3 / 35
1章
わたしたちのひみつ
しおりを挟む
実は、わたしたち、写真にうつった幽霊を天国へおくっている。
表向きは、学校のフォトクラブとして活動してるんだけど、時々、幽霊で困ってる子が相談にやってくるんだ。
フォトクラブのメンバーはわたし、小学五年生の高坂夢莉。
それから、同じく五年生の遠野晴、六年生の村木蒼生くんの三人。
びっくりなんだけど、わたしたち、不思議な力が使えるんだ。
わたしは、写真にうつっている幽霊の気持ちをよみとること。
晴は、特別なカメラを使って幽霊をあぶりだすこと。
そして、蒼生くんは幽霊をはらう……天国へおくることができるんだ。
どうして、わたしたちがこんな力を使えるかって言うと。
……それが分かんないんだよね。
わたしたちは、ただの幼なじみ。普通の人間。
心当たりがあるとすれば。
蒼生くんのお家は神社だけど、その神社の境内でずっと遊んでいたことかなぁ。
蒼生くんが、「うちの神様が不思議な力を授けてくれたのかもしれない」って、言ってた。
そうだとしたら、うまく三人に力をわけてくれたんだなって思う。
蒼生くんは幽霊をはらうことはできるけど、幽霊の気配は感じることはできない。
だけど、わたしはふだんから幽霊の気配は感じる。霊感があるっていうのかな。
幽霊をあぶりだすカメラは、晴しか使えない。
わたしと蒼生くんがシャッターボタンを押しても、何も起こらないんだ。
晴はふだん、霊感はないけど、幽霊カメラのファインダー越しなら気配が分かるみたい。
それぞれできることと、できないことがある。
三人が協力しないと、幽霊をはらえないんだ。
「うわぁ。きれいな夕焼けだな」
晴がいそいそとカバンからカメラを出した。
さっきの幽霊をあぶりだしたカメラとチェンジして、空へとカメラをかまえる。
オレンジと紫に染まった夕焼けの空。
たしかにすごくきれい。わたしは肩の上でゆれる横髪を耳にかけ、夕空をながめた。
晴がファインダーをのぞいてる。
いつものいいかげんな晴じゃなく、カメラに情熱を持った男の子の顔。
晴の作品は、とても素敵なんだ。
それもそのはず。晴の写真は何回か賞に入ったことがあるんだよね。
またきれいな空の写真が一枚、フォトクラブに増えるな。
そうだ。今撮ってる写真を一枚もらって、飾りつけさせてもらおう。
この夕焼けに合うような、きれいな色のペーパー買ったんだよね。
そう思った時、晴のそばでふわっと幽霊の気配がした。
さっきのタヌキが戻ってきたのかと思ったけど、ちがう。
まったくちがう、何かの……
「晴っ!」
思わず叫ぶと、パッと気配が消えた。
「どした?」
晴がカメラから顔をはなして、不思議そうにわたしを見る。
あれ? さっきは確かに何かいた気がしたのに。
晴のまわりをじいっと見つめるけど、今は何も感じない。
「えっと……いや、何でもない」
「変なの。おれが恋しくなったとか?」
「はっ? そんなワケないでしょ!」
じろっとにらんだら、蒼生くんがわたしと晴の肩に手を置いた。
「さ、もう帰ろうか」
それが合図のように、ひゅうっと風が吹いてきた。
夕日が山へ沈んで、どんどん暮れていく。
十月の終わり。暗くなるのがだんだん早くなってきたなぁ。
表向きは、学校のフォトクラブとして活動してるんだけど、時々、幽霊で困ってる子が相談にやってくるんだ。
フォトクラブのメンバーはわたし、小学五年生の高坂夢莉。
それから、同じく五年生の遠野晴、六年生の村木蒼生くんの三人。
びっくりなんだけど、わたしたち、不思議な力が使えるんだ。
わたしは、写真にうつっている幽霊の気持ちをよみとること。
晴は、特別なカメラを使って幽霊をあぶりだすこと。
そして、蒼生くんは幽霊をはらう……天国へおくることができるんだ。
どうして、わたしたちがこんな力を使えるかって言うと。
……それが分かんないんだよね。
わたしたちは、ただの幼なじみ。普通の人間。
心当たりがあるとすれば。
蒼生くんのお家は神社だけど、その神社の境内でずっと遊んでいたことかなぁ。
蒼生くんが、「うちの神様が不思議な力を授けてくれたのかもしれない」って、言ってた。
そうだとしたら、うまく三人に力をわけてくれたんだなって思う。
蒼生くんは幽霊をはらうことはできるけど、幽霊の気配は感じることはできない。
だけど、わたしはふだんから幽霊の気配は感じる。霊感があるっていうのかな。
幽霊をあぶりだすカメラは、晴しか使えない。
わたしと蒼生くんがシャッターボタンを押しても、何も起こらないんだ。
晴はふだん、霊感はないけど、幽霊カメラのファインダー越しなら気配が分かるみたい。
それぞれできることと、できないことがある。
三人が協力しないと、幽霊をはらえないんだ。
「うわぁ。きれいな夕焼けだな」
晴がいそいそとカバンからカメラを出した。
さっきの幽霊をあぶりだしたカメラとチェンジして、空へとカメラをかまえる。
オレンジと紫に染まった夕焼けの空。
たしかにすごくきれい。わたしは肩の上でゆれる横髪を耳にかけ、夕空をながめた。
晴がファインダーをのぞいてる。
いつものいいかげんな晴じゃなく、カメラに情熱を持った男の子の顔。
晴の作品は、とても素敵なんだ。
それもそのはず。晴の写真は何回か賞に入ったことがあるんだよね。
またきれいな空の写真が一枚、フォトクラブに増えるな。
そうだ。今撮ってる写真を一枚もらって、飾りつけさせてもらおう。
この夕焼けに合うような、きれいな色のペーパー買ったんだよね。
そう思った時、晴のそばでふわっと幽霊の気配がした。
さっきのタヌキが戻ってきたのかと思ったけど、ちがう。
まったくちがう、何かの……
「晴っ!」
思わず叫ぶと、パッと気配が消えた。
「どした?」
晴がカメラから顔をはなして、不思議そうにわたしを見る。
あれ? さっきは確かに何かいた気がしたのに。
晴のまわりをじいっと見つめるけど、今は何も感じない。
「えっと……いや、何でもない」
「変なの。おれが恋しくなったとか?」
「はっ? そんなワケないでしょ!」
じろっとにらんだら、蒼生くんがわたしと晴の肩に手を置いた。
「さ、もう帰ろうか」
それが合図のように、ひゅうっと風が吹いてきた。
夕日が山へ沈んで、どんどん暮れていく。
十月の終わり。暗くなるのがだんだん早くなってきたなぁ。
0
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる