幽霊フォトコラージュ！

２章

幽霊カメラ

「おおっ、いい感じに撮れた！」

　窓の外へむけて、晴がシャッター音を鳴らす。
　今日は何を撮ってるんだろって思ったら、一枚の赤い葉っぱ。
　葉っぱ一枚でも晴にかかれば芸術的になるから、すごいんだよね。

　フォトクラブの部屋は南校舎の一階。はしっこにある。
　外は寒いけど、窓からのぽかぽか陽気が気持ちいい。
　ちょうどこの部屋の前に木があって、赤や黄色の落ち葉がはらはら舞っている。
　放課後のこの部屋で過ごす時間は、ゆったりできて好き。
　わたしは、いつもここでスクラップブッキングを楽しんでるんだ。
　スクラップブッキングは、思い出の写真をお気に入りのペーパーや素材で飾って楽しむ作業なんだけど、去年、文具屋さんで一日体験してすっかりハマっちゃったんだ。
　蒼生くんと晴が撮った写真を使って、作品を作ったりもしてるんだよ。
　写真や柄のペーパーを切り取って一枚の台紙に貼る――コラージュすることがすっごく楽しい。
　フォトクラブの壁に、わたしのコラージュ作品を飾りまくってる。
　晴が撮った花びら舞う桜の木の写真には、白のペーパーを台紙に。全体に散りばめてる花は、型抜きパンチで作ったものなんだ。
　半透明なペーパーと色の濃いペーパーをあわせてお花を作ってる。
　蒼生くんが撮った川辺の鳥の写真には、落ち着いたグリーンのペーパー。
　チェック柄のペーパーを部分的に貼ってみたら、おしゃれになってお気に入り。
　写真や思い出に書く言葉を「ジャーナル」っていうんだけど、それもいっぱいがんばって書いた！
　他にもいろいろ飾ってるけど、もっと増やしていきたいな。
　それに、自分で撮った写真も飾りたい！

　晴はわたしの向かい側に座って、カメラの手入れをし始めた。
　机の上には、カメラが二台。
　ふだん用のカメラと、幽霊用のカメラ。
　この幽霊カメラは、晴がシャッターを押したら、ぱあっと光があふれて幽霊をあぶりだせる。この前のタヌキみたいにね。
　もう一つ、ひみつがあるんだけど、それは置いておいて。
　この幽霊用のカメラは、蒼生くんちの物置にあったんだ。
　蒼生くんちの納屋で遊んでた時にたまたま見つけて、蒼生くんのお父さんが「もう使わないから」って、写真を撮るのが好きな晴にくれたんだ。
　ところどころキズがある古いカメラなんだけど、晴のふだん用のデジタルカメラとちょっとちがう。撮ってすぐにどんな風にうつったか分からないから、不便だなって思うけど。
　ダイヤルがいっぱいついてるし、フィルムっていう小さな筒みたいなものをカメラの中に入れて使う。
　筒からびろーんってぺらぺら長い物を伸ばすんだよね。見ていて、けっこうおもしろい。
　ちなみに、このフィルムがないと、幽霊をあぶりだせないみたい。
　しかも、無限に撮れるわけでもないみたいで。
　でも、ダイヤルの所を見たら数字があって、あと何回撮れるか分かるんだ。
　こんな特殊なフィルムは売ってないし、幽霊をしっかり出す時だけ使った方がいいねって話になった。
　
　初めて使った時はパニックになったなぁ。だって、幽霊が出てくるんだもん。
　蒼生くんが無我夢中であの棒を振ったら、幽霊が消えたんだ。
　それから、わたしも写真にうつった幽霊の気持ちをよみとれることに気づいた。
　しかも、わたしは幽霊の気配も分かるようになった。すごいよね。
　しばらくもくもくと作業をしてると、カタンとドアが開く音がした。