四つ葉のクローバー

たんぽぽ。

文字の大きさ
7 / 10

7

しおりを挟む
 部屋にわたしは男と一緒に座っている。男はうつろな表情で、目の前のちゃぶ台には空の湯呑みが一つ。

「晶?」
「……あぁ」
わたしは服を脱ぐ。晶は驚いている、当然のことだけれど。わたしは構わず脱ぎ続ける。彼は何も言わずただわたしを見ている。

 そしてわたしは下着だけの姿になって、晶に微笑んだ。
「早く抱いてよ」
「……」
晶は動かない。仕方がないので彼ににじり寄り、彼の手を取って自分の胸に、下着の上から押し当てた。それでも動かない。わたしは下着を全て脱いで、彼を畳に押し倒す。彼は抵抗しない。

「いいから抱きなさい」
晶に馬乗りになってわたしは言う。晶はされるがままだ。
「……お前、誰だ?」
うるさいので晶の唇を唇で塞いだ。やっと彼はわたしの背中に腕を回してごろりと横に回転し、わたしを下にした。ほらね、男なんて。

 わたしは数年ぶりで男とそれをしたが、勘を取り戻すのは簡単だった。アパートの壁が薄いらしく隣人の咳払いが聞こえたけれど、構わずわたしは声を上げた。とろとろに溶けて、めちゃくちゃに混じり合うまで、わたし達は――。



✳︎



 夕食はお通夜みたいだった。夕食と言っても、白いご飯とインスタントの味噌汁と沢庵しかないけれど。
「ごめん、疲れてるからこれだけ」
「……食欲無いから別にいい」
会話もこれだけ。私も孝一もお互い目を合わせない。

 シャワーを浴びてすぐに布団に入った。何かを考えるのには疲れ過ぎていた。孝一は襖を隔てた隣の部屋でまだ起きている。

 長年恐れていた事が起きてしまった、よりによってこんなタイミングで。

 孝一は勘付いているようだし、勘付いた事を私が気付いた事も知っているみたいだ。弁当箱が孝一の鞄に入ったままだと思い出したが、再び起きて洗う気力もなかった。

 目覚めたら全てが解決していたら良いのにと都合の良い事を思いながら、私は眠りに落ちた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母、雪江は大学教授であり、著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...