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3 ネガティブ
しおりを挟む嫌ってないと言っても信じてくれないので、仕方なくいじめの件に絡めて説明した。
そしたら少し事情が分かったみたいだった。
だけど、
「分かったよ。でも、苗字呼びはやめて」
とお願いしてきた。
涙目でお願いされたら『悠が涙目なのは、いじめられているのも、全部僕のせいなんじゃないか』と考えてしまって少し胸が痛む。
しかし急にまた呼び方を帰るのも僕の心がついていけず、いじめがおさまるまでは苗字呼び、ということにした。
悠は少し、不服そうだったけど。
結局、僕のめんどくさい性格も相まって、みんなが僕を避けたり悪口を言ったりするのは卒業まで終わらなかった。
高校になったら悠ともみんなとも会うことは減るだろうし、最後の方はもうどうでも良くなってたんだけど。
卒業すれば全部終わるとか思ってた。
悠は僕なんかとは比べ物にならない程頭がいいから、高校で別れるはず、そう信じ込んでいた。
……でも、卒業後。僕がなんとか合格した第一志望の高校に、悠も入学する事を知った。
驚いて声も出ない僕に一言。
『もうさくのこといじめる奴らとも離れたし、名前呼びに戻ってもいいんじゃない?』
悠の学力なら、難関私立高校でも入学出来たはず。しかし、何故か標準ほどの学力の高校に入学してきた悠。
その行動が、僕は不思議でたまらなかった。
「悠、は、もっとレベル高い高校に行けたはずだよ……何で、同じとこに」
悠は笑顔のまま答えない。
「しかも、『名前呼びに戻る』って…もう苗字呼びが自分の中で定着したから、別にいいじゃん………」
そう言うと、少し、悠の瞳に影が落ちたような気がした。
少し考えたような間を置き、悠は口を開く。
「高校の件について…俺も、私立に行けって言われたけど、断ったよ。さくと同じ高校じゃないときっと楽しくないし、それにまた、昔みたいに名前呼びされたいしね」
一歩一歩、近付いてくる彼。
僕は、こんなに寒気のする笑顔を貼り付けた悠は、知らない。
「そうだよ…僕が、両親や先生達…色んな人の期待を裏切って、レベルの低い高校に入ったのは、さくのせいだから」
狂ったような笑い声を零しながら、僕に近付く悠。
思わず後ずさりするけど、足の長さですぐに詰められた。
僕がなんとか合格した高校を馬鹿にした言い方だった。けど、僕はそこまで頭が回らなかった。
……僕のせい?
訳もわからず目の前の悠を見上げると、また彼は口を開く。
「さくは、わかんないだろうね。自分がどれだけ俺の人生に影響を与えているか」
にっこり、微笑む悠。
頭がぐるぐるする。
「わかん、ないよ…わかんない………」
"僕が、両親や先生達…色んな人の期待を裏切って、レベルの低い高校に入ったのは、さくのせいだから"
「……僕の、せい?」
悠の言葉が、ゆっくりと頭を侵食していく。
ぐるぐると回って、思考が働かない。
「そうだよ、全部全部さくのせい。さくが全部悪い」
追い打ちをかけるように悠が言葉を重ねる。
どんどん頭の中は真っ白になっていき、呼吸が荒れてきた。
落ち着かないと、と思っても、呼吸はさらに荒れていくばかり。
僕のせい、僕のせい、ぼくのせい、ぼくの、、
ただもう、それしかなかった。
悠は、僕のせいで、自分の未来を棒に振ったの?僕は一体何をしたの?
僕のすぐ前に立っていた悠が、僕を抱きしめた。思わずビクッと体を震わせてしまう。
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