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最終章 サウード夫妻よ永遠に
第40話 大きな前進
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「皆様、お待たせいたしました。体調はいかがですか?」
アリスは四賢妃が待つ応接室に着くと、彼女たちの様子をうかがった。四人とも食堂にいたときとは打ってかわり、肌の血色が良くすっきりとした顔をしている。
「アリス! もうこの通り、よくなったよ~」
「先ほどは恥ずかしい姿を見せてすまなかった」
「もう平気です。ご心配をおかけしました」
はじめにこちらに気づいたアイシャがにこやかに手を振り、ビアンカとエリザベスが申し訳なさそうに苦笑した。最後にミライが席を立ちアリスの前で足を止め肩をすくめた。
「アリスさん、さっきはごめんなさいね。私たち、ウィリアムの薬のおかげですっかり元気よ」
「そうでしたか、本当によかった」
「心配してくれてありがとう。早速領地の話をしましょうか!」
先ほどより覇気があるミライの言葉に、自分も力強く頷き「はい!」と返す。アリスはソファに向かい話し合いのテーブルに参加した。
「ピエールから情報はもらっているわ。適材適所ということでまずビアンカは治安関連ね。軍を動かせる?」
「ああ、ちょうどサウード出身の者を私の部隊で預かっているから屯所を作って常駐させよう」
ミライの提案にビアンカが頷き快諾する。次に彼女はアイシャに視線を移した。
「いいわね。次に領民の働き口ね。これは私とアイシャの出番よ。ここで食糧問題の解決と診療所もできる」
「了解! 実家から医者を何人か連れてくる。あと適性がありそうな領民を雇って助手をお願いするよ!」
「お願いね。私は今のサウードで作れる農作物を用意する。人手はここで雇った領民と、重作業はビアンカが連れてきた部下を少し借りるわね」
「ああ、わかった」
「それからベス、農作物は収穫まで時間がかかるから、それまでの食糧、その他必需品を用意できるルートがほしいわ」
「うん。ここなら国内より隣国から輸入しちゃうのがいいかも。書類作っちゃうね」
アリスはテンポ良く進んでいく話に、みんなの顔を順番に追って必死に聞いていた。すごい。彼女たちの決断力と行動力に感動する。
「必要な施設の建物や候補地はピエールが押さえてね」
「かしこまりました」
「それじゃ最後にミライさん!」
「は、はい!」
ミライに呼ばれ、アリスはピンと背筋を伸ばした。必要なことはほぼ決まり、ついのん気にかまえてしまっていた。気持ちを入れ替え、一度瞬きをして彼女と目を合わせる。
「あなたは教会と領民がうまく関われるような何かを提案すること。いいかしら?」
「わかりました。考えてみます!」
アリスは大きく頷き、四賢妃たちと笑顔を交わす。そして自分からもひとつ提案をする。
「あの、私からもひとつよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん」
「実は、この地には男性が少なく、幼い子供がいる母が多いのです。そこで街に保育所を作って仕事をする母親たちの子供を預かりたいと考えています。そこで、保育所で働ける者を何人か揃えておきたくて」
言い終えた瞬間、四人がアリスを囲み「なにそれ!」と食いついた。かなり興奮している。彼女たちはピエールに引き離され、ソファに戻されるがその場で目を輝かせアリスをの顔を覗き込んだ。
「保育所……名案ね! すばらしいわアリス。王都でも取り入れたいわね、みんな!」
「ありがとうございます。実はそれを教会でお願いしようと思ったのですが、断られてしまって……」
アリスは夫人たちに教会でのことを話した。彼女たちは眉を寄せ、揃って腕を組み唸っている。そのうち、エリザベスが「あ、そうだ」と言って口を開く。
「教会の子どもたちは大半が大人になると教会の仕事に就く。だから彼らは字の読み書きや計算など必要な知識を教会で教わってるの。けれど、街の子は家庭教師以外から学べないから家庭に余裕がないと読み書きができないまま大人になる子もいる」
「では、教会で街の子に勉強を教えてもらえれば……」
「うん。自力で保育所と教会を行き来できる年齢の子だけなら親の送迎もいらない」
「なるほど。エリザベス様、ありがとうございます!」
そうか、その手があったか。故郷ラウリンゼにはあった学校がなかったのはそういう事情だったのか。なんと名案だろう。これでやるべきことは決まった。アリスは一日で話が大きく前進したことに大喜びした。そしてその勢いのまま、席を立った。
「それでは、さっそくシスターに話に行ってまいります!」
>>続く
アリスは四賢妃が待つ応接室に着くと、彼女たちの様子をうかがった。四人とも食堂にいたときとは打ってかわり、肌の血色が良くすっきりとした顔をしている。
「アリス! もうこの通り、よくなったよ~」
「先ほどは恥ずかしい姿を見せてすまなかった」
「もう平気です。ご心配をおかけしました」
はじめにこちらに気づいたアイシャがにこやかに手を振り、ビアンカとエリザベスが申し訳なさそうに苦笑した。最後にミライが席を立ちアリスの前で足を止め肩をすくめた。
「アリスさん、さっきはごめんなさいね。私たち、ウィリアムの薬のおかげですっかり元気よ」
「そうでしたか、本当によかった」
「心配してくれてありがとう。早速領地の話をしましょうか!」
先ほどより覇気があるミライの言葉に、自分も力強く頷き「はい!」と返す。アリスはソファに向かい話し合いのテーブルに参加した。
「ピエールから情報はもらっているわ。適材適所ということでまずビアンカは治安関連ね。軍を動かせる?」
「ああ、ちょうどサウード出身の者を私の部隊で預かっているから屯所を作って常駐させよう」
ミライの提案にビアンカが頷き快諾する。次に彼女はアイシャに視線を移した。
「いいわね。次に領民の働き口ね。これは私とアイシャの出番よ。ここで食糧問題の解決と診療所もできる」
「了解! 実家から医者を何人か連れてくる。あと適性がありそうな領民を雇って助手をお願いするよ!」
「お願いね。私は今のサウードで作れる農作物を用意する。人手はここで雇った領民と、重作業はビアンカが連れてきた部下を少し借りるわね」
「ああ、わかった」
「それからベス、農作物は収穫まで時間がかかるから、それまでの食糧、その他必需品を用意できるルートがほしいわ」
「うん。ここなら国内より隣国から輸入しちゃうのがいいかも。書類作っちゃうね」
アリスはテンポ良く進んでいく話に、みんなの顔を順番に追って必死に聞いていた。すごい。彼女たちの決断力と行動力に感動する。
「必要な施設の建物や候補地はピエールが押さえてね」
「かしこまりました」
「それじゃ最後にミライさん!」
「は、はい!」
ミライに呼ばれ、アリスはピンと背筋を伸ばした。必要なことはほぼ決まり、ついのん気にかまえてしまっていた。気持ちを入れ替え、一度瞬きをして彼女と目を合わせる。
「あなたは教会と領民がうまく関われるような何かを提案すること。いいかしら?」
「わかりました。考えてみます!」
アリスは大きく頷き、四賢妃たちと笑顔を交わす。そして自分からもひとつ提案をする。
「あの、私からもひとつよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん」
「実は、この地には男性が少なく、幼い子供がいる母が多いのです。そこで街に保育所を作って仕事をする母親たちの子供を預かりたいと考えています。そこで、保育所で働ける者を何人か揃えておきたくて」
言い終えた瞬間、四人がアリスを囲み「なにそれ!」と食いついた。かなり興奮している。彼女たちはピエールに引き離され、ソファに戻されるがその場で目を輝かせアリスをの顔を覗き込んだ。
「保育所……名案ね! すばらしいわアリス。王都でも取り入れたいわね、みんな!」
「ありがとうございます。実はそれを教会でお願いしようと思ったのですが、断られてしまって……」
アリスは夫人たちに教会でのことを話した。彼女たちは眉を寄せ、揃って腕を組み唸っている。そのうち、エリザベスが「あ、そうだ」と言って口を開く。
「教会の子どもたちは大半が大人になると教会の仕事に就く。だから彼らは字の読み書きや計算など必要な知識を教会で教わってるの。けれど、街の子は家庭教師以外から学べないから家庭に余裕がないと読み書きができないまま大人になる子もいる」
「では、教会で街の子に勉強を教えてもらえれば……」
「うん。自力で保育所と教会を行き来できる年齢の子だけなら親の送迎もいらない」
「なるほど。エリザベス様、ありがとうございます!」
そうか、その手があったか。故郷ラウリンゼにはあった学校がなかったのはそういう事情だったのか。なんと名案だろう。これでやるべきことは決まった。アリスは一日で話が大きく前進したことに大喜びした。そしてその勢いのまま、席を立った。
「それでは、さっそくシスターに話に行ってまいります!」
>>続く
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