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第八章 決戦!ペリドット領
193、悲しき再会
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馬車を降り娼館に辿り着いたオリビア。ジョージが先頭になって中に入る。そこには父ジョセフと娼館の店主オリーブがいた。憔悴しきった様子の彼女は店の入り口に虚うつろな視線を向けた。
「ジョージ、小娘ちゃんたちも……来てくれたんだね」
「姐さん」
「オリーブさん、この度は……お悔やみ申し上げます」
ジョージはふらついているオリーブの肩を抱き支え、オリビアは彼女に深々と頭を下げた。やつれ具合から、被害者カタリーナのことを可愛がっていたのが容易に想像できた。
「姐さん、カタリーナはどこに?」
「二階の部屋さ。最後に、会ってやってよ」
か細い声で返事をするオリーブ。オリビアは父に一礼してジョージと彼女のうしろをついて歩いた。
「ここさ、入ってちょうだい」
オリーブがある部屋の前で立ち止まり、静かにドアを開ける。
「失礼します」
部屋の中に入ると、ベッドに少女が眠っていた。オリビアはジョージたちと彼女を囲む。
「綺麗だろう? 今朝方は雨だったから、化粧をし直してやったのさ。着ているのはお気に入りの外出用ドレス。まるで眠ってるみたいで……」
泣き崩れるオリーブ。ジョージが彼女を近くの椅子に座らせた。彼は膝をつき、オリーブに視線を合わせる。
「姐さん。俺、カタリーナに誕生日プレゼントを買ったんだ。渡してもいいかい?」
「ああ、きっと喜ぶよ」
ジョージは箱からプレゼントを取り出した。大小の真珠と金でできた花のモチーフのブローチだった。それをカタリーナのドレスの胸元につけ、優しく語りかける。
「カタリーナ、もうすぐ誕生日だったもんな。これは俺からのプレゼントだ。金欠だけどけっこう奮発したんだぜ、かわいい妹分のためだから……」
「ジョージ……」
カタリーナの手を取り、下唇を噛み肩を震わせるジョージ。オリビアは彼の背中に手を当てゆっくりとさすった。すやすやと眠っているかのようなカタリーナ。残念ながら彼女が起きることはもうない。なぜ平和なクリスタル領でこんな痛ましい事件が起きてしまったのか。オリビアは溢れそうになる涙を抑え、ボヤける視界を瞬きでごまかした。
「昨日、カタリーナは『客の忘れ物を届ける』と言って出て行ったんだ。変わった客だってわかっていたのに、あたしは引き止めも一緒について行ってもあげなかった。この子が死んだのは、あたしのせいさ……」
そう言って再びオリーブは涙を流し嗚咽した。ジョージが彼女に向き直り、首を横にふる。
「そんな、姐さんのせいじゃない。悪いのはこんなことした犯人だ」
その言葉に、オリーブは「そうだ」とハッとしたように反応し、ポケットを探って何かを出した。ハンカチで包んでいたそれをオリビアたちに見せてくる。
「これ、犯人の手がかりだと思う。カタリーナが口の中に入れていたんだ。きっと犯人に取られないよう、口に隠したんだ」
「こ、これは!」
開いたハンカチの中には、指輪と黒い布の端切れがあった。オリーブが話を続ける。
「この黒い生地は、昨日カタリーナが相手をした客が着ていたローブのものだと思う。あのときは気づかなかったけど、たぶん、ハイランドシープだ。指輪は……小娘ちゃん、どう思う?」
オリーブの問いかけに、オリビアは指輪を手に取った。大きな青い石。金でできた指輪。裏には貴族家と思われる紋章。石にもこの紋章にも、オリビアは心当たりがった。
「この石は、ラピスラズリ。それに紋章も……ラピスラズリ家のもので間違い無いかと」
>>続く
「ジョージ、小娘ちゃんたちも……来てくれたんだね」
「姐さん」
「オリーブさん、この度は……お悔やみ申し上げます」
ジョージはふらついているオリーブの肩を抱き支え、オリビアは彼女に深々と頭を下げた。やつれ具合から、被害者カタリーナのことを可愛がっていたのが容易に想像できた。
「姐さん、カタリーナはどこに?」
「二階の部屋さ。最後に、会ってやってよ」
か細い声で返事をするオリーブ。オリビアは父に一礼してジョージと彼女のうしろをついて歩いた。
「ここさ、入ってちょうだい」
オリーブがある部屋の前で立ち止まり、静かにドアを開ける。
「失礼します」
部屋の中に入ると、ベッドに少女が眠っていた。オリビアはジョージたちと彼女を囲む。
「綺麗だろう? 今朝方は雨だったから、化粧をし直してやったのさ。着ているのはお気に入りの外出用ドレス。まるで眠ってるみたいで……」
泣き崩れるオリーブ。ジョージが彼女を近くの椅子に座らせた。彼は膝をつき、オリーブに視線を合わせる。
「姐さん。俺、カタリーナに誕生日プレゼントを買ったんだ。渡してもいいかい?」
「ああ、きっと喜ぶよ」
ジョージは箱からプレゼントを取り出した。大小の真珠と金でできた花のモチーフのブローチだった。それをカタリーナのドレスの胸元につけ、優しく語りかける。
「カタリーナ、もうすぐ誕生日だったもんな。これは俺からのプレゼントだ。金欠だけどけっこう奮発したんだぜ、かわいい妹分のためだから……」
「ジョージ……」
カタリーナの手を取り、下唇を噛み肩を震わせるジョージ。オリビアは彼の背中に手を当てゆっくりとさすった。すやすやと眠っているかのようなカタリーナ。残念ながら彼女が起きることはもうない。なぜ平和なクリスタル領でこんな痛ましい事件が起きてしまったのか。オリビアは溢れそうになる涙を抑え、ボヤける視界を瞬きでごまかした。
「昨日、カタリーナは『客の忘れ物を届ける』と言って出て行ったんだ。変わった客だってわかっていたのに、あたしは引き止めも一緒について行ってもあげなかった。この子が死んだのは、あたしのせいさ……」
そう言って再びオリーブは涙を流し嗚咽した。ジョージが彼女に向き直り、首を横にふる。
「そんな、姐さんのせいじゃない。悪いのはこんなことした犯人だ」
その言葉に、オリーブは「そうだ」とハッとしたように反応し、ポケットを探って何かを出した。ハンカチで包んでいたそれをオリビアたちに見せてくる。
「これ、犯人の手がかりだと思う。カタリーナが口の中に入れていたんだ。きっと犯人に取られないよう、口に隠したんだ」
「こ、これは!」
開いたハンカチの中には、指輪と黒い布の端切れがあった。オリーブが話を続ける。
「この黒い生地は、昨日カタリーナが相手をした客が着ていたローブのものだと思う。あのときは気づかなかったけど、たぶん、ハイランドシープだ。指輪は……小娘ちゃん、どう思う?」
オリーブの問いかけに、オリビアは指輪を手に取った。大きな青い石。金でできた指輪。裏には貴族家と思われる紋章。石にもこの紋章にも、オリビアは心当たりがった。
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