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2話 友達がくる
4. 遅刻
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「京の家の動物って大人しいよな。インコも全然鳴かねぇし」
——ちなみに、後になってあずきがピーから聞いた事には、あつしははじめてこの家に来た日も京の目を盗んでピーをレタスで釣ろうと必死になったそうだ。
どうしたのかと聞いたら、無視したと高潔なるインコは嘯いた。
「テンション高い時もあるよ? ねぇあずき」
「ヒャン!」
京はあつしの隣に座り、近くにあったあずきのおもちゃを投げた。あずきは反射的にそれを取りに走った。戻ってくると京が褒めてくれる。うれしくて尻尾をふった。
「……やらして」
「いいよ」
今度は興味なさげな(ふりをしてた)あつしがおもちゃを投げた。あずきはそれを本能で追ってキャッチする。
持って帰ると彼もなでてくれる。悪い気はしないし、怖くもない。最初からこうしてくれれば良かったのにとあずきは思った。
インコもこういうの出来るの? とあつしが聞くので、京がピーも部屋に放した。
ピーは機嫌がいいと少しだけ相手をしてくれる。あずきを抱いておもちゃを投げてみると、今日はツンツンとくちばしで突いた後、細い脚で蹴飛ばし部屋の中の気に入った場所に飛んでいってしまった。
何度かチャレンジする内にあずきが我慢できずに逃げ出した。ピーとおもちゃの取り合いをはじめてしまう。それが面白くて2人してずっとおもちゃを投げていた。
……豆柴とインコにおもちゃを投げてただけなのに、気が付くとなぜか2時間経ってたせいで2人は飲み会に遅刻した。
「行ってくるからね」
「ヒャン!」
玄関を出ようとする二人にあずきは駆け寄って見送る。あつしはじっとあずきを見つめて、またスマホの画面に視線を移しスクロールした。
あまり近付くとポケットに入れられそうな気がして、京の後ろに隠れる。
「……あつしすごい熱烈だったね」
「ヒャ!?」
屈んで靴紐を結ぶ京が振り返って小声で囁いた。
見てたのなら助けてくれれば良かったのにとあずきは思う。自然に眉間に皺が寄る。チワワよろしくプルプルしていたら、京が笑いを堪えるのがありありと分かる。
「じゃ何かあったら電話してね」
リビングに置かれたiPadの使い方は、この間京に教えてもらった。だからあずきは電話と、平仮名だけだがメッセージの送受信もできるようになった。
「その犬電話できんの?」
「……あはは、冗談だよ」
京が茶化すと、あつしはふぅんと興味なさげに返した。
ドアがバタンと閉まる。遠ざかる二人の話し声を聞きながら、突然すさまじい疲労感をおぼえたあずきは横にパタリと倒れた。
ピーが珍しくピョロピョロ鳴く。舎弟たる豆柴を労っているのだとあずきにも分かる。
飼い主の友達は嵐のような人だった。
……——でも、決して悪い人じゃなかった。あずきはしばし心地良い疲れに瞼を閉じた。
——ちなみに、後になってあずきがピーから聞いた事には、あつしははじめてこの家に来た日も京の目を盗んでピーをレタスで釣ろうと必死になったそうだ。
どうしたのかと聞いたら、無視したと高潔なるインコは嘯いた。
「テンション高い時もあるよ? ねぇあずき」
「ヒャン!」
京はあつしの隣に座り、近くにあったあずきのおもちゃを投げた。あずきは反射的にそれを取りに走った。戻ってくると京が褒めてくれる。うれしくて尻尾をふった。
「……やらして」
「いいよ」
今度は興味なさげな(ふりをしてた)あつしがおもちゃを投げた。あずきはそれを本能で追ってキャッチする。
持って帰ると彼もなでてくれる。悪い気はしないし、怖くもない。最初からこうしてくれれば良かったのにとあずきは思った。
インコもこういうの出来るの? とあつしが聞くので、京がピーも部屋に放した。
ピーは機嫌がいいと少しだけ相手をしてくれる。あずきを抱いておもちゃを投げてみると、今日はツンツンとくちばしで突いた後、細い脚で蹴飛ばし部屋の中の気に入った場所に飛んでいってしまった。
何度かチャレンジする内にあずきが我慢できずに逃げ出した。ピーとおもちゃの取り合いをはじめてしまう。それが面白くて2人してずっとおもちゃを投げていた。
……豆柴とインコにおもちゃを投げてただけなのに、気が付くとなぜか2時間経ってたせいで2人は飲み会に遅刻した。
「行ってくるからね」
「ヒャン!」
玄関を出ようとする二人にあずきは駆け寄って見送る。あつしはじっとあずきを見つめて、またスマホの画面に視線を移しスクロールした。
あまり近付くとポケットに入れられそうな気がして、京の後ろに隠れる。
「……あつしすごい熱烈だったね」
「ヒャ!?」
屈んで靴紐を結ぶ京が振り返って小声で囁いた。
見てたのなら助けてくれれば良かったのにとあずきは思う。自然に眉間に皺が寄る。チワワよろしくプルプルしていたら、京が笑いを堪えるのがありありと分かる。
「じゃ何かあったら電話してね」
リビングに置かれたiPadの使い方は、この間京に教えてもらった。だからあずきは電話と、平仮名だけだがメッセージの送受信もできるようになった。
「その犬電話できんの?」
「……あはは、冗談だよ」
京が茶化すと、あつしはふぅんと興味なさげに返した。
ドアがバタンと閉まる。遠ざかる二人の話し声を聞きながら、突然すさまじい疲労感をおぼえたあずきは横にパタリと倒れた。
ピーが珍しくピョロピョロ鳴く。舎弟たる豆柴を労っているのだとあずきにも分かる。
飼い主の友達は嵐のような人だった。
……——でも、決して悪い人じゃなかった。あずきはしばし心地良い疲れに瞼を閉じた。
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