タイム・ジャンプ!

森野ゆら

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1 気がついたら

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 やけに頭がすっきりしてる。
 ぱちっと目をあけて、大きなあくびをひとつ。
 あ~良く寝た!
 体を起こすと、金髪の女の子がベッドまでかけよってきた。

「あ、気がつきましたか!」

「おはよう~! ライカさん。……ん? ライカさん?」

 どうしてライカさんがいるの? 
 あれ、そう言えば私、警官隊につかまって……
 しかも、今、私がいる散らかったこの部屋は……お兄ちゃんの小屋?

「今、何月何日っ? なんで私、小屋にいるのっ?」

 思わずベッドにぴょんと立ち上がる。

「十月二十六日だよ」

 そう言ってドアから入ってきたのは、ジャージにメガネのお兄ちゃん。

「おはよう。未央。って言っても夕方だけどな」

「お、お兄ちゃん、私……」

 なにを言っていいのか分からずに、口をパクパクする。
 机の上には、時間移動機。
 分解されて、中のネジやボタンが外されてる。

「それ……」

 指さすと、お兄ちゃんがふうっと息をはいた。

「今、修理中だよ」

「やっぱりこわれてたの?」

「あぁ。ネジが一本ゆるんでいて、誤作動を起こしていたみたいだな」

 そっか。だからあんなうるさい音が鳴ったり、場所を学校に設定したのに、公園にずれてたりしたのか。
 お兄ちゃんはいつものヘラヘラ顔を封印して、グルグルメガネの下からキッと私をにらんできた。
 ひいいっ、こわい! 視線がささる!
 お兄ちゃん、なんか本気で怒ってる?
 縮こまってベッドに座り、毛布をかぶった。

「……未央、勝手に使ったらダメだろ! 何も知識がないヤツが時間移動したら危険なんだぞ」

「だ、だって、はじめはなにか分かんなくてオモチャだと思ったし、使っちゃいけないものって思わなかったし……」

 言うと、お兄ちゃんの目がさらにするどくなった。

「言い訳無用!」

「ご、ごめんなさい……」

 深々と頭を下げて、はたと気がついた。

「あれ? でもなんで私ここにいるの? 警官隊につかまって時間牢に閉じ込められるはずじゃ……」

 顔を上げると、今度はライカさんが頭を下げた。

「申し訳ありません、未央さま。私のかんちがいで……」

「えっ?」

 カンチガイ? どういうこと?

「警官隊は和都さまがお願いしていたそうなんです」

「お兄ちゃんが?」

「私、てっきり警官隊が出動したのは、時間移動違反で未央さまを逮捕するためだと思ってたのですが」

 ライカさんがチラリとお兄ちゃんを見る。

「パソコンに時間移動機の異常を知らせる通知が来ていたんだ。未央が使ってるって分かってぞっとしたよ。こっちに戻ってこられない可能性があったから。すぐに警官隊に通報したんだ」

「もしかして、お兄ちゃん、警官隊の人と一緒に来てた?」

「うん。未央の確認のために一緒に来てくれって言われて」

 ニヤリとして一枚のシートを取り出す。

「未央が暴れるから、使ったよ。眠りシート。いやぁ、こんな時にも役に立つなんてなぁ」

 いつものヘラリ顔に戻ったお兄ちゃんがハッハッハッと笑う。
 あ、それであの時、急に意識が遠のいたのか。

「しかし、和都さま。時間移動違反は厳罰を受けるはずですが……」

「うん。そうだね。一応会長に話は通してある。おれの妹っていうこともあって、今回は目をつぶるって」

「そそ、そんな! 会長がお許しになるなんて、和都さまはどういう……」

「うーん、おれ、会長の弱みをにぎってるからね。協会にはおれの発明品を提供してるし、おれには文句を言えないだろ」

「あわわわっ……あの会長と対等に話ができるなんて」

 ライカさんが真っ青な顔で口を押える。
 なんだろ、会長って人、そんなにこわい人なのかな。
 でも、そんなこわい人の弱みを握ってるお兄ちゃんって……
 やっぱ、お兄ちゃんは敵にまわしたくないなと思った時、ライカさんのペンダントがチカチカ光った。
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