10 / 17
ヤンママ達
しおりを挟む
まずは8人もの保護者がベルマーク係を希望し所定の位置に集まった。
しかし係の枠はたったの2名。別の係に回った方が早いと判断した8人の内5人は他の係、お遊戯会係や餅つき係等の席へと散っていった。マッスル幼稚園に我が子を入園させたとは言え、皆が皆好戦的な訳ではないのである。
しかし残りの3名――ユウくんママ、子沢山、美魔女――は根を生やした様に動かない。
ベルマーク係の他に、巨大かぼちゃ収穫遠足係、お遊戯会係、餅つき係が人気の様である。
横尾教諭がマイク片手に進行する。
「見た所バザー係と運動会係が定員割れしている様ですが、そちらに移って頂ける方はいらっしゃいませんか?」
教諭が促すが、保護者達は頑なに席を立とうとしない。
「では皆様には今から5分間、話し合いをして頂きます。それでも決定しなければ、先程園長が申した通りマッスルのぶつかり合いを行います」
それぞれの場所で、ボソボソと相談が始まった。ベルマーク係の席では主に美魔女が発言している。
「私は譲らないわよ。それにしてもあなた方、そんなスーツ着てマッスルをぶつけ合う気があるのかしら?」
「どうしてもベルマーク係が良いんです……」
ユウくんママは俯き加減で、蚊の鳴くような声で呟く。
「私も……他のはどれも、負担が大きそうで……」
子沢山も、眠った双子を抱えてやっとの事で返事をする。
場が膠着したまま5分が経過しようとしていた。
するとひらめ組保護者らの背後にて大きな歓声があがり、講堂にいる全員がそちらに注目した。多くの視線の先では壮絶なる空中戦が繰り広げられている。さんかく組の、巨大かぼちゃ収穫遠足係を巡っての争いだった。
宙に浮いて激しい攻防を展開している二人は、両者共に似たような格好をしている。目の周りはアイシャドウで濃く縁取られ、パーマの当てられたまつ毛は羽ばたけそうな程長く揺らめいている。根元だけ黒い髪に色素の抜けた薄い茶褐色の毛髪を振り乱し、バックにヘローキ○ィがプリントされた、一方がド派手なショッキングピンク、もう一方がエメラルドグリーンのジャージを着用、足元はこれまたヘロー◯ティ柄のサンダルを履いた、いわゆるヤンママ同士の戦いであった。
「琉詩増くんママ、ガンバでーす!!」
「艶貝ちゃんママ、ファイトでーす!!」
戦友からの熱い声援が飛び交う。
天使と堕天使の戦闘を目にした周囲の者達は皆、一様なる考えを抱いた。
――ルシフェルくんにエンジェルちゃんか……あまりお近づきになりたくないなぁ……
ユウくんママや子沢山は口をあんぐり開けて目を剥いた。
――ナニコレ……どういう原理で浮いてんの⁈
しかし周りの反応を見るに、マッスル界においては空中戦の存在など周知の事実であるらしかった。
――ここは私のいるべき世界ではない……。
二人は三たび自分の運命を呪った。かと言って、ベルマーク係を譲りたくもなかった。
ステージ上に設えた長椅子に悠然と腰掛け成り行きを見守っている園長は、一人ほくそ笑んだ。
あの年で空中浮遊をなし得るとは……ふふ……今年の新入園児保護者は豊作だわ……
空中浮遊術……それは左右の膝下を高速でパタパタさせる事で上昇気流を生み出し自らの身体を宙に留める、特に下腿三頭筋及びアキレス腱の柔軟性・持久力が必要な高難易度の技である。
しかし係の枠はたったの2名。別の係に回った方が早いと判断した8人の内5人は他の係、お遊戯会係や餅つき係等の席へと散っていった。マッスル幼稚園に我が子を入園させたとは言え、皆が皆好戦的な訳ではないのである。
しかし残りの3名――ユウくんママ、子沢山、美魔女――は根を生やした様に動かない。
ベルマーク係の他に、巨大かぼちゃ収穫遠足係、お遊戯会係、餅つき係が人気の様である。
横尾教諭がマイク片手に進行する。
「見た所バザー係と運動会係が定員割れしている様ですが、そちらに移って頂ける方はいらっしゃいませんか?」
教諭が促すが、保護者達は頑なに席を立とうとしない。
「では皆様には今から5分間、話し合いをして頂きます。それでも決定しなければ、先程園長が申した通りマッスルのぶつかり合いを行います」
それぞれの場所で、ボソボソと相談が始まった。ベルマーク係の席では主に美魔女が発言している。
「私は譲らないわよ。それにしてもあなた方、そんなスーツ着てマッスルをぶつけ合う気があるのかしら?」
「どうしてもベルマーク係が良いんです……」
ユウくんママは俯き加減で、蚊の鳴くような声で呟く。
「私も……他のはどれも、負担が大きそうで……」
子沢山も、眠った双子を抱えてやっとの事で返事をする。
場が膠着したまま5分が経過しようとしていた。
するとひらめ組保護者らの背後にて大きな歓声があがり、講堂にいる全員がそちらに注目した。多くの視線の先では壮絶なる空中戦が繰り広げられている。さんかく組の、巨大かぼちゃ収穫遠足係を巡っての争いだった。
宙に浮いて激しい攻防を展開している二人は、両者共に似たような格好をしている。目の周りはアイシャドウで濃く縁取られ、パーマの当てられたまつ毛は羽ばたけそうな程長く揺らめいている。根元だけ黒い髪に色素の抜けた薄い茶褐色の毛髪を振り乱し、バックにヘローキ○ィがプリントされた、一方がド派手なショッキングピンク、もう一方がエメラルドグリーンのジャージを着用、足元はこれまたヘロー◯ティ柄のサンダルを履いた、いわゆるヤンママ同士の戦いであった。
「琉詩増くんママ、ガンバでーす!!」
「艶貝ちゃんママ、ファイトでーす!!」
戦友からの熱い声援が飛び交う。
天使と堕天使の戦闘を目にした周囲の者達は皆、一様なる考えを抱いた。
――ルシフェルくんにエンジェルちゃんか……あまりお近づきになりたくないなぁ……
ユウくんママや子沢山は口をあんぐり開けて目を剥いた。
――ナニコレ……どういう原理で浮いてんの⁈
しかし周りの反応を見るに、マッスル界においては空中戦の存在など周知の事実であるらしかった。
――ここは私のいるべき世界ではない……。
二人は三たび自分の運命を呪った。かと言って、ベルマーク係を譲りたくもなかった。
ステージ上に設えた長椅子に悠然と腰掛け成り行きを見守っている園長は、一人ほくそ笑んだ。
あの年で空中浮遊をなし得るとは……ふふ……今年の新入園児保護者は豊作だわ……
空中浮遊術……それは左右の膝下を高速でパタパタさせる事で上昇気流を生み出し自らの身体を宙に留める、特に下腿三頭筋及びアキレス腱の柔軟性・持久力が必要な高難易度の技である。
0
あなたにおすすめの小説
あなたの幸せを祈ってる
あんど もあ
ファンタジー
ルイーゼは、双子の妹ローゼリアが病弱に生まれたために、「お前は丈夫だから」と15年間あらゆる事を我慢させられて来た。……のだが、本人は我慢させられていると言う自覚が全く無い。とうとう我慢のしすぎで命の危機となってしまい、意図せぬざまぁを招くのだった。
ドアマットだと自覚してないドアマット令嬢のお話。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる