タイム・ジャンプ!

森野ゆら

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1 放課後の公園

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「わー。なんか、ブランコ久しぶり。中学生になってから全然乗ってなかったなぁ」

 そう言いながら、ゆりちゃんがぐんっとブランコをこいだ。
 放課後のオレンジの空に、ゆりちゃんの足が届きそう。
 今日はノー部活デー。
 せっかく部活がないから、小学生の時に遊んでいた公園にゆりちゃんと遊びにきた。
 ゆりちゃんのブランコがきぃきぃと音をたてる。

「ほんとだねぇ。こうやってだんだん乗らなくなっちゃうのかな。小学生の時は毎日乗りに来てたのにね」

 答えながら、私もゆりちゃんに負けじと地面を思い切り蹴った。

「でも、せっかく乗りにきても、未央はすぐに他の子にゆずってたよね」

 ゆりちゃんは考えるように空を見たあと、急に足をついてブランコを止めた。

「それよりさ、未央。うかうかしてられないんじゃない?」

「なにが?」

 ゆりちゃんのムムッとした顔に、私もブランコをこぐのをやめる。

「三組の荒木さん、志信くんに告白するかもっていうウワサだよ」

「へっ?」

 ゆりちゃんの言葉にどきんとして、ブランコの鎖をぎゅっとにぎった。

「ええっと、荒木さんってだれだっけ?」

「ほら、お嬢様みたいにフワフワで髪が長い女の子。三組の委員長やってる」

 フワフワで長い髪……
 あ、そうだ。表彰されてる志信をうるんだ目で見ていた、あの子。
 そう言えば、あの子が荒木さんだった。

「……でも、別にそんなの私には関係ないし……」

「ほんとに~?」

 ゆりちゃんがブランコごと体をこっちに向ける。

「もう。私、分かってるんだからね。未央が志信くんのこと、いつも目で追ってるの」

「ええっ、私、そんなことしてないよ?」

「してる。いつも未央のとなりにいる私が言うんだから、まちがいない」

 断言するゆりちゃんに、私は口をあんぐりさせる。
 いつも志信のこと目で追ってるって……それって。
 いや、自分でもうすうすカンづいてたけど……
 証拠はそろってる! と刑事さんみたいに見つめてくるゆりちゃんに、私は観念した。

「ううっ。ゆりちゃんには正直に言うと……最近、志信と話したり近くにいると、心臓がその……ドキドキするんだ……」

 小さな声で言うと、ゆりちゃんは目を見開いたあと、ニヤリと笑った。

「やっぱりねっ。いやー、私のカンは捨てたもんじゃないなぁ。絶対そうだと思った!」

 ゆりちゃんは、やけにうれしそうに足をバタバタさせる。

「そうだ! 月曜日、ハロウィン会があるでしょ? その時、志信くんになにかプレゼントしたら?」

「ええっ、なんで?」

 ハロウィンにプレゼント?
 突然そんなことしたら、「誕生日まちがえてるだろ」とか言われそう。

「あれ? 未央知らないの? この学校伝統のウワサ」

「ウワサ?」

「ハロウィン会の時、好きな人になにか贈り物をしたら、想いがかなうんだって」

「なにそれ? 知らない」

「今まで何人も両想いになったらしいよ。未央も志信くんへの想いがかなうチャンスだよ」

 ゆりちゃんがまた勢いよくブランコをこぎだした。
 ぐんぐんこいで、なぜかすっごく楽しそう。

「そ、そんなこと言われても……志信になにあげていいか分かんないし」

「じゃあさ、手作りのお菓子なんてどう? クッキーとか」

「クッキー? 私、食べる専門で作ったことないなぁ。でも、いいかも。あまったらいっぱい食べられるし」

 ひらめいたように言うと、ゆりちゃんがあきれ顔でブランコの速度をゆるめた。

「……未央、自分が食べること考えてるでしょ」

「バレた? だってお菓子大好きだもん」

 クッキーだったらいくらでも食べられそうだよ。
 あ、シフォンケーキでもいいなぁ。
 空に浮かぶ雲が全部お菓子に見えてくるよ。
 雲のお菓子に届くように、思い切って地面を蹴った。
 ブランコにのって、どんどん体が高くなる。
 ゆりちゃんも私の高さと同じくらいまでこいできた。
 二人で目を合わせて、ふふっと笑い合う。

「ま、いいわ。それじゃあ日曜日、私の家で一緒にクッキー作ろ! だいたいそろってるんだけど、ラッピング用品が足りないんだよね。袋はあるからリボンだけ持ってきてくれる?」

「う、うん」

 リボンかぁ。そんな可愛いモノ持ってないや。
 ゆりちゃんの家に行く前に買いにいかないと。

「そろそろ帰ろう!」

 ぴょんとゆりちゃんがブランコからおりた。
 私もブランコをおりて、一緒に公園の外へと向かう。
 ゆりちゃんとお菓子作りかぁ。
 うん! 日曜日が楽しみになってきた!
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