花屋の息子

きの

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14 馬車の中で

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馬車に暫く揺られて数十分。
いつの間にか草原の景色は途切れ、石畳の街が先に見えてきた。
荒く整備されていた土の道よりも、少しボコボコでも整備された石畳の方がおしりへのダメージが少ない気がする。


「ここはパニュールという街で、城下町だ。活気があってすごくいい街なんだ」

「そうなんですね」

「もう少しで城に着く」


乗りなれない、というより初めて乗った馬車に俺のおしりが悲鳴をあげている。
正直めちゃくちゃ疲れた。
ここまでずっと背筋を伸ばしてノエルさんの話に相槌を打ってきたけれど……少しくらい息抜いてもいいかな?


ふぅ…と息を吐き、ちょっとだけ馬車の壁に寄りかかる。これだけでも少し楽になる。
目を瞑るとじーんとするのがわかった。それはそう、今までに見慣れない景色をずっと見てきたんだから、そりゃ目も疲れるよな…。
目を瞑って休息しようとしたんだけど、目の前の人が急に慌ただしく動き始めた気がする。
なんかわたわたしてる。


「ど、どうしたイオリ。きついのか。大丈夫か?」


声色からは心配の気持ちが聞いてとれて、急に休み始めたの失敗だったかな…って思った。


「や、ちょっと、流石に疲れたので少し肩の力を抜こうかと。失礼でしたらすみません」

「なんだそうか。ごめんな、気遣ってやることが出来なくて。好きなように休憩してくれ、城に着いたら嫌でも疲れがたまる」

「ありがとうございます」


優しい人だな…。
それならお言葉に甘えて、ともう一度息をつこうとすると、向かいの存在が動く気配がして目を開いた。
ノエルさんが腰を上げ、俺の方に座ろうとしてきていたのだ。


「な、なに、なんですか」

「そちらに傾いてばかりいてもきついだろ。逆の方にも寄りかかってもいいようにな」

「えっと……………………ありがとうございます」


いい笑顔で俺の方に身を寄せるノエルさんだが、いや、無理無理。
初対面の超イケメンに肩貸してもらって寝るとかそんなことできない。そこまで神経図太くない。


「あぁ、近付くとわかるが、お前はいい匂いがするな…香料じゃない、安らぐ香りだ」

「そそそそそそうですか…」


嗅ぐな嗅ぐな、勝手に頭と首筋に顔を寄せんでほしい。
嗅ぐために近付いてきたノエルさんもまた、いい匂いだ。きつくなくふわっと香る程度だけど、清潔感のあるいい香り…って、俺もちょっと変態っぽいか?

嗅がれるのを止めることも出来ずに首をすくませていたけど、やがて笑い声とともにノエルさんは顔を離した。


「そんなに固まらないでくれ。ほら、もう顔を離すから、休んで欲しい」

そういうと彼は目を瞑った。
彫刻みたいな顔は微動だにせず、ただ外から入ってくる陽の光を受け止めて神々しく光っている。
思わず見つめ…まぶたが開く瞬間も見た。


「イオリが俺を見るなら、俺もイオリを見てもいい?」


なんて言うから。


「だ、だめっ!」


急いで顔を逸らした。
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