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2章 名前のない魔王編
27おかえりなさい
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ひと振りの魔剣の純粋な想いで、この世界に転生してしまったイオ。
2日後アーシア陛下に降臨の神殿での事、イオが名無しの魔王であった事を報告した。前世とはいえ魔王の魔剣を持つ者だ、重罰が下るかと思っていたがアーシア陛下の反応は意外なものだった。
「今は居ない者を恐れて何かあるのか?予の前にはイオというただの人間である予の民しかおらぬわ。だから安心して早く予の后となるがよい」
高らかにドヤ顔で懐が広い寛大さを見せるアーシア陛下だが、いつもながら一言余計な残念な美形である。そんないつもの雰囲気に、イオは安堵した。
ケンさんには、アーシア陛下には自分が人型になれるのは内密にしておけと言われたのでそこは黙っている事にする。確かに名無しの魔王の姿では、また人間達に余計な不安を煽りかねないからだ。
魔剣の問題がまだ残っていたので、再び聖剣に戻す話題へと切り替えられる。
「さて、一向に魔剣と聖剣を切り離す解決の糸口が見当たらぬな」
『主よ』
「なに、ケンさん?」
『心当たりがあるのだが、いかんせん可能性は低いのだが』
「?」
ケンさんはあまり乗り気ではない提案をイオに伝えると、イオはそれをアーシア陛下に告げる。
「えっと、ケンさんが言うには精霊の力を借りて新たな器を創りそこにケンさんが入れれば分離出来るんじゃないかって・・・」
「ふむ、精霊か・・・」
「精霊って一応いるんですよね?」
難しい顔をするアーシア陛下の代わりに、ヴェルジークが答える。
「イオ、精霊は魔法としてその力の一部を借りているのは知っているか?」
「え、そうなの?」
「正確には魔法を使うために、彼等を強制的に使役しているに近い。簡単に言うと勝手に人間に命令されてやらされていると言いってもいい」
「そ、そうなの!?」
「素直に彼等が知恵を貸してくれるとは思えない。そもそも精霊は異なる次元に住んでいるから、人間では見つける事も行くことさえ不可能なんだ」
「なるほど」
『そのために我が居るのではないか』
「あぁ、そうか。ケンさんなら行けるって言ってます」
「本当か?」
「うーん、そうみたい」
「では、精霊界探索の任務を騎士団に任命しよう。聖剣を取り戻し我が国に必ずや持ち帰るのだ」
「御意」
「・・・はい」
精霊界探索の任務を請け負ったヴェルジーク等聖騎士団達。この先の方向性が決まり、イオ達は数日の休暇を与えられた。やっとメリュジーナの屋敷へ戻れるのだ。
廊下に出ると、フリエスが待っていた。
「よぉ、イオ」
「フリエス!」
「なんか大変だったみたいだな、でもまた会えてよかった」
「うん、ありがとうフリエス」
「フリエス、陛下より正式な勅命が下った。詳しい事は後で説明するが今度の旅は長いぞ」
「了解。あ、それと・・・外の奴ら早く持ち帰ってくれよ。兵士の迷惑だから」
「?」
謁見が終わりフリエスと合流すると城の門まで赴く。すると、ユーリエとエオルが待って居た。イオを見つけると二人して猛ダッシュで抱きつく。
「イオ様~!わたし、わたし・・ふえぇ!」
「イオ・・・よかった、おかえり」
「・・・エオル、ユーリエ様・・・ただいま。心配かけてごめんね」
「よいのです!わたしはイオ様の未来の妻になるのだから、夫を信じて待つのも務めなのです!」
「はは・・・」
「ユーリエ様、あまりイオに負担をかけると身体にまた触りますので抱き着くのはご遠慮下さい」
「あっ、イオ様~!」
ヴェルジークの独占欲が発動し、丁重にだがユーリエは引き離された。エオルは身の危険を感じ素直にイオから離れる。
城の門前で話しても迷惑になるからと、チェイン家に移動する事になった。来賓室のソファーにイオが座らせられると、そな隣に当然と言わんばかりにユーリエが座る。正面のソファーには、客扱いのエオルが座り騎士達はエオルの後に立って控える。
「んふふ♡イオ様のご活躍を、このユーリエがしっかりとアーシア陛下にお伝えしておきましたからね」
「・・・そのおかけでややこしい事にまたなってるけどね、はは」
「イオ様は、メリュジーナ侯爵家へお戻りになってしまうの?」
「うん、オレはメリュジーナ家の使用人だからね」
「それなら、わたしの家の使用人として召し抱えますわよ」
「ユーリエ様、イオの扱いはアーシア皇帝陛下よりこの私が全て任されておりますので。よってメリュジーナ侯爵家の使用人からの任務は外せませんので」
「むむむぅ!ヴェルジーク様、なかなかやりますわね。負けませんわ」
ついこの間まで、ヴェルジークの事が好きだったユーリエは今やすっかりライバル視している。ヴェルジークも独占欲は隠さずにかつ穏便な言葉で、かつ紳士らしく受け答えをする。5歳児といえど、ユーリエは将来的に厄介な相手になりそうだとヴェルジークは感じていたので今のうちに徹底的に釘を差すようだ。
そんな強烈な似た者同士の二人に板挟み状態のイオは、引き攣る笑顔で座っている。
「あの・・・イオ」
「ん?どうした、エオル」
エオルがその空気を割ってくれたおかけで、ひとまずは話題が逸れた。
エオルはいつもピッチリ巻いてるバンダナを外すと、猫耳が飛び出す。そして後ろからも尻尾を取り出した。
「かっ、かわいいー♡」
「ッ」
イオは、突然のエオルのモフな萌姿に興奮して立ち上がるが後には控えるヴェルジークの嫉妬の眼差しとフリエスの苦笑いと目が合って座り直した。
「・・・・ゴホン」
「あの・・僕は、獣人と人間のハーフなんだ」
「うん、なんとなくはヴェルジークから聞いた」
「僕の村は、魔王ファルドレイによって失くなってしまった」
「え・・・」
「村の何人かは逃げられたけど、僕の・・家族は・・・。なんとか逃げ延びた僕を、ヴェルジーク様が見つけて屋敷に置いてくれたんだ」
「そうだったのか、エオルのご家族の冥福を祈るよ。でも今は、オレ達が家族だよ」
「ッ!・・・・・イオ、ありがとう・・・」
エオルは涙を溜めながら、今度は笑顔をイオに向ける。
「それでね、僕の村の近くに風の精霊様を祀る場所があったんだ。もし今も残ってれば精霊様が居ないかなと思って」
「エオルの故郷は確か・・西大陸の砂漠辺りだったな。陸路でも半月はかからずに行けるだろう」
「うん・・・でも精霊様はもう居ないかもしれないし
・・・無駄足だったら皆に申し訳がないから・・」
「何を言う?お前は皆に希望の兆しをもたらした、堂々としていればいいんだ」
「ヴェルジーク様・・・ありがとう・・ございます」
エオルは照れて俯くが、その顔には笑顔がある。家族を失ってから二度と取り戻せないと思っていた笑顔が・・・。
「じゃあ、まずは西大陸から行くの?」
「そうだな、隊の編成や荷の準備等が決まり次第出発する事にしよう」
「ヴェルジーク、頑張ろうね」
「あぁ。イオ、帰ろう我が家に」
「っ、・・・うん!」
次の目的地は西大陸の元獣人村の跡地と決まり、やっとメリュジーナ侯爵家へ帰れると喜ぶイオ。ユーリエは駄々をこねて引き留めようとしたが、紳士的なヴェルジークにまだ手も足も出ないので言いくるめられて悔しそうにしていた。
そしてイオとヴェルジークとエオル、そしてケンさんはメリュジーナ侯爵家へと戻るのだった。玄関にはティオドールとロゼットが待っていた。
「お帰りなさませ、旦那様」
いつもは厳しいティオドールの声が、とても優しく響く。
「ただいま、ティオドール。屋敷を任せておいてすまなかったな」
「いえいえ、旦那様のお帰りになる場所をこの老体で良ければいつまでもお守り致しますよ」
「留守の間は何もなかったのでご安心を」
「ロゼットも、ありがとう」
ロゼットは、相変わらずイケメン美女で屋敷の主人の労いの言葉に深くお辞儀する。
そしてティオドールは、イオを見た。
「イオさん、ちゃんと旦那様をお守りできたようですね?素晴らしい働きです、それでこそメリュジーナ侯爵家の使用人。そして貴方もエオルも無事でよかった、お帰りなさい二人とも」
「っ!ティオドールさん!」
「ティオドール様!」
あたたかいティオドールの出迎えに、二人は思わず抱き着いた。
「これはこれは、困りましたね」
『これ!またしても男に抱き着くでない!主よ、離れるのだー!抱き着くなら我にするのだー!』
「ティオドール様、魔剣が貴方に嫉妬しているようです」
「モテモテだな、ティオドール」
「からかわないで下さい、旦那様」
そう言いながらも、ティオドールは厳しい顔を崩して珍しく笑顔で二人を抱きしめ返すのだった。
イオは、今はこの平穏な時間を大事にしたいと心底安心した笑顔を皆に向けた。
2日後アーシア陛下に降臨の神殿での事、イオが名無しの魔王であった事を報告した。前世とはいえ魔王の魔剣を持つ者だ、重罰が下るかと思っていたがアーシア陛下の反応は意外なものだった。
「今は居ない者を恐れて何かあるのか?予の前にはイオというただの人間である予の民しかおらぬわ。だから安心して早く予の后となるがよい」
高らかにドヤ顔で懐が広い寛大さを見せるアーシア陛下だが、いつもながら一言余計な残念な美形である。そんないつもの雰囲気に、イオは安堵した。
ケンさんには、アーシア陛下には自分が人型になれるのは内密にしておけと言われたのでそこは黙っている事にする。確かに名無しの魔王の姿では、また人間達に余計な不安を煽りかねないからだ。
魔剣の問題がまだ残っていたので、再び聖剣に戻す話題へと切り替えられる。
「さて、一向に魔剣と聖剣を切り離す解決の糸口が見当たらぬな」
『主よ』
「なに、ケンさん?」
『心当たりがあるのだが、いかんせん可能性は低いのだが』
「?」
ケンさんはあまり乗り気ではない提案をイオに伝えると、イオはそれをアーシア陛下に告げる。
「えっと、ケンさんが言うには精霊の力を借りて新たな器を創りそこにケンさんが入れれば分離出来るんじゃないかって・・・」
「ふむ、精霊か・・・」
「精霊って一応いるんですよね?」
難しい顔をするアーシア陛下の代わりに、ヴェルジークが答える。
「イオ、精霊は魔法としてその力の一部を借りているのは知っているか?」
「え、そうなの?」
「正確には魔法を使うために、彼等を強制的に使役しているに近い。簡単に言うと勝手に人間に命令されてやらされていると言いってもいい」
「そ、そうなの!?」
「素直に彼等が知恵を貸してくれるとは思えない。そもそも精霊は異なる次元に住んでいるから、人間では見つける事も行くことさえ不可能なんだ」
「なるほど」
『そのために我が居るのではないか』
「あぁ、そうか。ケンさんなら行けるって言ってます」
「本当か?」
「うーん、そうみたい」
「では、精霊界探索の任務を騎士団に任命しよう。聖剣を取り戻し我が国に必ずや持ち帰るのだ」
「御意」
「・・・はい」
精霊界探索の任務を請け負ったヴェルジーク等聖騎士団達。この先の方向性が決まり、イオ達は数日の休暇を与えられた。やっとメリュジーナの屋敷へ戻れるのだ。
廊下に出ると、フリエスが待っていた。
「よぉ、イオ」
「フリエス!」
「なんか大変だったみたいだな、でもまた会えてよかった」
「うん、ありがとうフリエス」
「フリエス、陛下より正式な勅命が下った。詳しい事は後で説明するが今度の旅は長いぞ」
「了解。あ、それと・・・外の奴ら早く持ち帰ってくれよ。兵士の迷惑だから」
「?」
謁見が終わりフリエスと合流すると城の門まで赴く。すると、ユーリエとエオルが待って居た。イオを見つけると二人して猛ダッシュで抱きつく。
「イオ様~!わたし、わたし・・ふえぇ!」
「イオ・・・よかった、おかえり」
「・・・エオル、ユーリエ様・・・ただいま。心配かけてごめんね」
「よいのです!わたしはイオ様の未来の妻になるのだから、夫を信じて待つのも務めなのです!」
「はは・・・」
「ユーリエ様、あまりイオに負担をかけると身体にまた触りますので抱き着くのはご遠慮下さい」
「あっ、イオ様~!」
ヴェルジークの独占欲が発動し、丁重にだがユーリエは引き離された。エオルは身の危険を感じ素直にイオから離れる。
城の門前で話しても迷惑になるからと、チェイン家に移動する事になった。来賓室のソファーにイオが座らせられると、そな隣に当然と言わんばかりにユーリエが座る。正面のソファーには、客扱いのエオルが座り騎士達はエオルの後に立って控える。
「んふふ♡イオ様のご活躍を、このユーリエがしっかりとアーシア陛下にお伝えしておきましたからね」
「・・・そのおかけでややこしい事にまたなってるけどね、はは」
「イオ様は、メリュジーナ侯爵家へお戻りになってしまうの?」
「うん、オレはメリュジーナ家の使用人だからね」
「それなら、わたしの家の使用人として召し抱えますわよ」
「ユーリエ様、イオの扱いはアーシア皇帝陛下よりこの私が全て任されておりますので。よってメリュジーナ侯爵家の使用人からの任務は外せませんので」
「むむむぅ!ヴェルジーク様、なかなかやりますわね。負けませんわ」
ついこの間まで、ヴェルジークの事が好きだったユーリエは今やすっかりライバル視している。ヴェルジークも独占欲は隠さずにかつ穏便な言葉で、かつ紳士らしく受け答えをする。5歳児といえど、ユーリエは将来的に厄介な相手になりそうだとヴェルジークは感じていたので今のうちに徹底的に釘を差すようだ。
そんな強烈な似た者同士の二人に板挟み状態のイオは、引き攣る笑顔で座っている。
「あの・・・イオ」
「ん?どうした、エオル」
エオルがその空気を割ってくれたおかけで、ひとまずは話題が逸れた。
エオルはいつもピッチリ巻いてるバンダナを外すと、猫耳が飛び出す。そして後ろからも尻尾を取り出した。
「かっ、かわいいー♡」
「ッ」
イオは、突然のエオルのモフな萌姿に興奮して立ち上がるが後には控えるヴェルジークの嫉妬の眼差しとフリエスの苦笑いと目が合って座り直した。
「・・・・ゴホン」
「あの・・僕は、獣人と人間のハーフなんだ」
「うん、なんとなくはヴェルジークから聞いた」
「僕の村は、魔王ファルドレイによって失くなってしまった」
「え・・・」
「村の何人かは逃げられたけど、僕の・・家族は・・・。なんとか逃げ延びた僕を、ヴェルジーク様が見つけて屋敷に置いてくれたんだ」
「そうだったのか、エオルのご家族の冥福を祈るよ。でも今は、オレ達が家族だよ」
「ッ!・・・・・イオ、ありがとう・・・」
エオルは涙を溜めながら、今度は笑顔をイオに向ける。
「それでね、僕の村の近くに風の精霊様を祀る場所があったんだ。もし今も残ってれば精霊様が居ないかなと思って」
「エオルの故郷は確か・・西大陸の砂漠辺りだったな。陸路でも半月はかからずに行けるだろう」
「うん・・・でも精霊様はもう居ないかもしれないし
・・・無駄足だったら皆に申し訳がないから・・」
「何を言う?お前は皆に希望の兆しをもたらした、堂々としていればいいんだ」
「ヴェルジーク様・・・ありがとう・・ございます」
エオルは照れて俯くが、その顔には笑顔がある。家族を失ってから二度と取り戻せないと思っていた笑顔が・・・。
「じゃあ、まずは西大陸から行くの?」
「そうだな、隊の編成や荷の準備等が決まり次第出発する事にしよう」
「ヴェルジーク、頑張ろうね」
「あぁ。イオ、帰ろう我が家に」
「っ、・・・うん!」
次の目的地は西大陸の元獣人村の跡地と決まり、やっとメリュジーナ侯爵家へ帰れると喜ぶイオ。ユーリエは駄々をこねて引き留めようとしたが、紳士的なヴェルジークにまだ手も足も出ないので言いくるめられて悔しそうにしていた。
そしてイオとヴェルジークとエオル、そしてケンさんはメリュジーナ侯爵家へと戻るのだった。玄関にはティオドールとロゼットが待っていた。
「お帰りなさませ、旦那様」
いつもは厳しいティオドールの声が、とても優しく響く。
「ただいま、ティオドール。屋敷を任せておいてすまなかったな」
「いえいえ、旦那様のお帰りになる場所をこの老体で良ければいつまでもお守り致しますよ」
「留守の間は何もなかったのでご安心を」
「ロゼットも、ありがとう」
ロゼットは、相変わらずイケメン美女で屋敷の主人の労いの言葉に深くお辞儀する。
そしてティオドールは、イオを見た。
「イオさん、ちゃんと旦那様をお守りできたようですね?素晴らしい働きです、それでこそメリュジーナ侯爵家の使用人。そして貴方もエオルも無事でよかった、お帰りなさい二人とも」
「っ!ティオドールさん!」
「ティオドール様!」
あたたかいティオドールの出迎えに、二人は思わず抱き着いた。
「これはこれは、困りましたね」
『これ!またしても男に抱き着くでない!主よ、離れるのだー!抱き着くなら我にするのだー!』
「ティオドール様、魔剣が貴方に嫉妬しているようです」
「モテモテだな、ティオドール」
「からかわないで下さい、旦那様」
そう言いながらも、ティオドールは厳しい顔を崩して珍しく笑顔で二人を抱きしめ返すのだった。
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