212 / 230
第八章 決戦!ペリドット領
213、戦場へ
しおりを挟む
オリビアがリアムと抱き合って安らいでいると、背後から咳払いが聞こえた。エヴァが目を覚ましたのかと警戒し、牢の入り口を覗く。そこにはセオの姿があった。
「セオ! やっぱりあなたは捕まらずに済んだのね!」
「オリビア様、ご無事でなによりです。本当に、間に合ってよかった……」
「ありがとう。あなたとリアム様のおかげよ」
セオに笑顔を向けると、彼は悔しそうに眉を寄せ首を横に振った。
「いいえ。私がもっと警戒し、しっかりしていれば、オリビア様を攫われることなどなかったはずです。お守りできず、怪我までさせてしまい申し訳ございません!」
「セオのせいではないわ。それにこうして私は無事であなたに感謝しているの。それを否定するようなこと言わないでちょうだい」
「オリビア様……」
眉間を開きハッとしたような表情が返ってくる。オリビアはセオに向かって、片目を閉じ白い歯を見せイタズラに笑んだ。
「さあ、リタとジョージも捕まっているし、ペリドット伯爵が傭兵に応援を頼むと言っていたわ。早くここを脱出しましょう!」
「はい!」
そう言ってオリビアはセオ、リアムと目を合わせ頷きあう。直後に体がふわりと浮いた。見上げると、恋人の顔が随分と近いところにある。
「よし、少し急いだほうがいいな。オリビア嬢は私が」
「かしこまりました。ペリドット夫人は私が」
リアムの言葉に、セオが返事をしてペリドット夫人を肩に担いだ。彼女は意識を失ったまま、手足はしっかりと拘束されていた。
「オリビア嬢、少し揺れると思う。口は閉じて舌を噛まないように」
「はい!」
「隊長、私が先に出ます!」
オリビアはリアムに抱えられながらセオの背中を追った。捕らわれているであろうリタとジョージを救出するために。
オリビアが拘束されていた牢屋の一つ上の階にリタがいた。自分と同様に拘束されていたが怪我はなかった彼女を見て安堵する。セオが牢の鍵を壊す。リアムに下ろしてもらい駆け寄ると、セオにもらった小さなナイフで縄を切った。
「オリビア様! よかったご無事で……」
「リタ、あなたも無事でよかった。リアム様とセオが助けてくれたのよ」
リタとオリビアはしっかりと抱き合い、お互いの無事を喜び合う。リタがリアムとセオに深くお辞儀をして礼を言うと、キョロキョロと周りを見渡した。
「おふたりとも、救っていただきありがとうございます。あの、アイツは?」
「ジョージも助けないと。行きましょう!」
先ほどと同じようにセオ先頭で上の階に上がる。一番奥の牢にジョージがいた。オリビアは彼の姿を見て動揺し、両手で口を覆った。
「ジョージ!」
「お嬢様……よかった、無事、だったんすね。リタも……」
「おい! 大丈夫かジョージ!」
リタがジョージに駆け寄ったのを見て、オリビアも急いで彼の元へ。ナイフで拘束を解く。彼は丁重に扱われなかったらしい。打撲で目元や口元が赤青く腫れている。足元にはバケツが転がっており、ジョージの髪や衣類が濡れていた。
「ジョージ、どうしてこんなひどいことに?」
「お嬢様、泣いちゃダメっすよ。あんたの泣き顔は全然かわいくないんで」
ジョージが軽口を叩き笑おうとして痛みに顔を歪める。オリビアの視界が涙で滲んだ。
「バカ! そんなこと言っている場合じゃないでしょう!」
「へいへい、すいません……」
「ジョージ、すぐに傷を治そう」
いつもの態度が痛々しいジョージの前に、リアムが立つ。オリビアが見守る中、彼は魔法でたちまちにジョージの怪我を全て治した。顔から腫れや変色が消えたオリビアの護衛は、主人の恋人に深く礼をした。
「アレキサンドライト公。私のために貴重な魔法を使っていただきありがとうございます」
「気にすることはないさ。帰りの戦闘では力を借りるぞ」
「はい!」
こうして全員揃ったチーム・オリビア。まずはこの別棟から抜け出そうと階段を駆け下り、出口に向かった。
「待っていたよ、諸君」
「ペリドット伯爵!」
外に出ると、護衛を引き連れたペリドットの姿が。さらには傭兵の集団も並んでいる。最後尾の黒ローブ以外は、全員武器を所持していた。
「おやおや、リアム・アレキサンドライト様ではありませんか? あなたほどの大物が出てきて証言されるとこちらに不利だ。全員、別棟崩落の事故で亡くなっていただなくては……行け!!」
ペリドットの言葉に従い、敵たちはオリビアたちに武器を構え襲ってくる。リアムがオリビアをリタの隣に下ろした。
「リタ、オリビア嬢を頼む」
「はい、承知いたしました!」
リタにオリビアのことを託したリアム。彼はオリビアの身長に合わせて身を屈めた。
「オリビア嬢、ここで待っていてくれ。すぐに戻るよ」
「はい。リアム様、お気をつけて」
大勢の敵を前に不安がオリビアを襲う。リアムが強いのはわかっているが心配だった。痛めつけられたジョージのこともちらつく。その気持ちに気づいたのか、彼は深緑の瞳を細め微笑んだ。
「行ってくる」
恋人の頬を大きな手でひと撫でし、敵に向かい走るリアム。その姿を見逃すまいと、オリビアは彼の背中を必死に目で追い続けた。
>>続く
「セオ! やっぱりあなたは捕まらずに済んだのね!」
「オリビア様、ご無事でなによりです。本当に、間に合ってよかった……」
「ありがとう。あなたとリアム様のおかげよ」
セオに笑顔を向けると、彼は悔しそうに眉を寄せ首を横に振った。
「いいえ。私がもっと警戒し、しっかりしていれば、オリビア様を攫われることなどなかったはずです。お守りできず、怪我までさせてしまい申し訳ございません!」
「セオのせいではないわ。それにこうして私は無事であなたに感謝しているの。それを否定するようなこと言わないでちょうだい」
「オリビア様……」
眉間を開きハッとしたような表情が返ってくる。オリビアはセオに向かって、片目を閉じ白い歯を見せイタズラに笑んだ。
「さあ、リタとジョージも捕まっているし、ペリドット伯爵が傭兵に応援を頼むと言っていたわ。早くここを脱出しましょう!」
「はい!」
そう言ってオリビアはセオ、リアムと目を合わせ頷きあう。直後に体がふわりと浮いた。見上げると、恋人の顔が随分と近いところにある。
「よし、少し急いだほうがいいな。オリビア嬢は私が」
「かしこまりました。ペリドット夫人は私が」
リアムの言葉に、セオが返事をしてペリドット夫人を肩に担いだ。彼女は意識を失ったまま、手足はしっかりと拘束されていた。
「オリビア嬢、少し揺れると思う。口は閉じて舌を噛まないように」
「はい!」
「隊長、私が先に出ます!」
オリビアはリアムに抱えられながらセオの背中を追った。捕らわれているであろうリタとジョージを救出するために。
オリビアが拘束されていた牢屋の一つ上の階にリタがいた。自分と同様に拘束されていたが怪我はなかった彼女を見て安堵する。セオが牢の鍵を壊す。リアムに下ろしてもらい駆け寄ると、セオにもらった小さなナイフで縄を切った。
「オリビア様! よかったご無事で……」
「リタ、あなたも無事でよかった。リアム様とセオが助けてくれたのよ」
リタとオリビアはしっかりと抱き合い、お互いの無事を喜び合う。リタがリアムとセオに深くお辞儀をして礼を言うと、キョロキョロと周りを見渡した。
「おふたりとも、救っていただきありがとうございます。あの、アイツは?」
「ジョージも助けないと。行きましょう!」
先ほどと同じようにセオ先頭で上の階に上がる。一番奥の牢にジョージがいた。オリビアは彼の姿を見て動揺し、両手で口を覆った。
「ジョージ!」
「お嬢様……よかった、無事、だったんすね。リタも……」
「おい! 大丈夫かジョージ!」
リタがジョージに駆け寄ったのを見て、オリビアも急いで彼の元へ。ナイフで拘束を解く。彼は丁重に扱われなかったらしい。打撲で目元や口元が赤青く腫れている。足元にはバケツが転がっており、ジョージの髪や衣類が濡れていた。
「ジョージ、どうしてこんなひどいことに?」
「お嬢様、泣いちゃダメっすよ。あんたの泣き顔は全然かわいくないんで」
ジョージが軽口を叩き笑おうとして痛みに顔を歪める。オリビアの視界が涙で滲んだ。
「バカ! そんなこと言っている場合じゃないでしょう!」
「へいへい、すいません……」
「ジョージ、すぐに傷を治そう」
いつもの態度が痛々しいジョージの前に、リアムが立つ。オリビアが見守る中、彼は魔法でたちまちにジョージの怪我を全て治した。顔から腫れや変色が消えたオリビアの護衛は、主人の恋人に深く礼をした。
「アレキサンドライト公。私のために貴重な魔法を使っていただきありがとうございます」
「気にすることはないさ。帰りの戦闘では力を借りるぞ」
「はい!」
こうして全員揃ったチーム・オリビア。まずはこの別棟から抜け出そうと階段を駆け下り、出口に向かった。
「待っていたよ、諸君」
「ペリドット伯爵!」
外に出ると、護衛を引き連れたペリドットの姿が。さらには傭兵の集団も並んでいる。最後尾の黒ローブ以外は、全員武器を所持していた。
「おやおや、リアム・アレキサンドライト様ではありませんか? あなたほどの大物が出てきて証言されるとこちらに不利だ。全員、別棟崩落の事故で亡くなっていただなくては……行け!!」
ペリドットの言葉に従い、敵たちはオリビアたちに武器を構え襲ってくる。リアムがオリビアをリタの隣に下ろした。
「リタ、オリビア嬢を頼む」
「はい、承知いたしました!」
リタにオリビアのことを託したリアム。彼はオリビアの身長に合わせて身を屈めた。
「オリビア嬢、ここで待っていてくれ。すぐに戻るよ」
「はい。リアム様、お気をつけて」
大勢の敵を前に不安がオリビアを襲う。リアムが強いのはわかっているが心配だった。痛めつけられたジョージのこともちらつく。その気持ちに気づいたのか、彼は深緑の瞳を細め微笑んだ。
「行ってくる」
恋人の頬を大きな手でひと撫でし、敵に向かい走るリアム。その姿を見逃すまいと、オリビアは彼の背中を必死に目で追い続けた。
>>続く
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
君を探す物語~転生したお姫様は王子様に気づかない
あきた
恋愛
昔からずっと探していた王子と姫のロマンス物語。
タイトルが思い出せずにどの本だったのかを毎日探し続ける朔(さく)。
図書委員を押し付けられた朔(さく)は同じく図書委員で学校一のモテ男、橘(たちばな)と過ごすことになる。
実は朔の探していた『お話』は、朔の前世で、現世に転生していたのだった。
同じく転生したのに、朔に全く気付いて貰えない、元王子の橘は困惑する。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】
古森きり
恋愛
前世は少食だったクリスティア。
今世も侯爵家の令嬢として、父に「王子の婚約者になり、次期王の子を産むように!」と日々言いつけられ心労から拒食気味の虚弱体質に!
しかし、十歳のお茶会で王子ミリアム、王妃エリザベスと出会い、『ガリガリ令嬢』から『偏食令嬢』にジョブチェンジ!?
仮婚約者のアーク王子にも溺愛された結果……順調に餌付けされ、ついに『腹ペコ令嬢』に進化する!
今日もクリスティアのお腹は、減っております!
※pixiv異世界転生転移コンテスト用に書いた短編の連載版です。
※ノベルアップ+さんに書き溜め読み直しナッシング先行公開しました。
改稿版はアルファポリス先行公開(ぶっちゃけ改稿版も早くどっかに公開したい欲求というものがありまして!)
カクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェ、ツギクル(外部URL登録)にも後々掲載予定です(掲載文字数調整のため準備中。落ち着いて調整したいので待ってて欲しい……)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる