指が胸からジーンズの中に侵入してくると、佐伯は過敏に反応する。その間にベルトを外されてジーンズを脱がされた。
「ほら。ここすぐ入る」
勃起している部分を素通りして後ろの穴に指を這わせてきた。
「はな…せ……」
思い切り睨んでみるが、上に乗りかかっている男が離れる気配はない。
何度か指を抜き差しされて、佐伯は快感に包まれてさらに力が抜け、無意識に両足を開いていた。
西田はジャケットを脱ぎ、忌々しそうにネクタイを外してズボンを膝のあたりまで下げて片足を抜いてから佐伯を貫いた。
「あ…」
長谷川とは違う圧迫感に思わず声が漏れる。
「あいつもさあ、無駄な抵抗はやめて佐伯くんのようになれば痛い思いしなかったのにね」
「ふぁ…あ……あ…」
久しぶりの刺激に佐伯は夢中で腰を浮かせた。
「欲しいんでしょ」
煽ってくる西田の言葉に首をふって否定の思いを示す。
職権乱用で密室を作って襲われるなんて想定外だった。整えてあった西田の髪が揺れて乱れる。
「お前…誰だよ……」
上に重なる体を押しのけようと腕に力を込めるが、西田は微動だにしない。
「どうします?ここに決めますか?」
崩れた前髪が顔に影を作って、社会人の仮面の下にある悪で染まった本性を現している。
それが美しく見えるのは後藤や水森の悪の美貌を知っているからかもしれない。
「汚すんだから責任取れ」
勃ちあがったモノを握られて、後ろは容赦なく犯されているうちに佐伯の頭が真っ白になる。西田を拒否していた腕が床に落ちた。
「…あ…、ぁ…ん……」
結局調教されて快感を得ることを知っている体は快楽に勝てなかった。
「今日はけっこう拒否ってたな」
「いき…なりは、無理……」
「優しくしたつもりなんだけどね」
「知らな…、あ…っ、ああ…!…」
腰をふる西田の動きが激しくなり、犯されている佐伯の体が跳ねて嬌声も止まらない。
「だめだ…イキそ…」
両足を抱えられてさらに強く突かれて佐伯は快感にもだえていた。
「あん…っ、も…、あぁ…!…イク…うっ……!」
蒸し暑い室内で佐伯は自分の腹に白い液を吹き出した。
「…ん…」
西田のそれを体内で受け止めてさらに力が抜ける。
「…いいね、君の体がいいよ。気持ちいい」
ずるりと音を立てて欲望の塊を抜き出すと中で放った精液が溢れ出す。
「汚しちゃった。責任取ってこの部屋借りてね」
こんな横暴な頼み事をされるのは初めてだったが、疲れた体と暑さでぼんやりする頭では正解がわからない。
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