n.(R18・完結)

ちゃあき

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 天気がいいから屋敷のテラスに出ていた。
 風もなくて、トールさんから新しく預かった紙束が飛ばないからいい。

 摩訶不思議な話がきれいな字で綴られている。

 やはりその物語より、文字のほうが芸術性が高いと思う。

「……例の脚本か?」
「お兄さま?」
「近頃熱心に読んでるな。マーヤもいってた」

 今日は兄も休日らしい。
 普段着姿でカップを持って近づいてきた。

 このごろ、兄と距離が近づくときがある。今まで必要以上に言葉をかわしたことさえなかったのに。

 外の陽の光のもとで見ると色彩の明るい兄はきらきらしてきれいだ。ただ仏頂面なところはいつもどおりだ。

「わりと面白いので」
「どんな話なんだ。要約してくれ」
「……それがちょっと分かりにくい話で」
「どういうことだ……?」

 兄は私の手からトールさんの原稿をとりあげてざっと目をとおす。数枚めくって首をかしげた。

「よく分からない話だが……字が綺麗だ」
「ですよね」
「誰の作品だ? トール・リンロー?」

 サインを見て兄はしばらく考えこむ。

「この人と友達か?」
「……いえ、友人が持ってきたものなので、作者は知らない人です」

 何となく嘘をついた。まさか兄はあのトールとも知り合いだったりするのだろうか。

「誰か知らないが、もっと有名な作家のを読んだらどうだ? もっと普通の……」
「そうですね」
「そのほうが話題にもできるよ」

 兄は原稿を見ながら、しかし綺麗な字だとまた褒めた。
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