悪いオトコ

希京

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待ち伏せ

目の前に逃したはずの卓也がいる。
「どうしてここに…」
「逃げる準備に手間取ってる。今日だけ泊めてくれ」

近隣住民に見られるのはマズイ。ただでさえ目立つ長身に革のロングコートを着ている男。
春兎は急いでドアを開けて玄関に卓也を押し込んで自分も中に入った。
「冗談じゃない、僕を巻き込むな。帰ってくれ」
一応室内だが言い争う声が漏れないように春兎は小声で詰める。
「今夜だけ頼む」
ふわりとした優しい笑顔を浮かべながら両手を合わせて自分を拝んでくる。
どこまでも自己中心的で傲慢な男だった。

春兎は財布から数万円取り出して卓也に握らせた。
「これでホテルに泊まれ」
「俺の顔写真や名前はそういう所にも回ってきてるんだろう?通報されるために行くようなもんだ」
笑顔を浮かべたまま卓也は自分のスマホを手にして横に振った。

中のデータに卓也に犯されて喘いでいる自分の動画がある。
「拡散したいならやれよ。僕は気にしない」
「俺も今夜限りお前のことは忘れてやる」
「……」
躊躇なく『忘れる』と言われて春兎は何故か胸に痛みが走る。

狭い空間で顔つき合わせて言い争うのも不毛だ。
「出ていかないなら通報する。早く出ていってくれ」
笑みを浮かべていた卓也から表情が消えた。
「お前…。ホントにこの動画拡散するぞ」
どこまでも話は平行線だ。春兎はスマホに『110』を表示して卓也に向けた。

「通話ボタン押すよ?どうする?」
ふり上げられた卓也の手がそれを乱暴に振り払ってスマホは廊下に叩き落された。一瞬目を離した隙に卓也の蹴りが腹に入る。
「ぅあっ!」
激痛に腰を曲げて腕で押さえる。その隙に靴を脱いで卓也は勝手に部屋に上がって、すべり落ちて遠くに転がっているスマホを拾った。
「お邪魔しまーす」
うずくまって痛みに耐えている春兎に背中を向けたまま手をふる。

姿を見たら思い出してしまう。
コートを脱いで勝手にソファに座ってくつろいでいる卓也を見ながら春兎はゆっくり体制を戻して靴を脱いだ。
実はダイニングに家の電話がある。
そこから警察に通報しようと静かに移動して、卓也が姿を見せない春兎を不審がって戻ってこない間に通報を試みた。

壁のせいで卓也が視界から消える。焦る気持ちを抑えながら受話器を持ち上げた時、その手首を掴まれた。
「…卓也」
「俺は厄介な訪問者なんだな。一晩泊めるくらいの情はあるかもと期待した俺が馬鹿だった」
手首を掴んでいないほうの手で受話器を奪って元に戻される。
「離せ!!」
テーブルが空間の大半を占める狭いダイニングで腕をほどこうと暴れるが、卓也は涼しい顔でテーブルに春兎を押さえつけた。

「この前は見逃してくれたのに冷たいな。俺だって春兎が逃げやすいようにして出ていったのに。困った時はお互い様だろう?」
うつ伏せにテーブルに押さえつけられながら卓也の独白を聞く。

その時ピンポン、と間抜けな音がした。
卓也に首根っこを掴まれて引きずられながらインターホンまで連れていかれる。
画面には石川亜美が心配そうにカメラを覗き込んでいた。

『春兎、いる?体大丈夫?』
背後から卓也に抱きつかれた状態で、耳元で「追い返せ」と言われる。
「大丈夫です、すいません」
『必要なものあったら買ってくるけど何かある?』
「えーっと…」
「無いって言え、バカ」
体に巻き付いている腕に力が入って締め付けられる。卓也の声は聞こえなかったのか亜美の表情は変わらない。

「大丈夫です、少し眠りたい」
『わかった。何かあったら遠慮なく連絡して。お大事にね』
そう言い残して画面から消えた。

「はは!やっぱ警察とは違うな。サツだったら少しの違和感も見逃さないぜ」
「…っいい加減離して」
腕の中で暴れる春兎をソファの背に叩きつけた。
「…ゴホっ…は…」
胸を強く打って春兎が咳き込む。

「苦しいか?」
片手で胸を抑えて、もう片方の腕をソファの背に乗せて春兎はかろうじて自力で立っている。
「痛み止めやるよ、飲め」
卓也が取り出した錠剤はとても鎮痛薬とは思えない色をしていた。
ドラッグだ。
「やめ…っ」
逃げようとしたが顔を掴まれて無理やり口に錠剤を放り込まれてキスされた。口の中で卓也の舌は錠剤を溶かすようにうごめく。

体に力が入らない。なんとかソファの背に腕を乗せて支えているが、卓也に尻を突き出す格好になってしまっている事まで気が回らなかった。
「ひ…っ…」
つるりと尻の溝をなぞられて春兎の体がびくっと跳ねた。
「相変わらず敏感だな」
「やめ…、さわんな」

口だけの抵抗しか出来ない春兎のスラックスを脱がして下着を下ろす。
「卓也やめて!」
素肌に冷たい空気が触れて鳥肌が立った。
「明日の朝まで暇だし遊んでやるよ」
つるりとした尻を両手で掴んで卓也は自分のモノを春兎の穴につき刺す。

「うっ…あ……」
ほぐしもせずいきなり貫かれて痛みが走る。
「いた…、痛い…卓也」
「すぐよくなる」
しばらくしてクスリが効いてきたのか頭がぼんやりしてきた。痛みも弱くなって気持ちいい刺激に変わる。

「あ…あ……」
服を着たままソファに手をついて後ろから犯される。紺のジャケットを脱がされ、シャツの中に手を入れられて背中を触られただけで春兎は感じてしまう。
「卑怯…者…クスリなんか……」
「ホントに理由はそれだけか?」
「…は?」
「あーお前の中気持ちいい。俺を吸い込んで中で締めつけてくる。クスリなんかいらねえだろ根っからの淫乱はよぉ」
「ひぁ…っ!」
パン!と強く突かれて悲鳴をあげる。

「壁は厚そうだけどそんな大声出したら隣に聞こえるぞ」
そんな配慮が出来るほど理性は残っていなかった。
「あ…あ……あぁ…すご……」
いつの間にか痛みは消えて、貫かれるたび声をあげた。

僕は…なにしてたんだっけ……。

極彩色に見える周囲に囲まれて、春兎の頭は正確な答えを出せない状況になっていった。





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