最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

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イルサンは、どこから、どう見ても
猫にしか見えないが、立派な幻獣だ。

「我輩は猫ではない、幻獣だにゃ、名前はイルサン」
「いちいち言わなくてもわかってるさ、イルサン」

「まあ、そういうにゃ、人間」
「人の書物を嗜(たしな)むのが、好きなのはわかるが仕事だ、イルサン」

「かくかくしかじか、○△×□ でなんとか、勝利した」
「にゃるほど にゃるほど にゃ」

幻獣の中には、人間の言葉を理解して
しゃべるだけでなく
文字を覚えてしまい、本を読み漁り
知性が高いのを、ひけらかして
生意気そうに、減らず口を叩いたりする者もいる。

「じゃ、頼んだぞ、イルサン」
「わかったにゃ、みんな報告を、まちわびてるにゃ」

「ああ、急いでくれ」
「では、いってくるにゃ」

「バタ、バタ、バタ、バタ」

イルサンの何もなかったはずの背中に
隠していた翼が現れると
鳥のように力強く、空に向かって、羽ばたき、
あっと言う間に、舞い上がる。

「かっとぶ、にゃ~~~~~~~」

腕を組んで、考え事をしていたラッセルが
空に、何かの気配を感じて、閉じていた眼を開くと
ラヒニの方角へ向かって、翼の生えた猫が
すごい速さで、飛んでいくのが見えた。

「ビューーーーーーーーーン! ☆===」

本国へ、勝利の知らせを届けるために
ガリバルドが早速、翼猫(つばさねこ)のイルサンを
王都に向けて、飛ばしたようだ。

空を飛んで小さくなっていく、翼猫を目で追いながら
ベルナルドの意思を、ガリバルド達に
きちんと伝えると、もう、出来る事が
なくなってしまったので、もっと
根本的な事から、考え直してみようと思ってしまい
今回の決戦に、ついて、いろいろと考えていた。

「王子、決戦にミストラルの援軍は間に合うんですかね?」
「それが、間に合わせるよう要請はしてるそうだが、厳しいな」

「きちんと、お聞きには、なっているんで」
「私は親衛隊の隊長だぞ、聞きはするさ」

「でも、どうするかは、お考えにならないんで」
「もし、私が国王陛下と対立してみろ、王国の揉め事のたねだ」

「すべて、国王陛下や、ガリバルド様と貴族達におまかせになると?」
「貴族達が話し合い、叔父上がまとめ
 必要ならば、王に決断を委ねる、それが、今の王国のやり方だ」

「王太子の出る幕はないと?」
「そうだ、王でもない、私ができる事は、戦いで、剣を振るうだけだな」

「ソフィア様の事は、いいんで?」
「だから親衛隊で、出来る事だけの事はするつもりさ」

「昔からの、知り合いってだけではないのは、皆知ってますぜ」
「昔とは違うんだ、二人とも、もう大人で、互いに立場もある」

「巫女さん側につけば、王子は庶民の味方だ、わからないでもないですがね」
「そうだ、王国のやり方に、私情は持ち込めないな」

「巫女になってから、ソフィア様は、別人のようだって話ですが」
「あの、ラーマーヤ様の後だ、巫女らしく振舞うのに、一生懸命なんだろう」

「本来の自分を隠して、無理してるって」
「それはわかってはいるが、今のところ私の想いは、全て私情だ、そう思っている」

「昔のソフィアさまは、ラヒニの○○○と呼ばれていたのは知ってますぜ」
「ラッセルにだって、いろいろと過去はあるだろ」

「なるほどね」
「なんだ?」

「いや、全てわかりやした、親衛隊の具体的な事は、こちらで引き受けますんで」
「そうしてくれ、ラッセルが、できない事があれば、私に言ってくれ」

「王子は何をなさるんで、いや、聞かなくてもわかりますがね」
「私は、これまでどおり、剣を振る、それが一番落ち着くな」

「お相手は、もう、ご勘弁を」
「別に嫌なら構わないさ、無理強いはしない主義だしな」

「まあ、剣をひたすら振って、そこから学ぶってやつですね」
「昔から、そうして来たんだ、書を読まずとも、そこから全てわかる気はするな」

「まあ、言ってる事は、わかりますぜ」
「そうか、ラッセルと気が合ってよかったよ」

「王子は戦いに、すげえ向いている人だってこともね」
「軍は身分など気にする場所じゃないしな、政治の場より、気は楽だろうな」

「ガハハハハハハハハハ」
「うん、何がおかしいんだ?」

「王さまの言ったとおりだ」
「ラッセルに、国王陛下が何かいったのか?」

「遠慮はするなと、いわれてはおりますぜ」
「そうか、父が言うなら、是非、そうしてくれ」

「そういえば、特別製の、ぶ厚い鎧と盾が、また届いてますぜ」
「ああ、試し切りの依頼か、職人どもも、懲りないやつらだ」

「また、馬鹿正直に、どっちも、一振りで、真っ二つになさるおつもりで」
「向こうも、それなりに真剣なんだ、手加減はできないさ」

ミストラルの援軍が、遅れてしまう問題は
父である国王や、騎士を代表する貴族達が
ずっと話し合ってはいるが、解決策がでないと
ベルナルドから、詳しく、その辺りの事情は聞いている。

ミストラルは、東の大陸諸国との間を結ぶ
交易路の安全を確保するために
侵略者を北へと、押し戻そうとして戦っている事もあり
今回の援軍の要請にも遅れてしまっていた。

「デュラン様、ようやく、援軍を送る準備が、整いました」
「急ぐんだ、すでに、ラーラントへは、使いを送っている」

「アウグスト王が、ステリオ渓谷まで、追い込まれてしまうとは……」
「同盟国の危機だ、決戦には、私、自ら出向く」

「はっ、では、仕度をいたします」
「頼む」

同盟国とは言っても、抱えている事情は異なっていて
重要な、東方の大陸諸国との交易路を
生命線として、守らなければならない
ミストラルに、ラ・ラーランドと同じように
シーザリアと正面から積極的に戦う事を
期待すべきではない事はわかっている。

「はあ、はあ、はあ、アウグスト王、国王陛下!」
「どうしたのだ」

「ミストラルの使いの者が、到着いたしました」
「そうか、今すぐ、ここに通せ」

「はい、しばらくお待ち下さい」

同盟国だからといって、常に援軍は期待できない。

「貴国との同盟に基づき、援軍の要請を謹んで、お受けいたします」
「うむ、援軍の動きがあるだけでも、シーザリアにとっては、圧力となる」

「援軍を率いますのは、我が主君の第一の臣下デュラン侯爵
そして、水の巫女も、含めました魔道師隊も、貴国を支援いたします」
「デュラン殿だけでなく、アリア殿までとは心強い」

「ミストラルは、この決戦に、同盟の下、全軍の総力を持って臨む所存との事です」
「シーザリアが、いつ仕掛けてくるかはわからんが、間に合わせてほしいのだ」

「はっ、国王陛下のお望みを、我が主に必ずや伝えます」
「そうか、頼む」

「では、私も、急ぎ舞い戻り、戦いの仕度をいたします」
「期待している」

「はっ!」
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