タイム・ジャンプ!

森野ゆら

文字の大きさ
2 / 38

2 私の幼なじみ

しおりを挟む
 時間がおしてるのか、教頭先生が早口で言う。 

「続きまして、陸上大会の表彰伝達です。一年、早瀬志信はやせしのぶくん、前へ出なさい」

「はい」

 凛とした声が体育館に響く。
 列の後ろから黒髪男子が歩いてきて私の横を通り過ぎ、壇上へ上がっていった。
 ピンと真っすぐ伸びたきれいな背すじ。学生服の黒がより足の長さを引き立たせる。
 向かい合わせで立つ校長先生より、頭二つ分くらい背が高い。

「志信くん、また背が伸びたんじゃない?」

「勉強もできるし、スポーツもできるなんて。すごいよね」

 また女子たちのはずんだ声が耳に入ってきた。

「この前も表彰されてなかった? なんだっけ。えーと……」

 剣道の大会だよって心の中で思ったけど、教えてあげない。

「陸上大会百メートル優勝。早瀬志信。あなたは……」

 表彰状のお決まり文章を校長先生が読み上げる。
 その間も女子たちの「志信くんかっこいいストーリー」は止まらない。
 向こうの列では、長い髪のゆるふわ女子が目をうるませてる。
 その視線の先は、表彰状を受け取っている志信。
 あの子も志信のファンなのかな。
 壇上をおりた志信は、早足で戻ってきた。
 通り過ぎる瞬間チラリと見上げると、志信は足を止めてほほえんだ。

「未央もお昼ご飯食べ過ぎなきゃ、優勝だったよ」

「……ひとこと余計だよ。志信」

 じとっとにらむと、志信はにっこり笑みを作ったまま、後方へと歩いていった。
 実は私もその大会出てたけど、五位だった。
 はりきってお母さんが作ってくれた、いつもより多めのお弁当。
 ついつい食べすぎて、おなかこわしちゃって、うまく走れなくて……
 だけど、別にくやしいなんて思ってないからねっ。
 心の中で志信にあっかんべーをする。
 ……でも、心がうわついてくるのを止められない。
 志信と話をするのは、うれしい。
 うっかりゆるまってくる口元をぐっとを押さえてると、

「仲良しだねぇ」

 左側からツンツン押してくるヒジ。
 見ると、クラスメイトのゆりちゃんがニヤニヤしてる。

「いいなぁ、未央は。イケメンが二人も近くにいるんだもん。志信くんとは昔から仲良しで部活も一緒、しかも生徒会長の和都わとさんがおにぃ……」

 と、そこまで言いかけたゆりちゃんの口をガバッとふさぐ。

「もうっ、それは言わなくていいってば」

 私、三条未央さんじょうみお。中学一年生。陸上部所属!
 得意科目は体育! 苦手科目は数学と理科と……国語と社会と……

 こほん。
 とにかく、勉強は苦手。
 かろうじて宿題はやってるけど、机の前に座ると眠くなっちゃう。
 なにか目標があれば、やる気も出るんだろうけど、別にやりたいことも特別好きなこともない。
 だから、成績優秀な生徒会長の兄と、文武両道の同級生が近くにいると、いろいろメンドクサイことがある。
 その二人がいるがために「未央ちゃんも勉強できるんでしょ?」ってよく言われるんだけど、残念ながらそんなことはなく。
 ゆりちゃんが言う、うらやましがられるポジションでもないんだよ。

 でも。
 お兄ちゃんと志信は背が伸びたかと思ったら、急に女子から人気が出始めて、私としては少々フクザツ。
 特に最近の私はちょっとおかしい。
 志信に対してドキドキしたり、話しただけでうれしくなったり。
 今までは普通に話してたのにね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

はるのものがたり

柏木みのり
児童書・童話
春樹(はるき)が突然逝ってしまって一ヶ月。いつも自分を守ってくれていた最愛の兄を亡くした中学二年生の春花(はるか)と親友を亡くした中学三年生の俊(しゅん)は、隣の世界から春樹に来た招待状を受け取る。頼り切っていた兄がいなくなり少しずつ変わっていく春花とそれを見守る俊。学校の日常と『お隣』での様々な出来事の中、二人は気持ちを寄せ合い、春樹を失った悲しみを乗り越えようとする。 「9日間」「春の音が聴こえる」「魔法使いたちへ」と関連してくる物語。 (also @ なろう)

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

処理中です...