追放、転生、完璧王子は反逆者!!!

ぱふもふ

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第三章反逆王子

反逆

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<ネリーキア城 謁見の間>

「面を上げよヴァロワ公。」

「はっ!」

エラクレスは、今、父であるネリーキア王フェンネ2世の前に居た。周りには沢山の貴族も居た。呼ばれたのはエラクレスだけなのでエカとメリアはいない。

(今日…だったけ?年内最後の諸侯会議って…。しかも珍しく宰相のネルキンじゃなくて親父が自分ではなしてる。)

「手紙は読んだ。狼王と獅子王がネリーキア王国との友好を願いヴァロワ公爵の付き添いのもと王都を訪れることも。」

「ははっ!」

「して…獅子王リチャード殿は娘のメリアとそなたの婚姻を願ってきている。」

「なんですと!?」

「そんな…。」

「何を考えておるのだ。」

「王家の血筋をひく者と言えど今は辺境の一臣下の身…。」

集まっていた貴族達は騒がしくなった。エラクレスは笑みを浮かべながらチラッとフェンネとラントの顔を見た。

フェンネは必死で怒りを抑えているように見えるが、抑えられない怒りによってを目に見えて顔を真っ赤に染めて体を震わせていた。

一方のラントは済まし顔をしていたが、彼の手には親指の爪が食い込み血が流れていた。

(ざまあみろ!)

「静粛に!まだ陛下は発言を許してはおられんぞ!」

騒ぐ貴族達に一際響く声がした。

(宰相ネルキンか…流石に知っていたのか?一切動揺や怒りが見えない。)

事が重大なだけにフェンネ2世が有力な貴族である彼に相談したことは容易に想像できた。

「で…狼王に至っては自らの夫として迎えたいとある。」


「「「…………。」」」

「そして……ここが……問題、というよりこの書全てが問題まみれなのだが、ここがその中でも一番の問題だ。狼王、獅子王の両者共にヴァロワ公爵の獣王即位を望んでおる。北方の獣人全ての獣王にな…。」

「な、なんですと!」

流石に我慢できなかったのか一人の貴族が声を上げた。するとそれを止めるどころか更に声を上げる者が出て来た。

公爵が獣王に?!」

は絶対に悪い意味でのだろう。

「追放された者なのに…。」

「公爵の領地は獣人の侵略を受けたのではなかったのか。」

「それどころか従えた可能性も高い。」

「一体何者なんだ…ヴァロワ公爵は…。」

そこでフェンネ2世は片手を上げて喚く貴族達を静かにさせた。

「さて、聞いての通りこれは大きな事である。よって余はこの年末に急遽諸侯会議を招集した。皆の活発な議論と正しき結論を期待する。」

「さあ、何か意見のある者は居らんか?」

そこまで言って今度はフェンネ二世ではなくネルキンが会議の進行をするようだ。

「ありえん……」

「殿下…」

「ありえん…」

「殿下…ここは堪えてください…。」

「いいや、こんな事がまかり通ってはならん!」

「殿下…」

「父上!発言の許可を願います!」

遂に第一王子フェンネが声を上げた。騒いでいた貴族達がシーンと静かになる。

「殿下、どうぞ。発言をしてください。」

フェンネ2世に代わって宰相ネルキンが許可した。

(本来よっぽどのことでもない限り国王が自らべちゃくちゃと喋ることはないから宰相が代わりにやるんだけど今回はそのよっぽどの事だったからな。)

「私はエラクレスの婚姻にも獣王への即位にも反対します!」

(多分この展開はこの場にいる誰もが想定していたと思うぞ。)

「ほほう、それでは殿下には皆が納得できるような理由をご説明していただきたい。」

「例え獣もどき共の王と言えど王であります!王とは高貴な血筋をひく者にこそ相応しい!このネリーキア王国の公爵とは言え、下賤な平民の娘の子では不相応と言うものでありましょう!」

フェンネは捲し立てるように言い放った。相当鬱憤が溜まっていたのだろう。

(なるほどな…フェンネらしい。まあ、前世のせいで血筋と言われても最初はよく分からなかったが、今では血筋というのはこの貴族社会では馬鹿にならないどころか、絶対的な要素だということは理解している。って、その前に『獣もどき』とは…どういう事かな?)

「そうだ!その通り!」

「高貴な者にこそ相応しい!」

フェンネの派閥の貴族はこぞって賛成する。

「しかし義兄上!そうなれば両国の面目を潰し、国交の断絶、最悪は戦争までありえますぞ!」

それに反論したのは第二王子ラントだった。

(まあ、当然のことを言っているだけだな。それでも格式や身分の差があるこの世界では当然のことを当然のように言えないのであるが…。ラントの派閥はネリーキア王国最大の派閥だけに全国に派閥の構成員が散らばっているため、その構成員の領地が荒れるのなら離反を防ぐために派閥を挙げて救援に向かわねばならないため、戦争はなるべく避けねばならない…と考えている。そういえばシャルルは?えっと…何か話してる?)

エラクレスは側近とコソコソ話すシャルルを見て盗み聞きしたくなった。

(身体強化っと。なになに?)

「なぜ、フェンネ殿下に同調なさらなかったのですか?」

「いや、だって…ラント義兄上怖い…。」

「あなたはフェンネ殿下の実の弟なのですぞ、兄を助けこの国とエカルム王国の両国のためになる働きをせねばなりません。」

「でもでも…」

(シャルルらしい優柔不断さだな。側近はフェンネの息のかかった者で、フェンネ派閥主催の茶会とか舞踏会とか行かされているため必然的にラントからの圧力がかかるわけだ。)

「ふん!臆したかラント!戦争が何だと言うか!向こうが戦争を望むのなら受けて立つのみだ!そもそも我々は奴らの属国ではない!それが何故!奴らの武威に屈して要求を飲まねばならん!随分と派手な格好で王都には来たが、所詮見掛け倒しだろう?!高貴なネリーキア貴族が本当の戦を見せてやろう!」

…とこれがラントの反論に対するフェンネの反論だった。

「加えて一つ…よろしいか?」

そこでフェンネの隣のに居た中年の男が進み出た。

(あいつは…ストラス辺境伯の…ジョシュアだっけ?)

ネリーキア王国の北の守りがノース辺境伯なら東の守りはストラス辺境伯だ。エカルム王国との国境を接しており、かつてのネリーキア・エカルム戦争で一番酷い目にあった貴族である。

(外交力に優れて今日のネリーキアとエカルムの関係を構築するのに一番尽力して貴族だな。まあ、それをやったのは領地で病状が悪化して死にかけている先代のシャルルだけど……クソ…文明も中世ヨーロッパだからと言って名前のバリエーションも中世ヨーロッパ並である必要ないのに。揃いも揃って同じ名前してやがる。ああ!たしか親父とエカルムの王女の婚姻を勧めたのもそいつだったな、そしてフェンネの派閥で最も強力だ。聞いたところでは自身や傘下の貴族たちにエカルム王国の貴族たちとの婚姻を推奨しているようだ。)

「獅子王国は我が盟友エカルム王国の敵対関係にある国家である。これと婚姻を結ぶのは、先人達が我らのために残してくださった平和への苦労をすべて消し去るも同然!断じて受け入れるべきではない!」

かなり強く反対を示した。

(コイツからしたら北での騒乱など自領が巻き込まれないからどうでも良いんだろうな~。よし、戦争になったらさり気なくゴブキンを送り込んでやる。)

「ぬう…確かにエカルム王国と戦争をするのもマズイ…。そもそも狼人と獅子人は本当に盟約を結ぶ価値があるのか?」

(親好が薄いせいで、狼王国と獅子王国は信頼がないか…。このままではラント派も反対だろうな。)

それからしばらくの間フェンネ、ラントの両者の派閥で熱の籠もった議論が展開され、エラクレスは放置された。

そして議論の末…

『エカルム王国を刺激しないように狼王国とだけ婚姻は受け入れよう(エラクレスがとは言っていない)。』

…という方針に落ち着こうとしていた。

「ふむ、あらかた意見は出尽くしたようですな。それでは私からも一つ発言をさせていただきます。」

遂に沈黙を保っていた宰相ネルキンが動いた。

「ヴァロワ公爵にお伺いしますが、公爵自身は此度の件いかがお考えでしょうか?」

その言葉で放置されていたエラクレスに両者の派閥から視線が集中する。

(もし、転生した時の俺だったら間違えなく兄を恐れて婚姻を断っただろう…。だが、出発の前に言った通り、狼人、獅子人、領民、配下の魔物、レオ兄とその仲間達…俺はもう…逃げるにはいろいろ背負い過ぎた。だから!答えは決まっている!)




「私自身、現在両国とは友好関係を築いておりますので婚姻は受け入れたいと考えております。」




「「「!!!!!!!」」」

そう言った途端謁見の間は騒然となった。

「いかに領地が不毛の地ではなかったとは言え…」

「派閥にも属さぬ者が…」

「狼王国と獅子王国の両国の後押しがあるとは言え…。」

「フェンネ殿下派閥とエカルム王国を敵にするようなことを…。」

貴族たちは口々に囁やき合った。

「な、何を馬鹿なことを!き、貴様は!エカルム王国との友好をなんだと思っておるのだ!」

当然フェンネはブチギレた。彼としてはもし獅子王国とネリーキア王国の友好関係が構築されればエカルム王国の王女の母とその血をひく自身の王位継承権を完全否定され追放されるかもしれないからだ。

(まあ、フェンネを追い落とすのはラント派閥も賛成だろうからな。ネルキンの手腕なら『友好国の王族』という完全防備が剥がれたフェンネくらい、かつて俺を追放したくらいにこなすだろう。)

「卑賤な貴様にはわからんだろうな!高貴な王族同士の崇高な盟約という物が!北方の辺境の片隅で獣もどき共と交流をもつ程度とは比べ物にならないくらいに重いものだ!」

「殿下の仰るとおり!十やそこらの小童に何がわかる!?」

「公爵とは言えカネに汚い商人の小僧めが!」

「平民まがいな貴様に相応しい封土を与えたのにまだ足りないか!?」

「そもそも我ら高貴なネリーキア貴族たるものが獣風情と対等なわけがなかろう!」

フェンネの言葉に追従したストラス辺境伯ジョシュアら貴族が次々に非難をぶつける。第一王子という威光に守られているとは言え、国王の面前でここまで罵声を言えるのは国王の権威の失墜をよく現している。

(だんだん追い詰められて取り繕う余裕がなくなったな。単純な悪口が増えている。俺を卑賤な奴と罵るのは一向に構わん。まあ、実際前世では口に物を含んだまま喋るくらい行儀が悪かったし。だが、遂に言いやがったぞ…コイツラ…『獣』だと…。)


エラクレスはキレた。




(もうこいつらと話すことはなにもない。)




「陛下!」


声を張り上げる。怒りのあまり身体強化は使い忘れたが、それでも数多の罵声を押しのけた。

言うことは唯一つ…。





「御免!」




それだけ言ってエラクレスはその日の内に王都を去った。

一夜の間に大軍が消えたことに貴族たちは驚き、不気味がったが、そのナゾを解くことよりもこれから起きるであろう騒乱への思考が優先された。


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