幽霊フォトコラージュ!

森野ゆら

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4章

悪霊って?

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「……っていうわけで、うちに住むことになったの」

 机の上に立つコンを紹介すると、晴と蒼生くんは目をぱちぱちさせた。

「フン、よろしくな」

 コンは口悪く言いながらも、ぺこりとお辞儀をする。
 礼儀正しいんだか、悪いんだか。
 蒼生くんと晴は、めずらしいものを見るようにコンをじーっと見つめてる。

「へぇ、この前のタヌキが……天国の郵便配達員……」

「なんかうさんくさいなー。こら、蒼生。ちゃんとはらわなかったから、変なヤツが来ちゃったじゃないか」

 晴に言われて、蒼生くんが申し訳なさそうに眉を下げる。

「ごめんね、夢莉ちゃん。ややこしいことになったみたいで」


「ううん。大丈夫だよ。蒼生くんは悪くないよ」

「それにしても、タヌキなのに名前がコンで、見た目がハムスター人形か。ややこしいな」

 晴がコンを凝視すると、コンは晴をにらみつけた。バチバチだ。
 なんか晴とコン、相性悪そうだなぁ。そんなことを思いながら、写真を机に並べる。

「あとね。コンが言うには星川さんの幽霊、もうすぐバラバラになっちゃうみたいなんだ」

「えっ、そんなことが分かるのか?」

 蒼生くんが声を上げると、コンは得意げに小さな手を腰に当てた。

「あぁ。霊力がどんどん弱まってる。悪霊たちに見つかって直接とりこまれるか、バラバラになって悪霊のエサになるか、時間の問題だな」

「悪霊にとりこまれる? どういうことだ?」

 晴が晴が首をかしげると、蒼生くんもコンにつめよった。

「あのさ、コン。教えてくれないか? ぼくたち、幽霊をはらったりしてるけど、実はよく分かってないんだ」

 コンが「そうだろうな」とヒゲをなでる。

「まぁ、特にお前ははらう能力を持ってるなら、分かっておいた方がいいだろう」

 コンはえらそうに蒼生くんに言うと、横にあったペンケースの上にぽてんと座った。

「普通、命を終えると、霊になって天国へ行く。しかし、未練が強かったりやり残したことがあると、この世をさまようことになる。さまよっていると、悪霊たちの餌食になりやすい」

「悪霊たちに食べられちゃうってこと?」

「まぁ、そうだな。それに、幽霊もすぐに天国へ行けないと、いずれ力が弱まってバラバラの破片になってしまう。だから、お前たちがやってることは、さまよう幽霊にとってはありがたいことかもしれない」


 そうなんだ。
 わたし、時々思ってたんだ。幽霊の姿を晴があぶりだして、蒼生くんがはらう。
 それは幽霊にとって、いいことなのかな? って。
 特に蒼生くんは、けっこう悩んでたみたい。実際にはらうのは蒼生くんだし。
 でも、こうやって「さまよう幽霊にとってはありがたい」って幽霊のコンに言われたら、安心した。

「なぁ、コン。悪霊は普通の幽霊とどうちがうんだ?」

 蒼生くんがコンにきく。
 たしかに。今までそんな悪い幽霊に会ったことはないけど、幽霊と悪霊のちがいの線引きってどうなるんだろ?

「悪霊はちょっと特殊だな。生き物や死者の邪念が集まったものとでも言うべきか。悪霊は生きてるヤツに危害を与えることもある。お前たちが悪霊に遭遇したら、消すしかないな。ま、蒼生が消せる力を持ってるのかは知らんが

 晴がペンケース上のコンにずいっと顔をよせた。

「ふーん。で、コンはどっちの幽霊なワケ? さまよう幽霊なのか、悪霊なのか」

 びしっ。
 コンの額にイラッとマークがついた気がした。晴は、悪びれずしれっとした顔。

「フン、悪霊なワケないだろ! そんな低俗なやつらといっしょにするな! オレ様は天国郵便局のベテラン配達員だ! あー、夢莉の言う通り、コイツは無礼なやつだ」

「無礼? こら、夢莉! おれのことなんて紹介したんだ」

「無礼とは言ってないよ。たまに空気読めないとか、失礼なこと言うとか」

「いっしょじゃないかっ」
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