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1話 豆柴の恩返し
4.料理
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……——「じゃがいもありましたっ」
「ありがと」
自分の背とほとんど変わらない高さの陳列棚から袋詰めのじゃがいもを取ってくれる。
それは男爵芋だったんだけど、うれしそうに持ってきたからそのままカゴに入れた。
昼食の準備のため、彼女を連れ近所のスーパーに来ていた。
辛うじて(?)人間の姿の時は服を着ていたが、靴がなかったから、とりあえず近所のホームセンターで買ってあげた。
想像以上に小さい19センチの茶色いブーツで歩き回る姿は、どこかぜんまいのおもちゃみたいだ。
……——彼女に話を聞くと、味噌汁とか焼き魚とか……何だか昭和の猫みたいなものなら食べた事があるらしい。
塩分が濃そうだから少し迷った。犬ってそういう物を食べてもいいんだっけ……?
タマネギやチョコレートなら駄目だとすぐに分かる。でも味付けに関してはプロじゃないから、簡単に判断してはいけないと思った。
だからネットで検索して、犬も食べられる野菜スープというのを見つけて動画を見た。
彼女はiPhoneの小さな画面を食い入るように見つめてた。見終わって、やってみる?と聞くと垂れた短い眉毛の間に皺をよせて大きく頷く。
眉間の皺は不機嫌ではなく、懸命な性格の印なのだろうと気がついた。
「どれにする?」
「……そうですねっ」
かかえて鮭の切り身のパックが並ぶショーケースを見せてあげた。
鶏肉やソーセージはまだ不安があった。だから鮭のスープにしたのだ。
関連動画の"美味しい切り身の見分け方"を食い入るように見てたから、試しに選ばせてみたら生き生きした顔をしてた。
爛々と輝く目も眉間の皺も何だかおかしくて笑いを堪える。納得するまでその棚を見せて、彼女が気に入った一つをまたカゴに加えた。
□□□
「手をグーにして、指を伸ばしたらダメだからね?」
「はいっ」
恐る恐る包丁を持たせてみたら、左手で持ったから驚いた。
間違えたのかと思ったけど、そういえばにんじんの皮をピーラーで剥かせてる時も左手を使ってた。
犬にも利き手があるんだろうか?とにかく、彼女は人間でいう左利きみたいだ。
そんな事を考えてたら、右手はグーにできたけど、包丁を持った左手が振りかぶったから泡を食って制止した。
「そんなに勢いはいらないからね! そっとでいいから、ゆっくり切ってみて」
はいっ、と威勢のいい返事が返ってくる。
見てる前で刃先が野菜の上に戻っていく。小さな手が不器用な乱切りを一度、すとん、と成功させて息をついた。
このペースでいくと、昼食を通り越して夕飯作りをしてる事になりそうだ……。
でも生き生きとにんじんを分割する様子を前にすると何も言えなくなってしまう。
包丁には不安を覚えたから、次は僕が鮭の皮をひいた。毛抜きを渡して骨を取ってもらう。
また眉間に皺をよせて、真剣な表情で切り身の表面をつついていた。
「ありがと」
自分の背とほとんど変わらない高さの陳列棚から袋詰めのじゃがいもを取ってくれる。
それは男爵芋だったんだけど、うれしそうに持ってきたからそのままカゴに入れた。
昼食の準備のため、彼女を連れ近所のスーパーに来ていた。
辛うじて(?)人間の姿の時は服を着ていたが、靴がなかったから、とりあえず近所のホームセンターで買ってあげた。
想像以上に小さい19センチの茶色いブーツで歩き回る姿は、どこかぜんまいのおもちゃみたいだ。
……——彼女に話を聞くと、味噌汁とか焼き魚とか……何だか昭和の猫みたいなものなら食べた事があるらしい。
塩分が濃そうだから少し迷った。犬ってそういう物を食べてもいいんだっけ……?
タマネギやチョコレートなら駄目だとすぐに分かる。でも味付けに関してはプロじゃないから、簡単に判断してはいけないと思った。
だからネットで検索して、犬も食べられる野菜スープというのを見つけて動画を見た。
彼女はiPhoneの小さな画面を食い入るように見つめてた。見終わって、やってみる?と聞くと垂れた短い眉毛の間に皺をよせて大きく頷く。
眉間の皺は不機嫌ではなく、懸命な性格の印なのだろうと気がついた。
「どれにする?」
「……そうですねっ」
かかえて鮭の切り身のパックが並ぶショーケースを見せてあげた。
鶏肉やソーセージはまだ不安があった。だから鮭のスープにしたのだ。
関連動画の"美味しい切り身の見分け方"を食い入るように見てたから、試しに選ばせてみたら生き生きした顔をしてた。
爛々と輝く目も眉間の皺も何だかおかしくて笑いを堪える。納得するまでその棚を見せて、彼女が気に入った一つをまたカゴに加えた。
□□□
「手をグーにして、指を伸ばしたらダメだからね?」
「はいっ」
恐る恐る包丁を持たせてみたら、左手で持ったから驚いた。
間違えたのかと思ったけど、そういえばにんじんの皮をピーラーで剥かせてる時も左手を使ってた。
犬にも利き手があるんだろうか?とにかく、彼女は人間でいう左利きみたいだ。
そんな事を考えてたら、右手はグーにできたけど、包丁を持った左手が振りかぶったから泡を食って制止した。
「そんなに勢いはいらないからね! そっとでいいから、ゆっくり切ってみて」
はいっ、と威勢のいい返事が返ってくる。
見てる前で刃先が野菜の上に戻っていく。小さな手が不器用な乱切りを一度、すとん、と成功させて息をついた。
このペースでいくと、昼食を通り越して夕飯作りをしてる事になりそうだ……。
でも生き生きとにんじんを分割する様子を前にすると何も言えなくなってしまう。
包丁には不安を覚えたから、次は僕が鮭の皮をひいた。毛抜きを渡して骨を取ってもらう。
また眉間に皺をよせて、真剣な表情で切り身の表面をつついていた。
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