ひもにーと

のるむ

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第一章 エンプティーランプティー

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 2132年、この世界はIDP(ideal drawing paper)の開発により大きな革命期を迎えた。
ケンフリッチャ大学魔法科を首席で卒業した現在Ph.Dのハスキンス。
若干12歳にして数魔術という革新的なアイディアをあらゆる学会誌に掲載され、注目を浴びていた、羽曳野桜。
この2人が CSA(concentration singular arts)と scatter elemental limit の関係性に関する共同研究の中で開発したのが数魔術系入力デバイスIDPである。
元来、数魔術というのは、サイレンス(静寂)を消耗し、イデア論に端を発する意識の深層構造の具象化、呼吸法、マントラ詠唱、指書等の手順を踏むことにより現実世界に干渉する。
このため全ての人々が利用できる能力ではなく、数、技、心という三要素に対する親和性、才能を必要としていた。
しかし羽曳野が開発したIDPはこの問題点を解消し、あらゆる人々が学ぶことにより、知を得ることで三要素を統一的に向上させることを可能にした。
なおかつ数魔術使用に必要となるサイレンスの消耗を削減、そしてその手順を大幅に簡約化することに成功した。
こうした研究結果は直ぐに世界へと広まり、各地の研究者、技術者がハスキンス、羽曳野の元に押し寄せた。
ハスキンス、羽曳野はこの研究成果、技術が軍事利用されることによる世界平和の崩壊について警鐘を促した。
そして技術の根幹部であるサクラパッチを公開することはしなかった。
特に羽曳野は、数魔術は人類の生活をよりよくするために向上が続けられるものであり、軍事利用に転化するものであってはならないという彼女独自の哲学感があった。
しかし、ハスキンスは巨大企業からの利便供与により癒着し、技術の一部を漏洩してしまった。
こうした周囲の研究者に嫌気がさし、彼女は学会から姿を消したのである。
そして第一世代IDPを製品化、軍事利用で多額の利益を上げた、ボストンのIDPメーカー センチネルに今もなお羽曳野は追われている。

ということらしい。
ちなみにこれは妹の羽曳野冬香から聞いた。
正直、未だ信じているかといれば、信じていない。
この芋虫みたい這いつくばっている小娘(俺と年近いけど)にそんな過去があったなんて。

「お兄さん。眠いよー。ねーむーい。だーるーい。堅あけポテチのブラックペッパー食べたいなあ。」

冬香は対面式キッチンの向こうでカレーを作ってくれている。
フレッシュな素材を手際よく火を通している音色
挽きたてのスパイスが油の中で互いにしっくりと馴染んでいる香り。
があればいいのだが、ただのレトルトである。
シンクに立ったとき、正面に壁がなく、リビングやダイニングと対面するキッチン。
作業しながら会話を楽しみたい人などに向いているであろう間取り。
いい家に住んでるなと感心する。

「冬香、ちょっといいか。」
「はい。何ですか。」
「つまり、俺は数魔術とやらで過去から未来へと引っ張りだされたと。」
「はい。」
「で、その理由は桜が何となく、暇で、何となく寂しいからだと。」
「……そうです。」

少し間があったのが気になったが、正直呆れてものも言えない。

「なんもねーじゃねーかああああああ。」
「あと、伝えておいてませんでしたが。私たち三姉妹です。一番の上の姉はもうすぐ帰宅するはずです。」

ん…。姉だ…と。
俺いつもろりろり言ってるけど、実は結構年上も好きなんだよねぇ。
だいたい2次元ならロリ、3次元なら姉派なんだよな。
どんなお姉ちゃんなのかなあ。
ゲーセンを「不良のたまり場」という時代錯誤な思い込みをしていて、世情に疎い面があって、時代劇好きで骨董品を眺めるのが好きで趣味は渋い。
それでいて、運動神経抜群で成績も優秀であり、弱みはないように見えるが、犬が大の苦手。
こんなお姉ちゃんがいいなあ。

「ん、帰ってきたようですね。」

玄関のドアが開き、ドタドタと足音を立て居間に何者かが侵入してきた。

「ひひひ、我が名はアーククイーン、エンプティーランプティーが1人、黒煙を纏いし女帝…。
。因果に縛られし、少年よ。ごきげんよう。」

ひひひ、と俺も吹き出しそうになった。


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