福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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35《最終回》ミスラの空は今日も澄んでいる

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 再び世界に平穏が戻って来た。オレは城へ行ってないから人間や魔族に親族の間で交わされた事はよくわからないけど、ロギアが大丈夫だって言ったからきっと大丈夫なんだろうな。

 あの後実は騎士団を正式に辞めてヴァルハーゼン伯爵家の使用人としての道を選んだ。ルシエスは最後までしがみついて離れなかったけどな・・・。ルシエスまで辞表持ち出すから騎士団は大騒ぎで、結局オレが騎士として孤児院や家族を守って欲しいって抱き着いてまでお願いしてやっと思い留まらせる事が出来た。


 そして今日ものんびりメイドちゃん達とお茶をしながら休憩中だ。


「そういえば西の大神殿とか、東の共和国とかよく駆け付けてくれたよなぁ。魔導騎士団も知らなかったみたいだし」
「ああ、それなら私は元風の大神殿の巫女兵も努めていた事もあったので早急にお知らせしました」
「え・・・」


 マリルちゃんがなんの違和感もなくにこやかに暴露した。というか兵士だったのか・・・・。え、メイドなのに戦えるの?屋敷の防衛力上がるね?


「魔族の国にはあたしの従兄が魔王様の側近してるから知らせが早く届いたよ」
「え・・・・・・・」


 待って・・・ティーナちゃん、魔族との繋がりが近すぎる。一気にギュンッてきたね?


「共和国の三長の一人は、わたしのお母さんです。助けて~って知らせ送ったら飛んで来たみたいですね」


リズちゃん!!!君が一番ヤバい!!!


 うちのメイドちゃん達はただのメイドちゃん達じゃなかったのか!!!メイド様と呼ぼう。


「すごいな皆・・・なんかヴァルハーゼン伯爵家が最強に思えて来た」
「そんな事はないですよ。私はユトさんが最強だと思います」
「そうそう!なんせ、あの魔獣王様の伴侶だからね」
「ゴホッゴホッ・・・伴侶って、別に結婚とかしてないし」
「なにも書類上や式を上げるだけが伴侶じゃないのですよ」
「うーん・・・複雑だ」


「なんだ、ユトは私を愛してないのか?私の愛し子は薄情者だな」


「ロ、ロギア!」


 当の本人が現れて背中からすっぽり抱きしめてくる。メイドちゃん達は小さくきゃあッて黄色い声をあげている。人前ではやるなって言っても実はホイホイとしてくるんだ。
 獣だから本能に忠実なのか?


「お帰り、ロギア。遅かったな」
「私がわざわざ城に出向かなくともいいがアレがうるさいからな」
「アレ?」
「フェリア・ノーグだ」
「あぁ・・・フェリア様はそういうとこ律儀だよな。仕事人間って言うか・・・」
「まぁ、それが性分なら仕方ないだろう。それより今日は別の用件もあったからな、取り戻すのに時間がかかった。来い、クー」
「・・・クー?」


 クーと呼ぶと庭に誰かが入って来る。長く白い髪に赤い瞳の綺麗な子供。この間、会合にいた子だよな?なぜかまだメイド服を着ている。


「クーちゃんって、女の・・・子?」


 ロギアがオレの隣に座ると、反対側に立つ。見れば見るほど綺麗な子だけど、感情がないみたいに無表情だな。

 
「クーに性別はない。魔導人形だからな」
「魔導人形?人形なのか?初めて見た」
「コレの中にユストゥエルの魂を入れていた」
「え、・・・この子の中に・・・」
「もうないから普通の魔導人形だがな」
「そうか・・・。クーちゃんはどうするんだ?」
「願わくばここに置いてやってくれ」
「オレの許可なんていらないだろ?屋敷の主人はお前なんだから」
「・・・そうだったな。クー、ここに住むといい」


 クーちゃんは相変わらず無表情だ。オレは立ち上がってクーちゃんの前に立つと目線を合わせて両手をそっと握る。赤い瞳が光って、一瞬手が震えた気がした。


「初めまして、クーちゃん。オレはユトだよ、今日から新しい家族だね。よろしく」
「・・・ッ」


 目がちゃんと合って、クーちゃんの瞳が揺れる。あ、ロギアの方を見た。ロギアが頷く。するとクーちゃんはオレに抱き着いてきた。


「おっと・・・受け入れてくれたのかな?」
「気に入ったようだな」
「そうか、よかった。また家族が増えたな」
「だがいつまでもユトにくっついているのはいただけないな」
「どんなワガママだよ。まったく・・・」


 こんな小さな子にまで嫉妬とは大人気ない。でも今日は家族が増えた特別な日だしな、オレは機嫌取りのためにロギアの膝に座ってやった。まだ納得してない顔してる。
 仕方ないなぁ・・・。


「ロギア、愛してるよ」
「本当か?」
「福引きで当てて育てちゃうほどな」
「フフ、私も愛してる。ユト」


 やっと機嫌が治ったのか男前ないい笑顔だ。そしたらクーちゃんがオレの膝によじ登って来た。ロギアの膝に乗るオレの膝に乗るクーちゃん。


「ユトさん、大人気でしゅ」
「まったく、ユトはまだ仕事中だろう。クーもここで働くなら使用人としてちゃんと教育しないとな」
「今日くらいいいんじゃないかな?みんな、楽しそうだし」


 ウルベル君とアラデア君に、オリヴァン君も庭にやって来た。


「では私も膝に乗せてもらおうか」


 そこにファランレイさんもお菓子を持って登場したけど、今のは冗談だよな?むしろドラゴン化したファランレイさんにまた乗せてもらいたい。


「じゃあ、みんなまとめてロギアの膝に乗ろうぜ!」
「さすがにそれは重いな」
「いいじゃないか、命の重さだ。知ってるか?ィアーリウェアはみんな平等なんだぞ」


「と言うことは、俺もユトに膝枕してもらったりする権利が当然あるな?」


「ルシエス!」


 いつの間にかルシエスも屋敷に入って来ていた。今日は招待してないけど、勝手に来るのは貴族のマナーとしてどうなんだ?


「ルシエス、招待されてないのに勝手に来たら貴族としてはまずいだろ?」
「問題ない。いつでも来ていいとヴァルハーゼン伯の許可はもらってある」
「ロギアが?ずいぶん丸くなったな」
「もうお前を取られる事はないからな」
「ずいぶんな自信だな」
「ユトと恋仲にはなれなかったが、お兄ちゃんとしての地位は譲らないぞ」
「ちょっとそれはそれで嫌な響きだな」
「なぜだ!?お兄ちゃんになら甘えていいんだぞ」
「うーん・・・・」


 ルシエスが言うとちょっと危ない響きになるのは、なぜだろう。


「ユト!お兄ちゃんって呼んでいいんだぞ」
「嫌だよ、ルシエス」
「くっ・・・・」


「お兄ちゃん」


「・・・・え?今、クーちゃん喋った?」


 女の子みたいな可愛い声でお兄ちゃんって言われた気がする。でもクーちゃんは、相変わらず無表情だ。ロギアを見ても、笑っているだけで教えてくれない。


でも、いいかな。


 福引きで当てた魔獣王とその愛し子って呼ばれるオレと、みんながずっと一緒に笑って居られたら嬉しいな。




神の大地よ 


ィアーリウェアよ


あぁ、今日もミスラの空は澄んでるなぁ





fin
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