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5章
幽霊の小さな恋
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何? その手の話って。コンは何か分かってるの?
ひたすらゆきちゃんは、だまったまま。
うーん。どうしよう。
部屋の中が薄暗くなってきたから、カーテンを閉めて電気をつけた。
明るくなったけど、ゆきちゃんがどこにいるかは分からない。
ただ、気配はあるから、まだここにいることは分かる。
話しづらいことなのかな。それなら無理には聞けないし。
「わたし、宿題するから話したくなったら言ってね」
そう声をかけて、机の前に座ったら、
「あの」
か細い声が近くで聞こえた。うわ。けっこう近くにゆきちゃんがいるんだ。
幽霊が間近にいるって意識したら、ドキッとするものだね。
「ユメリはあのアオイっていう男の子が好きなの?」
がたーん。
思わぬ不意打ち!
つい、イスからずり落ちちゃった。
「大丈夫?」
「うん。平気。いたた……」
立ち上がりながらも、内心はどぎまぎ。な、なんか見透かされてる?
「ゆきちゃん、どうしてそう思ったの? まさかわたしの心がよめるとか?」
「よめないよ。でも、見てたら分かった。わたしも気持ち、分かるから。ドキドキしたり、ちょっとしたことでうれしくなったり」
えええ。見てたら分かるって、わたし、そんなあからさまだったかな?
あれ? ちょっと待って。ってことは。
「もしかして、ゆきちゃん。小林くんのことが好きなの?」
きくと、ゆきちゃんがちょっと照れたように身じろぎする気配がした。
「わたしが小さい時、よく遊んでくれたんだ。公園に行ったら、いつもしゅうくんがいて。ブランコを押してくれたり、転んで泣いてたらなぐさめてくれたり」
しゅうくん……って、小林くんのことか。
次々と話すゆきちゃんの声はやわらかい。とても大事な、あったかい思い出だって伝わってくる。
「でも、わたし、病気で死んじゃったから。いっしょに遊べなくなっちゃった。だから幽霊になって、ずっとしゅうくんのそばにいるんだ」
「ゆきちゃん、でも……」
コンは、ベッドの上で「ぴーぴー」と寝息をたててる。
コンが言ってた。さまよってたら、力が弱ってバラバラになって。そのうち悪霊に狙われて食べられちゃうって。
「あのね、ゆきちゃん。その気持ちは分かるけど、ちゃんと天国へ行かないと、悪霊に……」
「知ってるよ」
ゆきちゃんが小さくつぶやいた。
「でもね。わたし、残された時間めいっぱい、しゅうくんのそばにいたいんだ。ユメリなら分かってくれるよね?」
ゆきちゃんのせつない声に胸の奥がきゅっとなった。
あぁ。わたしがもし、幽霊になっちゃったら
そうだなぁ。わたしも蒼生くんのそばをうろうろしてるかも。
たまに、晴をからかったりしてね。
でも、それはずっと続かないって心の奥で分かっていながら、蒼生くんのそばにいるんだろうな。
悪霊におびえながら。だけど、蒼生くんのそばにいたくて。
そこまで考えたら、ゆきちゃんをぎゅうっと抱きしめたくなった。
姿が見えないから、そんなことはできないけど。
「ユメリはいいね。生きてるから、ずっとアオイとお話できるんだもん」
その言葉の後、ゆきちゃんの気配が窓の外へ出て行くのを感じた。
ひたすらゆきちゃんは、だまったまま。
うーん。どうしよう。
部屋の中が薄暗くなってきたから、カーテンを閉めて電気をつけた。
明るくなったけど、ゆきちゃんがどこにいるかは分からない。
ただ、気配はあるから、まだここにいることは分かる。
話しづらいことなのかな。それなら無理には聞けないし。
「わたし、宿題するから話したくなったら言ってね」
そう声をかけて、机の前に座ったら、
「あの」
か細い声が近くで聞こえた。うわ。けっこう近くにゆきちゃんがいるんだ。
幽霊が間近にいるって意識したら、ドキッとするものだね。
「ユメリはあのアオイっていう男の子が好きなの?」
がたーん。
思わぬ不意打ち!
つい、イスからずり落ちちゃった。
「大丈夫?」
「うん。平気。いたた……」
立ち上がりながらも、内心はどぎまぎ。な、なんか見透かされてる?
「ゆきちゃん、どうしてそう思ったの? まさかわたしの心がよめるとか?」
「よめないよ。でも、見てたら分かった。わたしも気持ち、分かるから。ドキドキしたり、ちょっとしたことでうれしくなったり」
えええ。見てたら分かるって、わたし、そんなあからさまだったかな?
あれ? ちょっと待って。ってことは。
「もしかして、ゆきちゃん。小林くんのことが好きなの?」
きくと、ゆきちゃんがちょっと照れたように身じろぎする気配がした。
「わたしが小さい時、よく遊んでくれたんだ。公園に行ったら、いつもしゅうくんがいて。ブランコを押してくれたり、転んで泣いてたらなぐさめてくれたり」
しゅうくん……って、小林くんのことか。
次々と話すゆきちゃんの声はやわらかい。とても大事な、あったかい思い出だって伝わってくる。
「でも、わたし、病気で死んじゃったから。いっしょに遊べなくなっちゃった。だから幽霊になって、ずっとしゅうくんのそばにいるんだ」
「ゆきちゃん、でも……」
コンは、ベッドの上で「ぴーぴー」と寝息をたててる。
コンが言ってた。さまよってたら、力が弱ってバラバラになって。そのうち悪霊に狙われて食べられちゃうって。
「あのね、ゆきちゃん。その気持ちは分かるけど、ちゃんと天国へ行かないと、悪霊に……」
「知ってるよ」
ゆきちゃんが小さくつぶやいた。
「でもね。わたし、残された時間めいっぱい、しゅうくんのそばにいたいんだ。ユメリなら分かってくれるよね?」
ゆきちゃんのせつない声に胸の奥がきゅっとなった。
あぁ。わたしがもし、幽霊になっちゃったら
そうだなぁ。わたしも蒼生くんのそばをうろうろしてるかも。
たまに、晴をからかったりしてね。
でも、それはずっと続かないって心の奥で分かっていながら、蒼生くんのそばにいるんだろうな。
悪霊におびえながら。だけど、蒼生くんのそばにいたくて。
そこまで考えたら、ゆきちゃんをぎゅうっと抱きしめたくなった。
姿が見えないから、そんなことはできないけど。
「ユメリはいいね。生きてるから、ずっとアオイとお話できるんだもん」
その言葉の後、ゆきちゃんの気配が窓の外へ出て行くのを感じた。
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