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序 魔剣転生
9預けたもの
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「オレの命をフリエスに預ける」
イオは両手に持つ魔剣をフリエスの前に差し出した。フリエスは真顔でイオを見下ろす。
「なんの真似だ?」
「オレは危険だと思う。だからオレに肩入れしないフリエスが判断して欲しい」
「・・・」
『ぉ、王よ!我はこんな優男になど持たれたくないぞ!』
魔剣の必死の抵抗も虚しく、フリエスはイオの両手から魔剣を取った。そして刃の切っ先をイオの喉に突き付ける。
ヴェルジークはフリエスの行動に緊迫し、剣を構えた。
「フリエス、剣を収めろ!」
『そうだ、小僧!我が王に向かってなんたる無礼!』
「・・・イオ」
「なに?」
「お前を斬った俺のメリットは?」
「国と、・・・ヴェルジークが守られるよ」
「お前は誰が守ってくれるんだ」
「えっと・・・」
『ぬかせ小僧!我がだ!』
さっきから魔剣が横槍を入れる声に、イオは気が緩んで笑う。すると周囲の騎士の一人が罵倒した。騎士団兵舎で、イオを蔑んでいた男だ。
「何を笑っている、魔族め!お前のような危険な者がこの世に存在していいはずがない!」
確かにイオは本来ここに居るべき存在ではない。しかも魔剣を扱える者だ。この世界の人間からしたら脅威でしかなかった。
だがその罵倒はかき消された。フリエスが切っ先を罵倒した騎士に向けたのだ。
「はい、そこの低俗な奴。これ以上騎士団の名を穢したらここで叩き斬るぞ。この魔剣で」
「ヒイッ!?フリエス、何を!」
「イオの方が騎士道精神をわかってるな。お前らもクラリシス王国の誇る騎士なら、一撃でやられてないでもっと踏ん張れよ」
「確かに私も含め、皆弛んでいるぞ。帰ったらみっちり鍛え直しだな」
「あの・・・」
「この魔剣、なんか気持ち悪いから返すわ」
『気持ち悪いとは何だ!赤毛もやしめ!』
フリエスは魔剣をイオに突き返した。もちろん魔剣の悪態は聞こえていない。
騎士達はフリエスの行動とヴェルジークの発言に我にかえり、剣を収めた。
「イオ、申し訳なかった。部下の勝手な行動と発言の非礼を詫びよう」
「いや、オレの方が悪いのに。皆さん、危険な目に合わせてごめんなさい」
「やっぱりイオはいい子だよな~」
「うわっ」
『あっ!これ、赤毛もやし!我の王に馴れ馴れしいぞ!』
「フリエス、馴れ馴れしくイオに触るな」
イオはフリエスに抱きつかれて髪をくしゃくしゃにされる。魔剣とヴェルジークは同じ発言をしていた。
何とかその場を収めることはできたようだが、魔剣の問題は残っている。魔剣探索の任務を終えた一同は、城へと帰還する事にした。
城へ帰還したヴェルジーク達は、アーシア陛下の謁見の準備が整うまで控室で待機するように言われた。ヴェルジークとイオ、フリエスが謁見の代表のようだ。
だが案内された控室の中から、とんでもない光景を目にする。
「ああッ!陛下、もうお止め下さい!」
カーテンの向こう側からは少し野太い喘ぎ声と、明らかにアーシア陛下の声がする。カーテン越しの影は2人が合体しているのか、アーシア陛下が前後に激しく動きやがて止まる。
「さっきまで処女だったのにもう腰を振っているではないか、もっと腰を振ってもよいぞ」
「くっ、・・陛下、お許しください、ああッ、あああッーーーー!!!」
明らかに尻を突き出している野太い声の影は達したのか、床に崩れる音がした。
しばらくしてから中からアーシア陛下が、スッキリした顔で現れソファーに優雅に座る。
「鍛えた兵士の締りはやはり良い」
「・・・アーシア陛下、何をされているのですか」
「おお!ヴェルジークよ、戻ったのか。いやなに、イオが戻った際にどのように抱くかそこの兵士で思考しておったのだ」
「どうりで見張りの兵士が扉口に居ないと思った」
「我が国の兵士で、そのような不埒な行為はお止め下さい」
「ヴェルジークは器が小さいぞ。イオ、さぁ予の所へ来い!」
「ええっ!?」
「行かなくていい」
突然話題を自分に向けられたイオは焦るが、ヴェルジークに静止された。魔剣も変態じみては居たが、アーシア陛下の変態さは突き抜けていた。
それより自分を想像して先程の行為が行われていた事に、イオはドン引きする。
「予は強い者が好みなのだ」
「アーシア陛下はその強い者を組み敷くのが好みなんだ」
「うっ・・・なんてセクハラ」
『このような破廉恥極まりない変態の統治する人間の国に、魔族は敗北したのか』
「さて。報告を聞こうか、ヴェルジーク」
ボソッとフリエスが耳打ちしたアーシア陛下の特殊性癖をイオは暴露されながら、一同は改めて謁見の間へ移動するのだった。
イオは両手に持つ魔剣をフリエスの前に差し出した。フリエスは真顔でイオを見下ろす。
「なんの真似だ?」
「オレは危険だと思う。だからオレに肩入れしないフリエスが判断して欲しい」
「・・・」
『ぉ、王よ!我はこんな優男になど持たれたくないぞ!』
魔剣の必死の抵抗も虚しく、フリエスはイオの両手から魔剣を取った。そして刃の切っ先をイオの喉に突き付ける。
ヴェルジークはフリエスの行動に緊迫し、剣を構えた。
「フリエス、剣を収めろ!」
『そうだ、小僧!我が王に向かってなんたる無礼!』
「・・・イオ」
「なに?」
「お前を斬った俺のメリットは?」
「国と、・・・ヴェルジークが守られるよ」
「お前は誰が守ってくれるんだ」
「えっと・・・」
『ぬかせ小僧!我がだ!』
さっきから魔剣が横槍を入れる声に、イオは気が緩んで笑う。すると周囲の騎士の一人が罵倒した。騎士団兵舎で、イオを蔑んでいた男だ。
「何を笑っている、魔族め!お前のような危険な者がこの世に存在していいはずがない!」
確かにイオは本来ここに居るべき存在ではない。しかも魔剣を扱える者だ。この世界の人間からしたら脅威でしかなかった。
だがその罵倒はかき消された。フリエスが切っ先を罵倒した騎士に向けたのだ。
「はい、そこの低俗な奴。これ以上騎士団の名を穢したらここで叩き斬るぞ。この魔剣で」
「ヒイッ!?フリエス、何を!」
「イオの方が騎士道精神をわかってるな。お前らもクラリシス王国の誇る騎士なら、一撃でやられてないでもっと踏ん張れよ」
「確かに私も含め、皆弛んでいるぞ。帰ったらみっちり鍛え直しだな」
「あの・・・」
「この魔剣、なんか気持ち悪いから返すわ」
『気持ち悪いとは何だ!赤毛もやしめ!』
フリエスは魔剣をイオに突き返した。もちろん魔剣の悪態は聞こえていない。
騎士達はフリエスの行動とヴェルジークの発言に我にかえり、剣を収めた。
「イオ、申し訳なかった。部下の勝手な行動と発言の非礼を詫びよう」
「いや、オレの方が悪いのに。皆さん、危険な目に合わせてごめんなさい」
「やっぱりイオはいい子だよな~」
「うわっ」
『あっ!これ、赤毛もやし!我の王に馴れ馴れしいぞ!』
「フリエス、馴れ馴れしくイオに触るな」
イオはフリエスに抱きつかれて髪をくしゃくしゃにされる。魔剣とヴェルジークは同じ発言をしていた。
何とかその場を収めることはできたようだが、魔剣の問題は残っている。魔剣探索の任務を終えた一同は、城へと帰還する事にした。
城へ帰還したヴェルジーク達は、アーシア陛下の謁見の準備が整うまで控室で待機するように言われた。ヴェルジークとイオ、フリエスが謁見の代表のようだ。
だが案内された控室の中から、とんでもない光景を目にする。
「ああッ!陛下、もうお止め下さい!」
カーテンの向こう側からは少し野太い喘ぎ声と、明らかにアーシア陛下の声がする。カーテン越しの影は2人が合体しているのか、アーシア陛下が前後に激しく動きやがて止まる。
「さっきまで処女だったのにもう腰を振っているではないか、もっと腰を振ってもよいぞ」
「くっ、・・陛下、お許しください、ああッ、あああッーーーー!!!」
明らかに尻を突き出している野太い声の影は達したのか、床に崩れる音がした。
しばらくしてから中からアーシア陛下が、スッキリした顔で現れソファーに優雅に座る。
「鍛えた兵士の締りはやはり良い」
「・・・アーシア陛下、何をされているのですか」
「おお!ヴェルジークよ、戻ったのか。いやなに、イオが戻った際にどのように抱くかそこの兵士で思考しておったのだ」
「どうりで見張りの兵士が扉口に居ないと思った」
「我が国の兵士で、そのような不埒な行為はお止め下さい」
「ヴェルジークは器が小さいぞ。イオ、さぁ予の所へ来い!」
「ええっ!?」
「行かなくていい」
突然話題を自分に向けられたイオは焦るが、ヴェルジークに静止された。魔剣も変態じみては居たが、アーシア陛下の変態さは突き抜けていた。
それより自分を想像して先程の行為が行われていた事に、イオはドン引きする。
「予は強い者が好みなのだ」
「アーシア陛下はその強い者を組み敷くのが好みなんだ」
「うっ・・・なんてセクハラ」
『このような破廉恥極まりない変態の統治する人間の国に、魔族は敗北したのか』
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