福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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25南より来るもの

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チュギュン・・・チュギュン


ギュウエアアアアッ~ギュウエアアアアッ~


 すっかりお馴染みになった朝の魔物鳥の鳴き声で、オレはまだ眠い目を開けた。


「んぶっ!?」


口の中に何か入った!


 咄嗟に起き上がると腰とあらぬ所から痛みが走るが、口の中の正体の方が気になる。いや、それよりも目の前に黒い・・・布?塊?触ってみたらフサフサしている。

あ、ヤバい・・・これに埋もれて二度寝出来そう。


「・・・・・って違う!」


 よく周りを見ると、黒くてデカい生き物だ。ベッドからちょっとはみ出てるぞ、こいつ。とか言いながらしっかり一番毛量の多い部分に埋もれて堪能するオレ・・・。
 お、動いた?


「ん・・・おはよう、ユト。私の愛し子、よく眠れたか?」
「むしろ今からこのフサフサの部分に埋もれて寝ようかと・・・・・ロギア?」
「そうだが?私以外に誰だというのだ」
「!!!や、ヤバい!好きだ!ロギア!」


オレは痛む腰も何のその、ロギアの胸毛に埋もれた。


 実はあの後オレ達はまだ寝ないで、何度もした。あんまり覚えてないけど。あんまり覚えてないとか言いながら、「気持ちいい」とか「もっと」って強請ってた気がする。いや、夢かもしれない・・・・。


「んぷ、っ・・・ぷは」


 ロギアがさらにデカくなった舌でオレの口・・・というかもはや顔全体を舐め回してきた。口なんて開いたらオレの頭丸呑みされるな。


「ロギア、なんでこんなデカくなったんだ?昨日は馬くらいの大きさだったのに」
「ふむ、私の第一封印が解かれたのと・・・昨夜、ユトの魔力を吸い取ったからだな」
「おい、返せオレの貴重な魔力」
「まぁ、まひぇ。まりょふはしぜんりかいふくすりゅぞ」


 人の魔力勝手に吸ったらしいロギアの口をびろーんと横に伸ばす。あ、ちょっと可愛いかも。ロギアは竜の前脚で器用にオレを抱き寄せた。


「ユト、愛している」
「うっ・・・朝から恥ずかしいからやめろ」
「なぜだ、やはり私を愛してはいないのか?」
「いや、そうじゃないけど・・・」
「ユト」
「うぷっ、つ、むぐっ」


 またしても口の中に舌を突っ込んで舐め回してきたロギアに、好きと言うまで許してもらえなかった。というよりも、2日間も似たような感じでロギアの寝室から出してもらえなかった。何が起きていたかは察して欲しい。


 やっとロギアの部屋から出られる許可をもらうと、今朝はウルベル君が起こしに来てくれた。癒やしに飢えたオレはウルベル君を抱き締めて癒やされる。その後ろからもれなく人型に戻ったロギアも抱きついて来たけど。

 1階に降りるとアラデア君や、屋敷の使用人の皆が出迎えてくれる。ちょっと気恥ずかしい。


「まったくお前は寝坊とは出世したものだな。護衛騎士としての自覚が足りないぞ」


 ごもっとも。オレは本来ロギアを守る立場にあるのに、守られてどうするよ。


「うん、これから頑張るよ。アラデア君、よろしくな」
「っ・・・いいか、今日からまた僕に付いて厳しくいくからな」
「うん?」


 アラデア君は怒ったり赤くなったり、熱でもあるのか?大丈夫かな?


「ユト」
「あ、オリヴァン!ごめんな、せっかく屋敷の使用人になってもらったのに危ない目に合わせて」
「気にしてないよ。むしろ侵入者に対してのいい教訓になったんじゃないかな」
「そう言ってもらえると助かる。ありがとうな」


 オリヴァン君は優しいし、本当に紳士だな。末永く仲良くさせてもらおう。
 するとメイドちゃん達が近付いて来た。


「メイドちゃん達もごめ・・・」
「ユトさん、私達後であなたにたーぷりお話を聞かせてもらいますからね!」
「2日も何してたかドキドキします♡」
「あ、あとユトさんが居ない間に面白い事がたくさんありましてぇ~」


 メイドちゃん達は、相変わらずメイドちゃん達だった。

 さて、今日から真面目に働かないとアラデア君に小言を言われ続けるからな。護衛騎士の仕事を頑張るぞ。
 とはいえ、四六時中ロギアの側にいるわけではない。ロギアは執務が安定して来たのか、最近は城へ行かないからな。執務室に篭っている間は、オレは雑用をこなす。庭の手入れとか、屋敷の整理整頓とか。


 今日もせっせと庭の草をむしっていた時に、アラデア君が声をかけて来た。


「ユト。ロギア様が呼んでいるぞ」
「ロギアが?」
「何でも城から呼び出しがあったらしい」
「わかった」


 登城は四星花の伯爵家当主として当たり前の事だけど、オレまで呼び出すって言うのは何だろう?全くその理由が思いつかないまま、ロギアの執務室へと向かった。

 執務室ではロギアが難しい顔をして書面とにらめっこしていた。すでに側に控えていたウルベル君も心配そうにしている。


「ロギア、どうしたんだ?難しい顔して」
「ユト、大問題が発生した」
「問題?」
「神族の侵攻だ」
「ぇ・・・えぇッ!?」
「正確にはまだ侵攻ではないが、帝国の南方領土をいくつか制圧したらしい。皇帝の命で登城せねばならないが、お前もついて来い」
「オレが行っていいのか?皇帝陛下の前で失敗やらかしたら、ヴァルハーゼン伯爵家の家名に傷が付くぞ?」
「元々ヴァルハーゼン伯爵家は仮の貴族。私が貴族でなくとも、ユトは付いて来るだろう?」
「なんだよその自信は・・・」
「わたくしは最後までロギア様のお側に・・・」
「僕も最後までロギア様に従います」
「ウルベル達の方が素直だな」
「うぅ、オレだけ除け者扱いはやめてくれ。わかった、付いて行くよ。いつ登城だ?」
「今からだ」
「い、今っ!」
「もうすでに馬車の用意もしてあります。ロギア様、ご出立なさいますか?」
「うむ」


 神族の侵攻・・・ロギアが言ってた、神王ユストゥエルと関係あるのかな。もしそうなら今回の件はオレが・・・・。


「ユト、間違っても自分で何かしようと思うな。これは我々帝国と、神族の問題だ。お前は、ユストゥエルではない」
「ッ!・・・ロギア・・・わかった!」


 そうだな、今世はユトとして生きるオレのものだ。過去と未来は同じになる必要はないんだ。
 オレはヴァルハーゼン伯爵家の護衛騎士として気を引き締めた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ロギアとオレ、そしてアラデア君と城へ向かう。通された重圧な扉の先には王の間が・・・。


オレはそこで立っているのがやっとだった。


 まず四星花を中心とした帝国の大貴族達、魔導騎士団。玉座に座るのはミスラの頂点に立つ皇帝エクス陛下。そこに放り込まれた下級見習い騎士のオレ・・・差が歴然なのに、ロギアの立つ後ろに護衛騎士として立つ。
 反対側にルシエスが見えて目が合うと一瞬微笑まれたけど、すぐ仕事の顔になる。なんだ、ちゃんと真面目に仕事できるじゃないか。


「さて、皇帝陛下の名の元に火急に招集してもらったのはすでに通達してあった神族の侵攻です」


 進行役を務める魔導士長フェリア様、こんな近くで見たのは初めてだ。式典とかあっても見習いなんてその姿すら遠目にチラッとしか見えないもんな。歳は噂で200年近く生きてるとか言われてるけど、ほとんど子供にしか見えない。
 じっと見過ぎていたら、フェリア様がこちらを見てニッコリと笑う。・・・・・可愛い。男だけど。


「神族は現在帝国領土の最南端を制圧しさらに北上しているようです。目的地は明らかにこの帝都でしょう」
「その理由は?」
「ヴァルハーゼン伯、貴方が一番良くわかっているのでしょう?まさか本当に連れて来るとは思いませんでした」
「残念だがコレは今、普通の人間だ。お前達の有力な手にはならない」
「わかってます。一度、目にしておこうと思いまして」


 コレ、が誰を指しているのかはさすがにオレでもわかったけどフェリア様達は何もする気がないのに呼び出したのか?


「さて、500年ぶりに表舞台に出てきた神族を饗すか迎え撃つかが今後の種族間に関わる問題になって来るところですが・・・陛下のご意向は如何でしょうか?」
「僕は・・・あまり戦いたくはないかな」
「では制圧された領土の民は見捨てますか?」
「えっ!それは・・・何とかこっそり助けに行くとか?」
「わかりました。皇帝陛下のご意志は、民の救出を優先に神族との停戦を試みる方向で。これより魔導騎士団は私の指揮下に入ります。作戦はおって説明しますので会合はここで終了となります」


 意外とあっさり終わった会合の後、オレは普通に帰るものだと思っていた。だが四星花のダルファム伯爵に声をかけられたロギアが仕方ないと、別室へ着いていく事になった。もちろんオレ達も。

 通された部屋でオレは愕然とした。だって四星花だけじゃなくて、皇帝陛下まで居るんだからな!


「あっさり引いたかと思っていたが、これはどういう事だ」


 ロギアが疑問を口にしたって事は、本当に知らなかったんだな。
 更に不安を煽るようにフェリア様が追い打ちをかける。


「正直な所、実は我々も神族の出現に焦りを感じているのです。今回の介入は神王ユストゥエルが原因かと思っていましたが、違ったようですね」
「王の代わりなどいくらでも居るからな。奴らの目的は明白だ、聖剣だろう」
「では僕達も君のかけた封印解除を早めないといけないね」
「一つ目は破ったようだな。この場にクーが居ない」
「皇帝陛下の魔力は魔道士長フェリアすらも凌ぐからね」
「ダ、ダルファム伯!僕はそんなに凄くない・・です」


 ・・・間近で見る皇帝陛下は年若く、気が弱いと言われてるけど魔族の魔力を打ち消す力があるのか。しかも魔王同等の。


「それで、次の封印解除を試みねば聖剣も役に立たなくなるが?」
「ヴァルハーゼン伯は、南の領土に支援物資を孤児院に送っているそうですね?」
「・・・そうだ」
「実は僕の商会も彼等の援助をしていてね。院長は実に賢明な方で、我々に協力的だ。ああ、そうそう。君の後ろに控えるユト・フレナ護衛騎士はその孤児院の子供だったね」
「・・・・」
「ダルファム伯!脅しとは卑怯だぞ!」
「心外だな、クォデネンツ侯。これはビジネスだよ」
「帝国の民を守るのも魔導騎士団の誓いだ」
「でもその魔導騎士団は皇帝陛下なしでは確立しない。戦う相手は僕じゃない、クォデネンツ侯」
「くっ・・・」


 背中を向けているのにダルファム伯爵がオレを見ている気がする。隣のアラデア君も何か言いたげな顔をしながら、チラッとオレを見る。


───わかってる。


オレのやるべき事がわかったよ、ロギア・・・
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