【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜

松浦どれみ

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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

33、王都の夜3

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「や、やっぱり、斬新すぎましたか?」

 エルが不安げにこちらの様子を伺っている。ハッと我にかえり、オリビアが首を横に振った。

「いいえ! 美味しいわ、とても。ただ……ジュエリトスでは馴染みのない味付けなはずだから驚いたの。ねえふたりとも」

「はい! とっても美味しいです」

「うまいうまい。まあ俺はもう少し甘口でもいいね」

「良かった! 実は材料は行商人から断りきれずに買った遠い国の香辛料でして。これでダメだったらどうしようかと思ってたんです」

 エルが心の底から安堵した表情で息を漏らす。相当高値で売りつけられたようだ。

「本当に美味しいわ。好き嫌いは分かれるけど、固定ファンがつく味よ。自信持って!」

「ありがとうございます!」

 前髪で見えにくいが彼の目は細く弧を描き、口角は上がり、口元から歯を覗かせている。間違いなく今日一番の笑顔だった。リタが今にもとろけそうな緩み切った表情をしている。

 三人はデザートまでしっかりいただき、エルに王都の美味しい店をいくつか聞いて彼の店を後にする。

「エル、今日はご馳走様」

「こちらこそ、ありがとうございました。家族の手伝いもあって不定期オープンですが、またぜひいらしてください」

「ええ、また来るわね」

「あ、リビー様。この店のさらに奥の通りには入らないように気をつけてください。治安が悪いので護衛がいても危険です」

「ありがとう、気をつけるわ」

「はい! それではリタ様、ジョージ様もお気をつけて」

「ありがとな」

「まままま、また来ます!」


 エルは深々とお辞儀をして、三人の後ろ姿をいつまでも、姿が完全に見えなくなるまで見送った。
 その後、すぐに店の看板の明かりを消し、店内にしまいこんだ。外はまだ食堂や飲み屋を梯子する客たちで賑わっているが、彼は出入り口の鍵を内側から閉める。

 そして……。

「オリビア・クリスタル……。いきなり当たりを見つけたな」

 少し野暮ったい前髪をかき上げ、グラスに葡萄酒を注ぐ。深い赤紫色のグラスには先程までエルと呼ばれていた男が、怪しくも美しい笑顔で映りこんでいた。

>>続く
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