生徒会長の包囲

きの

文字の大きさ
2 / 9

2 いつもの朝

しおりを挟む
 

朝6時。目が覚める。
いつも通り、憂鬱な気分で登校の準備をする。
学校に行くの、嫌だな。
どうせ僕なんか休んでも何の影響もないし…。

そんな事を思いながらも、登校の時間は刻一刻と迫ってくる。

家を出て行きざまに、ちょうど起きてきた妹にはちあわせた。

「お兄ちゃん、もう学校?行ってらっしゃい」
「……いって、きます……」

妹、咲妃さきは5年生だ。
僕より年下でありながらも、僕よりしっかりしている。皆からの信頼も厚く、生徒会のような存在である児童会に入っているらしい。
思ったことははっきりいうが、人の心を気遣うことが出来る、優しい子だ。

差別なんかもしないから、こんなだめだめな兄にもちゃんと接してくれる。
こんな兄でごめんね。



家から出ると、僕の家の塀に寄りかかっている長身の男子が目に入る。
幼なじみであり生徒会長の、西園寺さいおんじゆうだ。

「さく、おはよう」
「おはよう、悠」
「うん。さくは今日も早いね。一緒行こう」
「……うん」

ワンテンポ置いて返事をする僕に、イラつかずにちゃんと会話してくれる悠は、本当に優しいと思う。
なんで学校ではあんなに冷たい人間として過ごしているのか、疑問だな。



僕の名前は花園はなぞの朔太さくた
『さく』というのは、悠が僕につけたあだ名。
小さい頃はお互いに『ゆうちゃん』『さくちゃん』と呼んでいたが、小学校では『悠』、中学に上がってからは『西園寺』と苗字呼びに変わっていった。
というのも、小学校の頃から悠の人気は絶大で、一時期はみんな悠のことを名前呼びしていたが、悠は「馴れ馴れしく名前で呼ぶな、不快」と怒ってしまってから、僕含め苗字呼びに変わった。

だけど、僕だけは何故か、名前呼びを許してくれたんだ。
それで周りの反感を買ってしまって、ちょっといじめられたりもしてたっけ。
そんな僕を知ってか知らずか、悠は僕と仲良くするからいじめは酷くなっていって。


僕は悠と絡むのも嫌になり、また『西園寺』呼びに戻ってしまった。


西園寺、と、呼んだ時の、彼の顔。
酷く悲しそうな、でもどこか怒ってもいた表情を一瞬見せたあと、すぐに目に涙を溜めて
「俺のこと、嫌いになったの?」
とか言い出して。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ループ執愛症候群~初対面のはずなのに、執着MAXで迫られてます~

たぴおか定食
BL
事故で命を落とした高校生は、乙女ゲームの世界に貴族の少年、ルルスとして転生する。 
穏やかな生活を送っていたある日、出会ったのは、宮廷魔導師の息子のノアゼル。 
彼は初対面のはずのルルに涙ながらに言う…「今度こそ、君を守る。」 ノアは、ルルがゲームの矯正力により何度も命を落とす未来を繰り返し経験していた。 
そのたびにルルを救えず、絶望の中で時を遡ることを選び続けた。 「君がいない世界なんて、いらない」 
愛と執着を抱えた少年は、何度でもルルを取り戻す。 これは、転生した能天気なルルと、そんな彼に執着するノアが織りなす、激重タイムリープファンタジー。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

イケメンな先輩に猫のようだと可愛がられています。

ゆう
BL
八代秋(10月12日) 高校一年生 15歳 美術部 真面目な方 感情が乏しい 普通 独特な絵 短い癖っ毛の黒髪に黒目 七星礼矢(1月1日) 高校三年生 17歳 帰宅部 チャラい イケメン 広く浅く 主人公に対してストーカー気質 サラサラの黒髪に黒目

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

処理中です...