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第八章 決戦!ペリドット領

213、戦場へ

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 オリビアがリアムと抱き合って安らいでいると、背後から咳払いが聞こえた。エヴァが目を覚ましたのかと警戒し、牢の入り口を覗く。そこにはセオの姿があった。

「セオ! やっぱりあなたは捕まらずに済んだのね!」

「オリビア様、ご無事でなによりです。本当に、間に合ってよかった……」

「ありがとう。あなたとリアム様のおかげよ」

 セオに笑顔を向けると、彼は悔しそうに眉を寄せ首を横に振った。

「いいえ。私がもっと警戒し、しっかりしていれば、オリビア様を攫われることなどなかったはずです。お守りできず、怪我までさせてしまい申し訳ございません!」

「セオのせいではないわ。それにこうして私は無事であなたに感謝しているの。それを否定するようなこと言わないでちょうだい」

「オリビア様……」

 眉間を開きハッとしたような表情が返ってくる。オリビアはセオに向かって、片目を閉じ白い歯を見せイタズラに笑んだ。

「さあ、リタとジョージも捕まっているし、ペリドット伯爵が傭兵に応援を頼むと言っていたわ。早くここを脱出しましょう!」

「はい!」

 そう言ってオリビアはセオ、リアムと目を合わせ頷きあう。直後に体がふわりと浮いた。見上げると、恋人の顔が随分と近いところにある。

「よし、少し急いだほうがいいな。オリビア嬢は私が」

「かしこまりました。ペリドット夫人は私が」

 リアムの言葉に、セオが返事をしてペリドット夫人を肩に担いだ。彼女は意識を失ったまま、手足はしっかりと拘束されていた。

「オリビア嬢、少し揺れると思う。口は閉じて舌を噛まないように」

「はい!」

「隊長、私が先に出ます!」

 オリビアはリアムに抱えられながらセオの背中を追った。捕らわれているであろうリタとジョージを救出するために。

 オリビアが拘束されていた牢屋の一つ上の階にリタがいた。自分と同様に拘束されていたが怪我はなかった彼女を見て安堵する。セオが牢の鍵を壊す。リアムに下ろしてもらい駆け寄ると、セオにもらった小さなナイフで縄を切った。

「オリビア様! よかったご無事で……」

「リタ、あなたも無事でよかった。リアム様とセオが助けてくれたのよ」

 リタとオリビアはしっかりと抱き合い、お互いの無事を喜び合う。リタがリアムとセオに深くお辞儀をして礼を言うと、キョロキョロと周りを見渡した。

「おふたりとも、救っていただきありがとうございます。あの、アイツは?」

「ジョージも助けないと。行きましょう!」

 先ほどと同じようにセオ先頭で上の階に上がる。一番奥の牢にジョージがいた。オリビアは彼の姿を見て動揺し、両手で口を覆った。

「ジョージ!」

「お嬢様……よかった、無事、だったんすね。リタも……」

「おい! 大丈夫かジョージ!」

 リタがジョージに駆け寄ったのを見て、オリビアも急いで彼の元へ。ナイフで拘束を解く。彼は丁重に扱われなかったらしい。打撲で目元や口元が赤青く腫れている。足元にはバケツが転がっており、ジョージの髪や衣類が濡れていた。

「ジョージ、どうしてこんなひどいことに?」

「お嬢様、泣いちゃダメっすよ。あんたの泣き顔は全然かわいくないんで」

 ジョージが軽口を叩き笑おうとして痛みに顔を歪める。オリビアの視界が涙で滲んだ。

「バカ! そんなこと言っている場合じゃないでしょう!」

「へいへい、すいません……」

「ジョージ、すぐに傷を治そう」

 いつもの態度が痛々しいジョージの前に、リアムが立つ。オリビアが見守る中、彼は魔法でたちまちにジョージの怪我を全て治した。顔から腫れや変色が消えたオリビアの護衛は、主人の恋人に深く礼をした。

「アレキサンドライト公。私のために貴重な魔法を使っていただきありがとうございます」

「気にすることはないさ。帰りの戦闘では力を借りるぞ」

「はい!」

 こうして全員揃ったチーム・オリビア。まずはこの別棟から抜け出そうと階段を駆け下り、出口に向かった。

「待っていたよ、諸君」

「ペリドット伯爵!」

 外に出ると、護衛を引き連れたペリドットの姿が。さらには傭兵の集団も並んでいる。最後尾の黒ローブ以外は、全員武器を所持していた。

「おやおや、リアム・アレキサンドライト様ではありませんか? あなたほどの大物が出てきて証言されるとこちらに不利だ。全員、別棟崩落の事故で亡くなっていただなくては……行け!!」

 ペリドットの言葉に従い、敵たちはオリビアたちに武器を構え襲ってくる。リアムがオリビアをリタの隣に下ろした。

「リタ、オリビア嬢を頼む」

「はい、承知いたしました!」

 リタにオリビアのことを託したリアム。彼はオリビアの身長に合わせて身を屈めた。

「オリビア嬢、ここで待っていてくれ。すぐに戻るよ」

「はい。リアム様、お気をつけて」

 大勢の敵を前に不安がオリビアを襲う。リアムが強いのはわかっているが心配だった。痛めつけられたジョージのこともちらつく。その気持ちに気づいたのか、彼は深緑の瞳を細め微笑んだ。

「行ってくる」

 恋人の頬を大きな手でひと撫でし、敵に向かい走るリアム。その姿を見逃すまいと、オリビアは彼の背中を必死に目で追い続けた。

>>続く
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