豆柴彼女。

ちゃあき

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1話 豆柴の恩返し

3.恩返し

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□□□


「$#♪×■※△∞▼∈・」
「いつもエサをくれるお前には感謝してると言ってます」
「僕、インコにお前呼びされてるの……?」

 豆柴だという彼女に試しにインコのピーとの通訳を頼んでみた。

 通訳と言うか動物側は人間の言葉が大体分かるらしい。主にピーの言葉を伝えてもらう事になった。

 僕にとっては緑のインコの声はいつも通りピーピーという鳴き声にしか聞こえない。

 彼はペットショップでおしゃべりな種類と言われ、覚悟して家に迎えた。けど意外に無口で落ち着いた性格をしてる。その鳴き声さえ無闇に聞くことはなかった。

 贔屓目かも知れないけど、その真っ黒い目と真っ直ぐ伸びた鮮やかな緑の長い尾が知的で優雅にさえ見える。僕はこの子に惚れてるのは確かだ……。

 ——まあそんなこんなで……彼は無口なインコだけど、付き合いは長くて僕の中学時代から一緒に暮らしてる。

 だから彼について大体の事はわかると思う。

 彼女によるとピーは乾燥餌より野菜が好きで、特に茹でたえんどう豆に目がないから、もっと食べさせろと言ってるらしい。

 それから、昨日みたいな雨の日は羽毛の間がむずむずして機嫌が悪いと。

 他には僕が中二の時、家に遊びに来た当時好きだった女の子にピーの話ばかりするのがつまらないという理由で振られた事……。

 ……——合ってる。まさかピーと話せる日が来るなんて思ってもみなかった。

 また一抹の感慨に襲われて鼻の奥がツンとしてしまう。

 まるで走馬灯のように、血眼になってえんどう豆をつつき散らかすピーを少し怖いと感じた日の記憶が蘇ってきた。

「ピー! お前とこんな風に話せるなんて夢みたいだよ」
「∬◆∂※⁂◉&☆〻∝☆∈・」
「気安くお前と呼ぶなとの事です」
「ご、ごめん……」

 どこか座った目をした緑色のインコを前に、僕は込み上げた涙をぬぐった。



□□□



「……恩返し?」
「そうですっ」

 自称豆柴の少女は真っ黒な瞳を輝かせてそう言った。

 まだ少し彼女の正体を疑ってる。でもその変身も通訳も体感してしまった今となっては、何とも言い切れない自分がいる。

 彼女は昨日助けられた事への恩返しがしたいのだと言った。
 ただ拾って連れて帰っただけだから、別に何もいらないと伝えたけど彼女は譲らなかった。

「ツルだって機を織りますし、秋田犬だってご主人を10年待ちます。わたしだって何かしないと気がすまないですっ」

 犬だという割に物知りなんだなと思った。
 彼女は例えば掃除とか洗濯とか……と言ったけど、僕はそう言う家事はマメにやるほうでやってもらえそうな事は特にない。

 掃除はピーのカゴまでやったばかりだし、洗濯は昨日飲みに行くつもりだったから先にやってしまった。大体パンツとか見られるのは恥ずかしい……だから、気にしないでと言ったけど納得してないようだった。

「じゃ、じゃあしょうがないです! かくなる上はこの身体でっ……!」
「え!? 嫌だよ断る」

 こんなひらべったい小犬にそういう興味はない。そんな変態には天罰が下ればいい。若干傷ついた顔をされたけどそれは絶対ご免だった。

 しかしそこまでの決意があるのなら、かえって何かしてもらった方がいいんだろうか……。

「そうだ料理できる? 一緒にお昼ご飯作ってくれないかな」
「い、一度もやった事ないですけどやりたいですっ!」

 大騒ぎしてたら朝食を通り越していつのまにか昼時に近づいていた。

 恩返しになるならと彼女は目を輝かせる。
 一度もやった事がないという発言は気になったけど、僕も見てられる事だしやらせてみてもいいかなと思った。

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