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修道女と王都と、花と、死者
今度は逃げない、逃がさない①
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その絵画は薄暗い色使いで、ややぼんやりとしたタッチで描かれており、どことなく静かな、神聖な、『暗い絵』だった。
時刻は昼のか夜なのか、もしくは夜明け前なのかわからない。
ただ、言えるのは、何層も絵の具を重ねたためか、灰色を被せたような色使いで、全てがぼかされていた。
絵の内容は、日常生活の一部なのだろう。
昔からどこにでもありそうな粗末な木製のベッド上で、愛する若い2人、つまり村人らしい男女の一瞬の時間が描かれていた。
窓のない部屋で、薄暗いベッドの上で、裸体同士でお互いの体を抱きしめ合い、白いシーツが泳ぎ、今にも触れそうな唇を、まさにその場で覗き見ているかのような臨場感を醸し出していた。
横顔しか書かれてない女の方は何故か泣いていた。
見物客の誰かが「綺麗だ……」と嘆息していた。
自分しか見れない女の顔に劣情を抱くのは普通だと最近読んだ物語に書いてあった。
男を悦ばせるのは、今、その時、目の前の彼女の足から爪から秘部までの全ては自分の物という、ゆっくりと男の心を埋め尽くしていく薄暗い感情の影だ。
もしかしたら、男なら誰しもがそんな薄暗い気持ちをもっていて、恋人の自分を乞うような、そんな顔がみてみたいのかもしれない。
シーツを汚したシミと同じ色で涙は描かれており、涙も見る方を考えさせる。
何故、彼女は泣いたのか。もしくは、啼いていたのか?
悲しいのか、嬉しいのか。
どのようにも見える、情事の絵だった。
もしかしら、絵の女は粗末な格好をしているが、透けるような白い肌だから、身分を隠した令嬢なのかもしれない。
いや、ほんとうに村娘で病弱なだけで、粗末な家に住み、恋人との逢瀬を重ねる事だけが生きがいなのかもしれない。
絵画は人がいる分だけ解釈は違ってくる。
ただ、言えることは、愛や恋は、嬉しいだけではない、そんな単純な感情でないと語っているようでもあった。
色使いが悲しさを伴うのも、辛い恋が生えるのも、薄暗い雰囲気に惹かれてしまうのも、叶わない恋に惹かれてしまう気持ちがそうさせてしまうのだろうな、とマリーは客観的に、絵を眺めていた。
(私は、この絵のように、愛し合う事はない。けど……)
リシャールの事は好きだ。
彼がこの前の事件でいなくなって、はじめて実感した。
身が張り裂けるような痛みは、さすがに鈍感なマリーでもこれが恋と言うものだと、確信せざる終えなかったのだ。
マリーは自身の恋の行方ははじめから諦めている。
だが、願わくば、未来の世の中は身分や貧富で諦める恋人たちがいなくなるように祈った。
マリーが3月に修道院を後にしてから、時は早くも2か月近く過ぎ去り、5月の中旬。
薔薇が見頃というのは言うまでもなく、毎年行われている絵画コンクールも間近となっていた。
そして数日前から、王都の中心街にある国立美術のホールに最終選考に残った絵画たちが個展のように飾られていた。
マリーは、久しぶりの休日に自身のコンクールに出展した絵を見に行ったのだ。
マリーの絵画は、高い石壁に囲まれた教会と草原と丘と修道女たちが野良仕事をする絵だ。
他の者たちは、宮廷貴族だったり、聖人をモチーフにしたものだったり、異国の景色だったり、まちまちであった。
マリーは絵を見物しながら歩いていると、一際、人盛りができていた暗い部屋の情事の絵で立ち止まり、マリーはなんとなく切なくなったのだった。
作者はきっと愛してる人がいるのだろう。
偽名だったため、女か男かわからないが、その絵に愛する一瞬の時間を閉じ込めていた。
絵の女が泣いているのが綺麗だった。絵の男もそう思っているのだろう。
嬉しそうに僅かに口角を上げていた。生きているような絵だった。
(素敵な絵が並んでいるなぁ。さすが王都)
マリーは、大理石の床をゆっくりと歩きながら、ふと思う。
(そろそろ、帰らなくちゃ)
帰還命令は既に出ている。
魔物件については、残るは数えるほどの魔物だけらしい。
しかし、その中に一筋縄でいかない人物がいるそうで、特に能力のないマリーはお払い箱のようだ。
その人物は、大元の原因らしく、王城の地下にある古代の魔物が封印された本を盗み、魔物をニコルのような魔法の才がある者たちにばら撒いた犯人である。
(夏には修道院に帰る。絶対。……殿下の事もあるし。ここは、私がいつまでも居てはいけない場所だわ。この前は殿下から逃げちゃったけど、しっかりしなきゃ)
リシャールはマリーに再会してから、3日経った。
あの舞踏会から、妙に彼はマリーに接近してきている。
危ない空気を感じたマリーは、逃げるように舞踏会が終わると同時に侯爵邸に帰宅した。
その次の日も、昨日も、用もないのに散歩に誘ってきたり、食事に呼ばれたりした(断れず参加はするが、さりげなく理由をつけて早々と帰宅)。
あのまま行けば、いつにない本気? の彼にお持ち帰りされそうな気がした。
ちなみに、リシャールが帰ったきた次の日に、マリーはテオフィルに呼ばれて話を聞いたのだ。
テオフィルはまずは、サラに関するお礼を言い、昇進試験は合格だと告げた。
後のことは、試験に出来ない内容であるから、テオフィルがフレッドたちと片付けると言っていた。
もう事態は簡単な魔物を封印する程度ではなく、試験の範疇を超えて、危険を伴う特殊任務になっていたのだ。
テオフィルは『何故か、兄さんが続々と魔物回収していてね。あの調子じゃあ、修道院からは封印魔法が使える派遣の修道女とフレッドだけで事足りそうだよ。でもあの兄さんが今更やる気になるなんてね。世の中おかしなことが起きるものだね』と笑っていた。
リシャールは血抜かれ事件で自分が犯人だと疑われることが目に見えていても、事件に対して興味を示さなかったのに、どういう風の吹き回しか、最近は行動は単独だが協力的らしい。とても不可解な話だ。
ただ、事態はもうマリーの関わる案件ではないことは明確だった。
テオフィルは『もし、君に少しでもその気があるならいつまでも居てくれていいんだよ。まぁ、君が決めることだけど。……もし、帰れたらの話だけどね』と意味深な事を言って話は終わったのだ。
(あれは、どういう意味だろう)
帰るも帰らないも、修道女であるマリーがいつまでも侯爵令嬢のフリなんか出来ないし、修道院に帰るのが真っ当な道筋というものだ。
ただ、今すぐ修道院に帰らないのは、絵画のコンクールがまだ終わってないという事と、何も出来ないけれど出来る事なら今回の事件を最後まで見届けたいという気持ちが強いからだ。
このまま、中途半端に、何もせずに、リシャールの力で昇進して、修道院に帰るなんて事はできない。
ユートゥルナにも、コンクールが終わる頃まで滞在したいと手紙を書いたところ、それ以上の期限を延ばさない事を条件に承諾してもらったのだ。
(綺麗にお別れしなきゃ)
はじめから決めていたことだった。
それがせめてもの、マリーなりのリシャールに対する愛だった。
(大丈夫きっと、できる)
失恋とも違う、恋の終わりだ。
この前みたいに逃げない。いや、今までずっと逃げてきたのだ。
出会いから今の今みで、ずっと。
たまに少しだけ向き合っても、リシャールにはぐらかされて、あやふやのまま来たのだ。
ちゃんと話し合えば、あのリシャールも追いかけては来ないだろう。
身体の関係は最後まで結ばないつもりだ。ただ一度も。
どんなに名残惜しくても淡い綺麗な恋で、関係で終わらせるのだ。
数年後、いや数十年後に、優しい気持ちでアルバムを見るような思い出として終わりたい。
それがマリーの願いだった。
時刻は昼のか夜なのか、もしくは夜明け前なのかわからない。
ただ、言えるのは、何層も絵の具を重ねたためか、灰色を被せたような色使いで、全てがぼかされていた。
絵の内容は、日常生活の一部なのだろう。
昔からどこにでもありそうな粗末な木製のベッド上で、愛する若い2人、つまり村人らしい男女の一瞬の時間が描かれていた。
窓のない部屋で、薄暗いベッドの上で、裸体同士でお互いの体を抱きしめ合い、白いシーツが泳ぎ、今にも触れそうな唇を、まさにその場で覗き見ているかのような臨場感を醸し出していた。
横顔しか書かれてない女の方は何故か泣いていた。
見物客の誰かが「綺麗だ……」と嘆息していた。
自分しか見れない女の顔に劣情を抱くのは普通だと最近読んだ物語に書いてあった。
男を悦ばせるのは、今、その時、目の前の彼女の足から爪から秘部までの全ては自分の物という、ゆっくりと男の心を埋め尽くしていく薄暗い感情の影だ。
もしかしたら、男なら誰しもがそんな薄暗い気持ちをもっていて、恋人の自分を乞うような、そんな顔がみてみたいのかもしれない。
シーツを汚したシミと同じ色で涙は描かれており、涙も見る方を考えさせる。
何故、彼女は泣いたのか。もしくは、啼いていたのか?
悲しいのか、嬉しいのか。
どのようにも見える、情事の絵だった。
もしかしら、絵の女は粗末な格好をしているが、透けるような白い肌だから、身分を隠した令嬢なのかもしれない。
いや、ほんとうに村娘で病弱なだけで、粗末な家に住み、恋人との逢瀬を重ねる事だけが生きがいなのかもしれない。
絵画は人がいる分だけ解釈は違ってくる。
ただ、言えることは、愛や恋は、嬉しいだけではない、そんな単純な感情でないと語っているようでもあった。
色使いが悲しさを伴うのも、辛い恋が生えるのも、薄暗い雰囲気に惹かれてしまうのも、叶わない恋に惹かれてしまう気持ちがそうさせてしまうのだろうな、とマリーは客観的に、絵を眺めていた。
(私は、この絵のように、愛し合う事はない。けど……)
リシャールの事は好きだ。
彼がこの前の事件でいなくなって、はじめて実感した。
身が張り裂けるような痛みは、さすがに鈍感なマリーでもこれが恋と言うものだと、確信せざる終えなかったのだ。
マリーは自身の恋の行方ははじめから諦めている。
だが、願わくば、未来の世の中は身分や貧富で諦める恋人たちがいなくなるように祈った。
マリーが3月に修道院を後にしてから、時は早くも2か月近く過ぎ去り、5月の中旬。
薔薇が見頃というのは言うまでもなく、毎年行われている絵画コンクールも間近となっていた。
そして数日前から、王都の中心街にある国立美術のホールに最終選考に残った絵画たちが個展のように飾られていた。
マリーは、久しぶりの休日に自身のコンクールに出展した絵を見に行ったのだ。
マリーの絵画は、高い石壁に囲まれた教会と草原と丘と修道女たちが野良仕事をする絵だ。
他の者たちは、宮廷貴族だったり、聖人をモチーフにしたものだったり、異国の景色だったり、まちまちであった。
マリーは絵を見物しながら歩いていると、一際、人盛りができていた暗い部屋の情事の絵で立ち止まり、マリーはなんとなく切なくなったのだった。
作者はきっと愛してる人がいるのだろう。
偽名だったため、女か男かわからないが、その絵に愛する一瞬の時間を閉じ込めていた。
絵の女が泣いているのが綺麗だった。絵の男もそう思っているのだろう。
嬉しそうに僅かに口角を上げていた。生きているような絵だった。
(素敵な絵が並んでいるなぁ。さすが王都)
マリーは、大理石の床をゆっくりと歩きながら、ふと思う。
(そろそろ、帰らなくちゃ)
帰還命令は既に出ている。
魔物件については、残るは数えるほどの魔物だけらしい。
しかし、その中に一筋縄でいかない人物がいるそうで、特に能力のないマリーはお払い箱のようだ。
その人物は、大元の原因らしく、王城の地下にある古代の魔物が封印された本を盗み、魔物をニコルのような魔法の才がある者たちにばら撒いた犯人である。
(夏には修道院に帰る。絶対。……殿下の事もあるし。ここは、私がいつまでも居てはいけない場所だわ。この前は殿下から逃げちゃったけど、しっかりしなきゃ)
リシャールはマリーに再会してから、3日経った。
あの舞踏会から、妙に彼はマリーに接近してきている。
危ない空気を感じたマリーは、逃げるように舞踏会が終わると同時に侯爵邸に帰宅した。
その次の日も、昨日も、用もないのに散歩に誘ってきたり、食事に呼ばれたりした(断れず参加はするが、さりげなく理由をつけて早々と帰宅)。
あのまま行けば、いつにない本気? の彼にお持ち帰りされそうな気がした。
ちなみに、リシャールが帰ったきた次の日に、マリーはテオフィルに呼ばれて話を聞いたのだ。
テオフィルはまずは、サラに関するお礼を言い、昇進試験は合格だと告げた。
後のことは、試験に出来ない内容であるから、テオフィルがフレッドたちと片付けると言っていた。
もう事態は簡単な魔物を封印する程度ではなく、試験の範疇を超えて、危険を伴う特殊任務になっていたのだ。
テオフィルは『何故か、兄さんが続々と魔物回収していてね。あの調子じゃあ、修道院からは封印魔法が使える派遣の修道女とフレッドだけで事足りそうだよ。でもあの兄さんが今更やる気になるなんてね。世の中おかしなことが起きるものだね』と笑っていた。
リシャールは血抜かれ事件で自分が犯人だと疑われることが目に見えていても、事件に対して興味を示さなかったのに、どういう風の吹き回しか、最近は行動は単独だが協力的らしい。とても不可解な話だ。
ただ、事態はもうマリーの関わる案件ではないことは明確だった。
テオフィルは『もし、君に少しでもその気があるならいつまでも居てくれていいんだよ。まぁ、君が決めることだけど。……もし、帰れたらの話だけどね』と意味深な事を言って話は終わったのだ。
(あれは、どういう意味だろう)
帰るも帰らないも、修道女であるマリーがいつまでも侯爵令嬢のフリなんか出来ないし、修道院に帰るのが真っ当な道筋というものだ。
ただ、今すぐ修道院に帰らないのは、絵画のコンクールがまだ終わってないという事と、何も出来ないけれど出来る事なら今回の事件を最後まで見届けたいという気持ちが強いからだ。
このまま、中途半端に、何もせずに、リシャールの力で昇進して、修道院に帰るなんて事はできない。
ユートゥルナにも、コンクールが終わる頃まで滞在したいと手紙を書いたところ、それ以上の期限を延ばさない事を条件に承諾してもらったのだ。
(綺麗にお別れしなきゃ)
はじめから決めていたことだった。
それがせめてもの、マリーなりのリシャールに対する愛だった。
(大丈夫きっと、できる)
失恋とも違う、恋の終わりだ。
この前みたいに逃げない。いや、今までずっと逃げてきたのだ。
出会いから今の今みで、ずっと。
たまに少しだけ向き合っても、リシャールにはぐらかされて、あやふやのまま来たのだ。
ちゃんと話し合えば、あのリシャールも追いかけては来ないだろう。
身体の関係は最後まで結ばないつもりだ。ただ一度も。
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