福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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7モテ期来た!男限定でな!

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 いつの間にか寝ていたのか、目が覚めるとまだ部屋の中は薄暗かった。朝日はまだ昇っていないのか。ふと、腹の辺りの重みに気付きシーツをめくると魔獣が丸まって居た。


ロギアだ。


「可愛く寝たってダメだぞ。オレは昨日の事・・・ゆ、許さないからな」


 昨夜の痴態が脳裏に過ぎり、頬が熱くなるのを感じた。魔獣の姿ならオレが手を出さないと思ったのか、お仕置きとばかりにロギアのオオカミの頬肉を掴み横に伸ばした。ちょっと上下に動かすと、笑ったりむくれたりする表情になり怒るどころか可愛くてつい何度も繰り返してしまう。


「クソッ・・・やっぱり可愛いな」

「気に入ったか?」

「あ・・・」


 起きてたのか。ロギアは怒るわけでも嫌がるわけでもなく、されるがままだ。頬肉のムニムニした感触をこっそり堪能しながら、オレはまだ怒ってると言うとロギアは「そうか」とちょっと笑った気がした。
 実は部屋の奥にはちょっとしたバスタブ風呂があって、まぁ、うん入るよね。そして全裸になって気付いた無数の赤い跡。目で見える箇所でも凄い事になっていた。


「・・・・しばらく誰とも風呂入れないな、コレ」


 その後ロギアが人型で一緒に入ろうとしたからオレはバスタブの中の湯を手でバシャバシャと投げつけ断固拒否した。
 おかげで服ごとぐっしょり水も滴るいい男になったロギアは、諦めて魔獣の姿で入って来たからその毛並みのびしょ濡れ具合も可愛いくてつい一緒に風呂に入った。


可愛いものには抗えないよな?


 身なりを整え馬車の外に出ると、ウルベル君とアラデア君が恭しく膝を折って出迎えた。ロギアはいきなりオレを横抱きにすると、そのまま降りてそっと地面に下ろす。

「おい、何だよこの降ろし方は」
「ユトの身体に負担がないようにな」
「ぐぬぬ・・・絶対昨日の事誰にも言うなよ」
「自慢したいが、ユトの痴態は私だけのものという葛藤に困りそうだ」
「・・・・」
「ロギア様、ユトさん、おはようございましゅ!まだ日は昇っておりませんが、そろそろ後出立しませんとでしゅ」
「うむ。ユト、しばしの別れだが正式に当主となった後にまた迎えに来る」
「いや、迎えに来ても行かないからね?遊びに来るならいいけどさ」
「私に会うのが楽しみという事だな。素直なユトも可愛いな」
「可愛いは余計だ。あと、馬で来いよ。牛じゃなくて馬で」
「ムオオォォォ・・・」


牛の魔獣が変な声で鳴いている。え、何?


「ユトが冷たい態度だからしょげてしまったではないか」
「え、落ち込んでんの!あれ」
「厶フオオォォォ・・・」
「わかった!皆起きちゃうから変な声出すなよ、夜ならこっそりその牛でいいから」
「ムオ」
「立ち直ったようだ」
「立ち直り早いな」
「ユト」
「ん?・・・ぅッ」


 ロギアに身体を引き寄せられると、髪にキスされた。


「また会いに来る」
「はぁ・・・・仕方ないなぁ。今度は魔獣姿をちゃんと堪能させろよ」
「わかった」


 ロギアは男前な笑顔をオレに向けると、馬車に乗って行ってしまった。
 また来るとか言ってたけど、きっと当主の仕事とか忙しいだろうしあと数年はお別れかもな。ちょっとだけしんみりすると、オレは騎士団としての仕事を全うする為に自分の部屋へと向かうのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 あれから5日が経っていた。オレはいつものように騎士団の仕事を始める。しばらくして気付いたが、やけに静かだ。
 いつもならあの嫌味なヒスティア先輩が取り巻きと一緒に、揶揄いに現れるのに。腹痛で今日も休んでるのかな?

 まぁ、別にヒスティア先輩が病気でもオレが心配する必要はないだろう。


 次の仕事に取り掛かろうと、荷物箱を運ぼうとした。一度に二個運んだ方が効率いいと思い、持ち上げるが予想外に重くてフラフラする。すると突然荷物が浮いた。


「え、何これ魔法?」

「魔法じゃないよ」

「ん???」


 荷物は魔法で浮いたのではなく、誰かが持ってくれたのだ。騎士団の服来てる・・・ヤバい、偉い人かな?
 歳は若そうだけど騎士全員の顔を覚えてるわけじゃないから、どう切り出そうかと思いとりあえず礼を言う。


「あの・・・ありがとうございます」
「フラフラしてて危なかったからね。大丈夫かな」
「すみません!」
「次からは気を付ければいいよ。コレは俺が運ぼう」
「い、いえ!上級騎士様にお手を掛けるわけには・・・」
「何言ってるんだ?俺は見習い騎士で、まぁフレナの同期だ」


しくじったーーーー!!!


「あ、す、すみません。見習いでもたくさん居るので・・・本当にすみません」
「いや、いいんだ。フレナと話せたから」
「?」


 何でオレと話せていいんだ?親切な見習い騎士同期生は荷物を持って行ってしまった。唖然としていたらまた声をかけられた。今度も魔導騎士団の騎士だ。歳はちょっと中年かな?

どっちだ!偉い人か、同期生か!


「ユト・フレナ、暇か?」
「は、はい」
「では私が剣術の手ほどきをしてやろう。来なさい」
「え・・・・っと、ありがとうございます」


 言葉遣いからして貴族か?これは偉い人だな、うん。
 連れて行かれた演習場で謎の貴族(いや騎士だけど)に軽く武器の手ほどきしてもらい、よくわからないが精霊武器を今度選んであげようとか紳士的に去って行った。オレ、魔力量足りないから精霊武器は扱えないけどね。

 実はここ最近、もはや上級騎士か同期生かわからないほど騎士に声をかけられた。なんか騎士以外にも声かけられてる気がする。
 するとオレの隣に誰かが腰掛けてきた。


「フレナ、一緒に食事しないか」
「え、あ・・・さっきの荷物の人。いいですよ」
「荷物の人って、ハハッ。俺は、オリヴァン・トゥーリだよ。これでも子爵家の子息」
「あぁ・・・ごめんなさい。オリヴァンさん」
「あと、齢も同じだから気軽に話そう」
「う、うん・・・。じゃあ、オレもユトでいいよ」


 オリヴァン君、同じ齢だったのか。ガタイもいいし、貫禄あるから30歳はいってると思った。ごめん。


「待て、トゥーリ!ユト・フレナは今日は外で食事すると約束しているんだ」
「いつの間にそんな約束したんですか」
「僕も今夜は部屋でお泊り会するって約束しました、フレナと」
「絶対してないよね、そんな約束」
「あっ、お前ら抜け駆けは・・・」
「俺なんてまだ声すら掛けてないのに・・・」


 雑音が混じってるな。あと何気にみんなオレの名前覚えてたんだね。入隊した時は同じ時期に入隊した見習い仲間2、3人ぐらいしか覚えてもらえなかったのに。そもそもこんな風に話しけて来る人居なかったけどな。
 すると親切なオリヴァン君がそっと耳打ちしてくれた。


「ここ暫く団長が王城から戻って来ないから、ここぞとばかりにユトに皆声かけてるんだ」
「へぇ~」
「へぇって、そんな他人事みたいに・・・わかってないみたいだけど、ユトは入隊して来た頃から人気あるんだよ?」
「え、そうなのか。ほとんど話しかけられないし知らなかった、平凡なオレのどこにそんな需要が・・・」
「平凡って・・・けっしてユトを貶してるわけじゃないけど、ユトはそこそこ容姿整ってると思う。その手の趣味の奴からは、少年期と青年期の危ういバランスだって。鍛えてるだろうし、靭やかな肉体だって持ってるから体型もいい方だよ。それに銀の瞳は綺麗で人目に付くからね。極めつけは、団長が自ら推薦したってとこかな。容認した皇帝陛下や魔導師長様の愛人じゃないかとか言われてるな」
「ないっ!それは絶対ない!そもそも団長・・・ルシエスは孤児院の幼馴染だし」
「えぇっ!?そ、そうだったのか・・・本当に、ただの幼馴染なの?」
「うん、そうだけど?」


 なんてこった!こんな男限定モテ期はいらないが、ルシエスが不貞な輩に圧力かけてくれてたのはよかった。だからヒスティア先輩がちょっかいかけて来ないのか。


「あ、そういえばヒスティア先輩って最近見ないね。よく取り巻きと嫌がらせしに来たのに」
「確か・・・騎士を辞めて田舎に家族と引っ越したらしいよ」
「そうなんだ。居なかったら居ないで、なんか物足りないかな」
「・・・それは団長の前では言わないでね。物理的に沈められちゃうから、ヒスティア先輩が」
「ハハッ、いくら何でもそれはないと思うぜ」
「いや・・でも、ユトがここに来る前に団長が未来を誓いあった伴侶に手を出した奴は生きて世に出られると思うなって公言してたけど」
「・・・・・・ハハッ」


絶対そんな約束を一番してない奴が身近に居た。


「団長はこの際置いておこう。ルシエスは働き過ぎて、ちょっとおかしいんだ」


 そういう事にしておこう。ちょっとこれ以上面倒くさいのが増えても困る。魔王とか、魔王とか、魔王とかみたいにな。


 気を取り直して一日の仕事を終えると、まぁこの国の騎士の特権みたいなのがあって風呂に入れるんだ。ただの風呂じゃない、バスタブでもなくちょっと小ぢんまりした石風呂でもなくミスラの魔術と風呂職人達の最高傑作大浴場だ。近々露天風呂もオープンするらしい。
 この辺りはここに来てよかったかもしれない。孤児院じゃ小さい子の面倒でゆっくり風呂に入れなかったからな。脚なんて伸ばしてる暇もなかった。


 まぁそんな過去の風呂思い出に浸りながらのんびりしているといきなり扉が勢いよく開いた。


「ふぅ、今日もよく働いたな」
「働いた後の風呂は癒やしの時間だぜ」
「お、なんだフレナも入ってたのか」
「背中流してくれよ、フレナ」
「いや、私がフレナの背中を・・・いかん鼻血が・・・」
「というかお前、腹痛いから早退する勤務交換してくれって言ったの嘘だったのか」
「こいつ、フレナと時間合わせたな」


 筋肉質だったり美形だったり様々なタイプの騎士が風呂に乱入して来た。オレは風呂から出ようとしたが脇を固められて、背中を流し流され長風呂過ぎて湯あたりで倒れた。


 翌日医務室で、オリヴァン君が風呂で倒れているオレを変態共から助けてくれたのを聞いて一生心の友と呼ぼうと心に誓った。

 それよりももっと大問題が外では発生していた。昨日風呂に乱入して来た騎士達が、みんな地面に沈められていた。物理的に沈められた奴も居る。


大丈夫?生きてるよね・・・。


「みんな、どうしたんだ」

「ユト!」


 明らかに絶対コイツだと思いつつも素知らぬ顔で、キラキラオーラ出しながら走って来たルシエスに挨拶してやる。


「お、おぉ・・・ルシエス団長おはようございます」
「敬語はいらないよ。今、俺達しか居ないから」
「地面に転がってるのは生き物とカウントしてないのか、お前は。というか何したんだよ?魔導騎士団全滅しちゃうからな?」
「嫁入り前のユトと風呂に入ったんだ、沈めて息の根を止めるのは当たり前だろう?」
「ウン、ソウデスネ。でも息の根は止めてはいけません」
「そんな事より、やっと会合も終わって有給もぎ取れたから明日どこかへ馬で遠乗りしないか」
「・・・皇帝陛下もぎってないよね」
「ん?」
「いや、何でもないよ!明日な、いいよ」
「よかった、久しぶりにユトと一緒だな。嬉しいよ」


 本当に嬉しそうにルシエスは、キラキラ王子様みたいな笑顔をオレに向けた。まぶしっ・・・。
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